美濃加茂茶舗マガジン_190607_7

相対的な価値でしか測れない「本物」なんてたのしくない。|『sio』オーナーシェフ 鳥羽周作さん

こんにちは。美濃加茂茶舗です。
このマガジンは、「違いを面白がる人」や「本物をわかろうとする人」を大事にしているわたしたちが、読者のみなさんと一緒に「本物」を考えていくメディアです。

第二弾の今回は、美濃加茂茶舗の店長・伊藤にとって「店長」の大先輩である『sio』の鳥羽周作さんにお話を伺いました。

〈今回の「本物を知る人」〉画像1

鳥羽周作
1978年生まれ、埼玉県出身。代々木上原にある、連日満席のフレンチレストラン『sio』のオーナーシェフ。サッカー選手、教師の経験を経て、32歳で料理人になったといったキャリアを持ち、SNSやweb業界でも話題になる。著名なクリエイターや経営者との親交も深く、『sio』の他にもさまざまなプロジェクトに携わり、レストラン業界の革命児とも呼ばれている。

〈聞く人〉
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伊藤尚哉
1991年生まれ。24歳のときに急須で淹れる日本茶のおいしさに魅了され、2016年から名古屋の日本茶専門店・茶問屋に勤務。2018年に日本茶インストラクターの資格を取得(認定番号19-4318)したことを機に、お茶の淹れ方講座や和菓子とのペアリングイベントなどを企画。2019年「美濃加茂茶舗」店長に就任。


20代後半から料理人を志し、オーナーシェフになるまでに至った鳥羽さんの根底にあるのは、「本質」への熱意と「愛」。

異質のキャリアや大きなビジョン、発するメッセージの強さから、料理の世界にとどまらず、メディアからもひっぱりだこの鳥羽さん。
料理業界の「普通」を打ち壊してきたその姿は、まさに「違いを面白がる人」そのものでした。

人と違うことも自覚していたし、「自分イカれてんな」と思ってました

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伊藤:このマガジンは、「みんながいい」と思うものをいいと定義するのではなく、自分がいいと思うものの「本質」をわかろうとする人たちに届けたいと思っています。今日はよろしくお願いします!

鳥羽さん(以下、鳥羽):よろしくお願いします!「本質」をわかろうとするって、僕が普段から言っていることと全くおんなじじゃないですか。これからは相対的な評価の時代じゃなくて、絶対的な評価の中で自分のものさしを持っている人が、自分で良いものを選んでいく時代になっていく。

それに対して、提供側が選ばれるために絶対的に必要になってくるのが「本質」なんですよね。本質があるものはやっぱり続いていくし、カルチャーになっていくだろうと思っています。

僕らはレストランを通してカルチャーを作っていきたいと思っているので、話が合いそうですね。
しかし、28歳で店長ですか?若いな〜~!

伊藤:鳥羽さんが28歳のときは、どんなことを考えて生きていましたか?

鳥羽:28歳のときはサッカーを辞めて、カフェで働いてましたね。それまでずっとやってきたサッカーから、次の人生を歩み始めていた所だったので、野望に溢れていた時期です。天職だと思って飲食の世界に入ったので、「よし!やってやる!!」みたいな感じでイケイケでした。

伊藤:不安はなかったんですか?

鳥羽:なかったですね。ゴールに届くためにこれをやって…という自分なりの目標が決まっていたので、できないとか夢を叶えられないとかは思ってなかっです。伊藤さんは?

伊藤:僕も不安はずっとないですね。名古屋の日本茶の専門店で働き始めたのが24歳のときで、もともと日本茶の家系に生まれたわけではなく、本当にただ「お茶が好き」という気持ちでこれまでやってきたので。

鳥羽:そこから28歳でもう店長?すごいですね!

伊藤:美濃加茂茶舗のオーナーや茶師の方との出会いが大きかったんです。「やるぞ!」と意気込む前にもう「やります」って言っちゃってたというか。

鳥羽:超パッションあるじゃないですか!!!

