サビアンシンボルストーリー★「X線」


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水星(年齢域8~15歳)

◎蠍25 「X線」
洞察力を鋭くし全体的に物事を観察する。
人の構造について研究しようとする。
科学的な分析に関心を持つ。
人の直面している問題の原因を分析し観察する。
全体的な構造図を解明。

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「もう見るな、まじやめて」
この一文をどれだけ引きずったら、気が済むのだろうと思う。
もう、16年もたったというのに。

この、陰鬱とした視線が誰より嫌いだった。自分の。
じっとりと、すべてからめとろうとするような、この視線がきらいだった。
深く見たいと思う。表層的ではなくて。
もっと、肉体をも通り過ぎた、その先の深い部分を見てみたいといつも思っていた。
そうだ、思春期に、こんな目を向けられたらたまらない。
人生は、なんて残酷なんだろう。

———みたい。深く感じたい。

ずっとそれだけを夢見てきたのだ。
幽霊になりたい、透明人間になりたい、ずっと昔から思ってきた。すっとそばに寄り添って、ただただその人を見ていたい。いつも頭の中で、倉橋ヨエコの「卵とじ」がかかる。全て卵の中に、包み込めたらいいのに。

人の感性は、いつも、周囲に漂っている。
内からあふれだすもの。そして、収集がつかなくなって、漂っているもの。
だから、人の感性はいつも空気感染してくる。
気づかぬ間に、わたしの細胞の間を縫って、しみこんでいる。

境界線がよくわからない。
そこにいるあなたのグラデーションは、もう、私にまでしみこんでいる。
卵の殻の中へ。

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X線を、見ているのだと思った。
わたしは、レントゲン技師なのだと思いたかった。
違う。私がそもそもレントゲンなのだとして。
こんなにも私が有害な気がするのは、そのせいだったか。
「本物」を求めるたびに、相手も、私も変容してゆく。
分裂し過ぎる細胞を生み出す。

害?
待て。害でないものがこの世にあったか。
ナチュラルだといい淀んで、周囲を汚してゆく人々だってたくさんいたじゃないか。環境に優しいってなんだよ。どこから目線だよ。人はもはや神か。
それも悪くないか。

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問題の本質をつかみ取りたくて、自らの毒を放射してみる。
骨格はよく見えるけれど、それはもはや、照射する前の形とは幾分か違う。

愛は、すこしずつ形を変える。今もなお。もはや。


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