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飯高町はコンビニのない町です

松阪市飯高町で話題沸騰中の日本最大級大型風力発電問題は、そろそろ次の動きに進んでいきます。でももう少し時間がかかるので、今回は渦中となっている飯高町より、電力消費の話。

飯高町には現在コンビニエンスストアはありません。隣の飯南町には何件かあるので、普段から市街地と行き来している人は普通に見かけるのでしょうが、風力発電所計画地となっている山奥のほうでは、日常にコンビニを使う人はほとんどいません。なにせ最寄りのコンビニが20キロではね。山を越えて奈良側に行くのとあまり変わりない地域もあります。夜に光っているのは自動販売機くらいです。

そして信号機も町内に2つしかありません。それもだいぶ下流の方に2つ。土砂災害などで国道が片側走行になったら臨時の信号が取り付けられるくらいで、櫛田川上流にいると、信号待ちとも無縁です。人が通っていると減速するし、大きく避けるし、空いているので信号に区切られなくてもできることでしょうか。

お店が閉まるもの早く、6時を過ぎたら自然と暗くなり、人々の消灯時間も早く、夜は本当に真っ暗です。だから、星が輝きます。天の川が肉眼で見えるのは、夜は電気をつけないことが当たり前になっているからです。暗さ指数は三重県2位だと星空愛好家の方が目を輝かせて教えてくれました。ちなみに三重県随一の暗さを誇るのは熊野の奥だそうですよ。

そして今年の夏も暑い日がそこそこありましたが、飯高町ではエアコンなしで過ごしている人も多いです。街暮らしの人には信じられないかもしれませんが、本当のことです。それも我慢に我慢を重ねているわけでもなく、自然の風と扇風機で普通に過ごしています。川が流れて風が吹いて、水田も水を湛えている地域だからこそできることなのでしょう。夜は涼しいですし。

そんな暗くて電気の灯らないところだから、若者の人口が流出して過疎化が急速に進んだのかもしれません。物々交換も盛んで、人の交流が柔らかく、経済的に目に見える価値が少ないから、開発地として目をつけられたのかもしれません。本当のところはわからないですが。

それにしたって、農村が電気を生み出す場所になることになるとは、思いもよりませんでした。

あまり電気を使っていないところで発電所?

電力が足りないのを補うために新しく超大型発電所?

誰のための電気なのか。何のための電気なのか。

環境配慮書に対しての意見書集めでも、電力は本当に足りないのかという疑問が多く見られました。風力発電の不安定さとかロス電力の大きさとかの前にそもそも足りないのか。減らせないのかと。

街のどこにもコンビニがなくてもいいとまでは思わないですし、エアコンを我慢せよとも思いません。電力はインフラとして整備されていて、人々の暮らしを支える大きな仕事をしています。けれど電力を増やすだけが人の豊かさになるわけでもないことが、もうわかってきています。

暗い夜に瞬く星空。静かな空気に響く虫の声。暑い日も寒い日も外で仕事をする人々。暗くなったら閉まるお店だからこそ、暮らしに寄り添える。

電力消費の少ない田舎町の在り方は、時代遅れなのでしょうか。

地球を熱いガスの星にしてしまわないために、今人々ができることは何なのか、本当にひとりひとりが考えて動かなければならない時代です。


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