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伊藤:実は、僕も小中高とずっとサッカーをやっていたんです。鳥羽さんと少し共通点があって嬉しいです。

鳥羽:そうなんですね。なんかこう若い世代に伊藤さんみたいな感じの人が増えてるの、いいっすよね。

伊藤:鳥羽さんは28歳の頃から周りと違う感じだったんですか?

鳥羽:今もそうですけど、すごくマイノリティでしたよ。自分のやりたいことで生計立てていこうとする人って少ないじゃないですか。やっていける人はもっと少ないし。今ほどじゃないけど、28歳位のころも周りと違う感じはしていました。

伊藤:周りの人と自分が違うなと思ったとき、その違いを受け止められる様になったきっかけってありますか?

鳥羽:学校の先生をやっていて、他の仕事の人が羨ましくなった自分が「ダセェな」と思って。人生でやりたいことをやる側に回るか、そんな人たちを見る側に回るかっていう究極の選択をしなくちゃいけなくなったときに、料理の道を選んだんです。
なので、「いける!」と確信したときにはもう怖いもの無しになってしまったんですよね。

テレビ番組で観たすごい人に感銘を受けて「今から会いに行っていいですか?」って電話したりしてました。まぁ「無理です」と断られるんですけど、そしたら「5年後めちゃくちゃ有名になるので待っててください」って宣言したり。そのときはかなり「イカれてんな」とは思ってましたね。

伊藤:自分でもそう思っていたんですね。そういえば僕も20代前半に、好きな演出家に手紙を書いて送りつけたことあります(笑)。

鳥羽:いいっすね!やろうと思ってもみんな絶対できないですもん。会いたい人には会おうとした方がいいですよ。

伊藤:でも、夢を叶えるための鳥羽さんの原動力は本当にすごいです。

鳥羽:ゴールにたどり着けるのは見えていたので。後は逆算して突っ走るだけだったんですよね。

伊藤:やっぱりゴールが見えていることって大事なんですね。

鳥羽:そうですね。仕事も料理やっぱり、ゴールがしっかり見えていないとうまくいかないから。
逆に言うと、見えているものは絶対成功するって分かっているから、何でもできるんですよ。

スタンスは浸透するまで伝え続ける。あとは信じて任せるだけ

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伊藤:今日は鳥羽さんにご相談したいことがあって。実は、今の歳の今の立場だからこその迷いがあるんですよね。お店のみんなとどんな風に関わっていくべきか、とか。

僕、”右手で握手して左手で殴り合う”みたいな体育会系のコミュニケーションが好きなんです。「ときには本気でぶつかってクオリティを高めていこうぜ」みたいな。でも、メンバーの全員がそれを好むわけじゃないとは思うんですよね…。

鳥羽:いやぁ分かるなぁ。僕も見ての通りこういう感じだけど、みんながそうではないし。どうしてるかな…。

あ、でも「自分はこれが好きだし、これは好きじゃない」というのをちゃんと言って、あとは任せますね、僕は。

伊藤:なるほど、「どこまで任せるか」のさじ加減って難しくはないですか?

鳥羽:信じるしかないっす。お店のクオリティを下げるのはダメだけど。でも基本「やってみなよ」って言って信じますね。信じないことには始まらない。
部下を管理することに未来を感じないと言うか。その人らしさもないし、いい店に育たないんですよね。

お客さんの中には「鳥羽さんに会いに来た」って言ってくれる人もいますが、それは本質であるようで違うんです。僕は、『sio』に来てもらいたい。
だから、そこに僕がいなくても『sio』のイズムを感じたいから行く、という感じにならないとダメなんです。

伊藤:「イズム」かぁ…。たしかにそれが浸透してこそですよね。

鳥羽:でも、やっぱり若いうちって失敗しちゃうじゃないですか。僕も「なにやってんだよ」とは思う時もあるんだけど。

それを文脈にするために次のチャンスを与えるのか、「失敗」として点で残すのかが結構重要で。失敗をした「けれども」と線で見るのが大事なんだと思うんですよね。

だから僕は、みんながやったことに対して一部の失敗を取り上げるんじゃなく、次どうするかを考えるようにしています。一度や二度の失敗を「失敗」とみなさずに、任せ続ける。目先のゴールよりも、彼の成長を見続ける。

それをするために、お店として「ウチはこういうスタンスだからね」って僕はいい切っちゃってます。まぁでも、忍耐もいりますけどね(笑)。

伊藤:スタンスだけ伝えて、あとは自由にやってもらう、ということでしょうか?

