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なぜ飯高が選ばれたのか。風力発電。

夏に大盛り上がりだった、松阪市飯高町での風力発電事業計画の問題は、今は地元住民への地道な情報共有の時です。反対派賛成派に分断することなく、地道な大切な時です。メディアに触れる程度は人によって大きく違いがあり、テレビで報道されなければ情報に触れない人もいるので、隅々まで周知するのはなかなか手間暇がかかります。けれど誰も取りこぼすことなく意見を持って、話をすることを続けていくのが飯高町にはなにより大切なことだと考えています。

飯高町の住民と言っても広い地域ですので、風力発電60基がどこに配置されるかによって、切迫感は随分異なります。工事が終わってしまえば、上流へ行かずに生活している人たちの中には、遠いところで回っているだけの風車を気にせず暮らせる人もいるのかもしれません。自分にはあまり関係のない話かなと思っていた人も少なくないでしょう。けれど何年にも渡る工事はむしろ下流域の人にとって心配であるし、山頂の尾根部をいじってしまい、水源に関わる事業なので、誰しも他人ごとではいられないはずです。それでもなかなか自分ごとに思えない気持ちもよくわかります。不安で仕方なくなってしまいますからね。

なんでこんなとこに?という声もよく聞こえてきます。山険しいし、街から遠いし、事業場所としてしっくりこない。風はまあ吹くけどそんなに吹きっさらしでもないし。東京の会社が考えることはよくわからんな。この事業にはそんな印象があります。降ってわいた感じ、噛み合わなさ。そしてそれは現在全国各所で立ち上がっている同じ陸上風力発電事業所計画の場所も思っていることなのではないでしょうか。なぜこんなところで?

土地の値段が安いとか、反対する人の絶対数が少ないとか、全国の土地を開発することが国の発展につながるという考えがまだ残っているとか、そのような事業者側からの目線だけでは見えてこないものがあります。

開発に白羽の矢が立った地域は、飯高に限らず元々様々な問題を抱えていた地域です。超過疎化・超高齢化による住民不在で農地が荒れ、空き家が放置され、集落として成り立たなくなってきているところが全国にあります。今はまだよくても10年後、20年後にどうなっているか、あまり先を見据えずにいると大変なことになる地域の数々が、今どうなるかの過渡期に立っています。それをわかりやすく示してくれたのが例えば大規模風力発電所建設計画なのではないでしょうか。飯高の計画は日本最大級ということですが、今年計画されている各地の事業所も最大級がありますね。

環境省のHPに記載されている今年度の環境アセスメント事例情報です。ここに(仮称)三重松阪蓮ウィンドファームも含まれていますが、なんともすごい事例量です。配慮書段階、方法書段階、準備書段階もあり、日本の森林はこれから数年でどうなってしまうのだろうと怖くなるような事態です。

でもこれもまた、起こるべくして起こった事態なのかもしれません。やたらに開発することが未来の日本を作る最良の道ではないと思いたいですし、政策成果を上げる為だけに脈々と受け継がれてきた水と緑を破壊するのは同時代を生きる者としてあまりに辛い出来事です。けれど山間部が問題を抱えているのは事実なのです。今までもなんとかしなければいけなかったのに、なかなかなんともできなかったのが現状です。

だから、飯高に計画が持ち上がり、今こそなんとかしなければいけなくなりました。エネルギーを作るVS自然を守るというわけのわからない対立構造ではではなくて、「地域の未来はどうなるのか」が問われています。飯高町にとって一番大事なのが自然環境だとしても、その環境を維持するのには人が要るしその仕組みが要ります。里山は管理しなければ成り立たないのです。そして人と自然が共存で来ていてこそ生き物との多様な関わり方があり、それこそが豊かな未来になっていくのです。一方でもう人がいなくなることを覚悟したのなら、開発地として有意義な事業に明け渡すことが最良かもしれませんし、明け渡さないなら地域に人が残り続けなくてはいけません。人が残ることができる場所であるのか、否か。今がその選択の時です。

「すべての命が輝くみんなのふるさと飯高」略して「みんなの飯高」であるために、できることのすべてを今準備しなくてはいけません。これからどうなるのか、事業計画をのんびり待っているのではなく、誰にでもできることがあります。現場に足を運んで考えること。その話を他の人にすること。自分はどこで何がしたいのかをできるだけ明確にイメージしてみること。年齢も立場も違う人々が考えていくと同じにはならないけれど、人々の暮らしは多種多様でいいのだから、それぞれの輝きがあるはずです。

飯高が選ばれたのなら、飯高らしく。つながる人々の想いがたくさん盛り上がっていったところにあるのが未来の飯高の姿です。


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