マイルールを敷き詰めたくらし

彼の家には、インスタントラーメンのフタで作った漏斗があって、
「好きなもの以外できるだけお金をかけたくないんだ」
っていうのを証明する、あらゆるルールが散りばめられてる。

あぁ、そっか、この人ほんとに好きなもの以外興味がないんだってびっくりする。

だから、こんなにたくさんのマイルールを敷きつめた暮らしの中に、私がいるって奇跡だなって思って、
うわ、愛されてるってすごいなぁって思う。

もしかして私が思うよりずっと、彼は私のことが好きなんじゃないかとか。

究極的に好きなもののある変態男子たちは、正直、人間のメスとかどうでもいいと思うのよ。

星とか山とか、アニメとか、
人生は趣味を極めるのにはあまりにも短くて、女にかまけてる時間なんてそうそうないもの。

でも、どうでもいいはずの女が、そこにいるのを許している。少しだけ、身動きが鈍くなるのを許容する。それってものすごいなって。

だからわたしはちょっとだけ意図的に狂う。
そっか。あなたがあのプレアデスを愛でるくらい、あなたは私のことが好きなのね。
なんとか峠の雪が美しいって、それはわたしのことを、讃えてるのね。

何か彼らが大好きなものを語るたび、それはいちいち愛の言葉に変換される。

あー、そうなんだ、そんなにわたしのこと大好きなのね。
わたしもそうだよ。ありがとう。

「人とモノとはちがうよ」とかいらないこと言って覚めさせないでね。

だってわたしの、このスマートな勘違いのおかげで、あなたは10分に一度私に「愛してる」っていうものすごい手間を省けるんだよ。

なんて平和なんだろう。

だいたい、あなたの感情なんて、私のほうがよくわかってるんだから。

人生ってすごいな、楽しいなぁ。

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