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デスカフェで気軽に死を語ろう! お寺のまち京都からはじまった若手僧侶団体「ワカゾー」とは?

「お寺の数は、全国のコンビニの数より多いんですよ。」と言われて驚いた。たしかに京都にはお寺が多いけれど、まさか全国に7万5千か寺もあるなんて!

意外と知られていないお寺のデータを教えてくれたのは、若き女性僧侶の藤井一葉さん。兵庫県のお寺に生まれ育ち、大学院進学をきっかけに仏教を学びはじめたという。

大学院で出会った僧侶7名とともに「未熟な若者」と「若手僧侶」という意味を込めた僧侶グループ『ワカゾー』を立ち上げた。

名前の響きや、ロゴに使われたいい感じに緊張感のないフォント。これらに新鮮さを感じ、普段馴染みのないものにぐっと興味がわいた。

同級生とのゆるい会話から生まれたデスカフェ

ワカゾーが生まれたのは、一葉さんが大学院を修了し、二年がたった頃。
「在学中に学んだことを実践できていない」と物足りなさを感じつつも、なかなかひとりでは行動にうつせていなかった一葉さん。

同様の葛藤を抱いていたお坊さんの仲間たちとの会話から「自分たちが疑問に思うことや社会でやりたいことを実現するチーム」としてワカゾーを立ち上げた。世界中で話題になり始めていたデスカフェを知ったのも、この仲間たちとの会話から。

「なんかおもしろそうなことあるよ。やってみようよ、みたいな」

デスカフェとは、2004年にスイス人の社会学者が妻の死を契機に、「死」についてカジュアルに話す会を開いたことが発端の活動。人の死を見るという点で古い歴史をもつお寺と、このデスカフェを結びつけることに新鮮さと相性の良さを感じた。

死を考えることへの優先順位が低い現代。生と死をいつもセットで考え、片方を見ることでどちちもが引き立つという仏教の視点からであれば「死を語ることも自然な形で取り入れられるのでは」と仲間たちと気持ちが高まった。

同じ目標をもつ仲間とのゆるい会話と信頼関係から始まった、遊びの延長のような試み。伝統の枠にとらわれない発想や、実行へのスピード感も若い僧侶グループならではのエネルギーが感じられる。

ワカゾーだからこそできること

ワカゾーによる『デスカフェは、僧侶による活動ではあるが、基本的に説教などはしない。参加者が安心して、思い思いに人生を振り返るということに重きを置き、格式張らない会の運営を心がけている。

一方で「さあ話しましょう!」というのが苦手な日本人に合わせて編み出した「弔辞の作成をきっかけに死を考える」というフォーマットなどは、お坊さんならではの工夫が光る。

参加者の多くは20〜40代と比較的若く、参加理由も様々。

「根本的な解決って個人のなかにある。ワカゾーはそれぞれが答えを見つけるお手伝いする役割しかできない」と控えめに強調する一葉さん。

死を話す会は暗くなるのかなという当初の心配は外れ、会の後には「気が楽になった」「明日からの生き方が少し見えた」という前向きな感想が多かったことに驚いたという。

小学生の子供と参加された看護師の女性は、「子供がなにを思っているのか知ることができた」と感想を残した。

家族だからこそ、普段の食卓で和気あいあいと話せないこともある。そんな面と向かって話しにくい話題も、お寺や僧侶の存在を介すことで「すんなりと入り込めた」といった声に、自分たちだからこそできることだと開催の意義を実感した。

時代に寄り添うこれからのお坊さんの姿

これまでは、僧侶というと「悩みを聞いて答えを導いてくれる高尚な人」「一般人とは違った世界観がある人」というイメージだった。

しかし、一葉さんのやわらかい物腰やワカゾーの親しみやすい活動内容、また時代に合わせた形態で人に寄り添う方法を模索する姿に触れ、印象が変わった。

お坊さんたちも、一般の人との認識のギャップに悩んだり、自分たちの活動を広めるために悪戦苦闘したりしているのだと知り、どこかほっとする。

そんなお坊さんの人間的で不器用な一面を知った後だからこそ、一葉さんの言った「人生の終わりを意識することで、自分の今が本当に正しいか、ということを見つめる機会が得られる」という言葉が余計に心に響いたのだろう。

京都は独特な風土があり、宗教やお寺が受け入れられやすい体質をもっている。最近では、地元の人や観光客を対象にした、お寺での座禅や写経、ヨガの体験も人気だ。

もしかすると、ワカゾーたちのたわいない会話から生まれたデスカフェが、これらの人気体験コースに並んで、お寺訪問の目的としてごく自然に受け入れられる日も近いのではないだろうか。今後、”死を意識する”という行為が、京都とワカゾーを中心にどのように発展するのか楽しみだ。

(文・写真/西濱愛乃)

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