鳥羽:そうそう。これからの時代は「こうやるんだよ」って教えるんじゃなくて、トップが自分のスタンスを表明する方が大事だと思う。
こういうお店を作っていきたい、こういうのが好きなんだ、言い続けて、その上でやり方は任せる方がうまくいく。

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伊藤:たしかに、お店としての「いいもの」の定義は、共通にしなければいけないですもんね。

鳥羽:そうなんですよ。例えば「僕は赤が好きなんだ。だから、赤をかっこよく着こなせていればそれでいいんだ」みたいな。「パンツはネイビーにしてよ」とか細かく決めるんじゃなくて、「何となく赤をかっこよく着こなしてほしいんだよね」ってスタンスをちゃんと表明するのって結構重要。
このスタンスをちゃんと掴んでもらうために、違ったときは「次はこういう風にしようね」と伝えればいいんです。

伊藤
:料理の場合もそういうプロセスでやっているんですか?

鳥羽:メニューは自分が考えてます。でもウチ、レシピないんすよ。
おいしいものの作り方を教えれば、応用できるはずなんです。レシピを教えると、それしか作れなくなってしまうじゃないですか。

だから、『sio』では「いかに”いい感じ”に作るか」っていうのが本質なんですよね。「今日の一番美味しい」なのか、「相対的に見て美味しい」なのか、というのはかなり違うじゃないですか。

伊藤:たしかにお茶も一緒です。一定の「おいしい淹れ方」はあるけれど、それを毎日同じようにやっていてはダメで。その日の気候やお客様の様子を見た上で、どう淹れたら一番おいしく感じてもらえるのかはすごく考えますね。

鳥羽:「その人」のために作るのがやっぱり本質ですよね。

相対評価で「いいもの」を判断しなくていい時代

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伊藤:美濃加茂茶舗の届けたいターゲット層として「本物をわかりたい人」というのがあるのですが…。「何をもって本質なのか」、「何をもっていいものなのか」というものさしってなかなか難しいと思うんです。

鳥羽:それ、超重要ですよね。ウチって、食べ終わったあとにリテラシーが高まるようにメニューを設定しているんですよ。
最初に「こうだからおいしいんですよ」といって出すというよりは、お客様に「おいしい」という実感をしてもらってから、「これはこうしているからおいしいんですよ」と説明するようにしていて。

伊藤:めちゃめちゃ勉強になる。確かに、最初に説明してから飲んでもらうよりも、お客さんが「おいしい」と言ってくださってから説明したほうが、反応が全然違うんですよね。

鳥羽:でも、これまでのスタンダードって「こういう風に手間暇かけているからおいしいんですよ」といった前提を説明したあとで「本当だおいしい」って感じてもらうのが主流だったと思うんですよね。だから、順番が変わってきているんです。

答えを先に言って食べるというのは、体感と情報がマッチしないんですよ。
体感があった上で、そのあとに情報をプラスしてあげることで、一緒に腹落ちするっていうのが今の流れだと思うんです。

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鳥羽:だから僕らのメニューは「導く」けど、最後はお客さんに「委ねる」というのを大事にしていて。
お客さんがおいしいって言ってくれた上で説明するのって、めちゃくちゃ求められた情報なワケじゃないですか。おいしいものには「聞きたい」って気持ちが生まれると思うから、そこで求められた情報に答えてあげるほうが優しい気がしますね。

響いた人にはきちっと「なぜおいしいのか」を伝えると、次に来たときにはリテラシーが高まっていて、より深く味わってもらえるから。

伊藤:ただ、難しいのが受け手の「審美眼」に対する自信だと思っていて。
味わう側って、自分がいいと思っているものが本当にいいのか、自信があまりないと思うんですよ。

鳥羽:それって、相対的な評価が価値基準になっているからなんじゃないかな。
確かにわかりやすい評価基準だから参考にはしやすいとは思うんだけど、それが全部本質的である訳ではないと思うんです。

今は色んな情報がある中で、自分がいいと思うものを選べる時代になってきているはずです。だから、「松阪牛だからおいしい」じゃなくて、「松阪牛のこういうところがおいしい」と言えるようになってほしいなと。

自分がいいと思うものを、他人ではなく自分のものさしで判断していくっていうのが大事だと思うんです。

反対に、提供する側の僕らは「なんで選ばれているのか」をちゃんと提示していく必要がありますね。

選ぶ側が相対価値で「いいもの」の判断をしなくていいのと同じように、提供側も、必ずしも万人受けする必要はないですけど。

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鳥羽:例えば『sio』では日本で工業生産されたお皿に、僕がプロデュースした釉薬(ゆうやく)をかけて焼いてもらったものを使っていたりもします。工業で作られたお皿って、使い勝手や性能がいいんですよね。

作家ものや海外の有名ブランドのもので、高いから良いとは必ずしも言えないと思っていて。
本質を大事にしている僕らがこういうものを率先して使っていくべきだとも思っています。

伊藤:「いいもの=高価」ではない、というのを伝えていく立場って必要ですもんね。

鳥羽:うん。ここまでの話とちょっと矛盾するけど、「イチローが履いてるスパイクだから買います」みたいな感覚ってあるじゃないですか。

大衆はそうやって判断しているけど、イチロー自身は「自分にとっていいか悪いか」で判断しているから、相対的な評価じゃないんですよね。
これも店作りとおんなじで、「自分はこれが好き」っていうスタンスの表明なんですよ。だからこそ、人々が注目するんです。

いいものの前提は、その背景に「人」の想いが乗っているか

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伊藤:『sio』の店内は、質の高いもの選びにこだわっていると聞きました。イケウチオーガニックさんのおしぼりとかもそうですよね。

鳥羽:質にこだわるようになったのは、『sio』のロゴをデザイナーの水野学さんに作ってもらったことが発端でしたね。リニューアル前からお店に来てくださっていて、「ロゴ作ってくださいよ」とお願いしたら、本当に作ってくれたんです。

だから、水野さんのロゴに対して恥ずかしくない店にしなくちゃいけない。そうなると全部なんですよね。音楽もだし、おしぼりもだし。

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鳥羽:これとか、普通だったらろうそくなんですけど、経費はかかるけど安全だし見た目も綺麗なアルコールランプにしたり。このテーブルの花も毎回趣向を変えてます。造花じゃないんですよ。

お客さんから代金をもらったあとに、一体何に使っているのか、ていうのが大事で。また来てくれたときに「あれ?前はこんなのやってなかったよね」というのがお客さんに伝わらないと、応援する気にならないですよね。

お客さんからお金をもらうのってクラウドファウンディングに似ていると思っていて。頂いたお金で本質のあるものを揃えて、店をアップデートしていくようにしています。

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伊藤:いいもの、という鳥羽さんの中での基準はあるのでしょうか?

鳥羽:やっぱり「人」ですね。どういう人が何をやっているかを大事にしています。プロダクトがいいのはもちろんなんですが、プロダクトの向こう側に見えるその人のビジョンだったりとか、人間性とか想いとか、そっちの部分が心を動かしていくと思うんですよ。

そうじゃないと続けられないから、そういう人とだけ僕は仕事をしています。だから、信頼を元に関わっている人が生み出すものに対しては、あんまり値段とか気にしたことないですね。

伊藤:鳥羽さんにとって、そんな「人」を見るときの判断軸って何なんでしょう?

鳥羽:「家族になれるかどうか」。そこっすね。今関わっている人みんなのことが、家族と同じくらい好きっす。今、奈良のサッカークラブを支援してるんですけど、家族だからゴールデンウィークでも奈良までいって経営会議に出るとか。イケウチオーガニックにも休みの日に会いに行くし。家族のことだったら仕事も休みも関係ないじゃないですか。

成長する人は特別じゃない。「今すぐ始められること」をやるかどうか

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伊藤:いままで拝見してきた記事もそうですが、こうしてお話を伺っていて、鳥羽さんはやっぱり「愛」の人っていうイメージが強いです。

鳥羽:「愛」って絶対的なベースですよね。人に対する思いやりとかもその中に含まれているわけで。サービス業は第一にお客様のことを思えなかったらダメですよ。あとリスペクト、そういうのがないと始まらないっすね。

伊藤:確かにそうですよね。

鳥羽:結局、僕らの店には一日に16〜20人しか入れない中で、全員を同じように大事にできるかどうかなんですよ。そうすれば、10人いて1人にしか響かなくても、その1人はまたきっと来てくれるから。

今日の出会いも一緒で、これを必然と思うか偶然と思うかです。必然と思ったから伊藤さんに会えたし、今こういうお話を一緒にできたわけで。これって無数の文脈から考えたらすごい確率じゃないですか。

それに、今こうして一生懸命に聞いてくれているから、僕も一生懸命向き合おうって思うし。自分に対して一生懸命でいてくれる人を、ネガティブに捉えるやつなんていないんです。

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鳥羽:成長してる人って特別なことやってるわけじゃなくて、今すぐ始められることをやってる人だと思うんですよね。

だから会う人全員に、やりたいことを絶対に言ったほうがいいですよ。
毎日、Twitterでも何でもいいから「今日俺はこういうことがあってこういう風にしていきたい」って思うことをひとことでも。

発信し続けたら、自分も変わるし、応援してくれる人も増える。発信することで、自分のことも俯瞰して見えてくるから。

伊藤:…すごく、気合い入りました。

鳥羽:伊藤さん、たのしみっすね!僕、今日から楽しみに見なきゃいけない人がまた増えちゃった(笑)。

伊藤:ありがとうございます!
もうひとつ聞いてみたいことがあるんですが、鳥羽さんはこれまでに「今が勝負!」みたいな時ってありましたか?

鳥羽:ありましたよ。「勝つか負けるか」よりも「負けてるよ」っていうところからスタートしてる状況が人生の分かれ目ですね。
そのときはもう究極の気合いですよ。他のことばでいうと「覚悟」になるのかな。究極の困難が勝負時です。

だから何か2つの道があった時は、みんながやらない大変な方を選択したほうがいいですよ。「人と違う」っていうのは「みんながやらない方を選んでる」ってことだから。特に30歳までなら、やり直せるしね。とにかくヤバイやつと肌合わせて試合するっていうのが大事っす。

伊藤:うーん、なるほど…。実はたまに、目の前にあった困難がふっとなくなっていて、ホッとしてしまう瞬間があるんですよね。その時に自分の弱さを自覚して「負けた」って思うんです。戦いもせずに終わってしまったというか…。

鳥羽:おー、いいですねその感じ。でもいろんな困難と戦っていくと、強くなった時に飽きちゃうことがあるんですよね。試合する相手がジャンルにいなくなるというか。

そしたら外に出ていくんです。若いんだから、バンバン人に会う。会いたい人にはすぐに連絡したほうがいいです。世の中には面白い人がたくさんいるから。

伊藤:そう思います。そして鳥羽さんにも、今日こんな風にお会いできて本当によかったです。

鳥羽:今日は僕が28歳のときに言ってもらいたかったことをお話ししました。
僕が十数年後の伊藤さんかも知れないと思うと、言ってあげられることってたくさんあると思ったんです。

今やってることがいいかどうかなんて、十年後とかじゃないと分からないし、もっと先かもしれない。だけどそれを物語の主人公として、どう未来につなげていくかが本質なんです。

そもそも「失敗」っていうのは無いんですよ。大事なのはそれが文脈になっていくかだから、とにかく続けていくこと。

今日「やっちゃったな」と思っても、それが物語になっていけばいいんで。一時の失敗は大したことないし、それに気づけているかどうかが大事なんですよね。

失敗にしない、文脈にしていくっていうのが大事。
…ためになりました?(笑)

[取材・文]山越栞/[編集]とみこ/[撮影]川島彩水


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