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【毎週ショートショートnote】消しゴム顔

「目尻はどんな感じでした?」

被害者の女性は声を振るわせながら精一杯答えていた。私はイライラしていた。

(いつも女性は力の下では弱者…男性のその力は何のためのものだ!)

思い出したくはないだろう。思い出させたくもない。でも、事件を放置すれば次の被害者が出る。絶対に許せない。

「許して、あなたに頼るしかない私を…」

彼女は口を手でふさぎ、声をおさえながら大粒の涙を流した。毎回痛感する無力感。今回もまた同じような被害者が出た。

(ちくしょう…)

使い込まれた濃淡のうたんの違う鉛筆と消しゴム。顔の線1本描き足すたびに消しゴムで修正する。

「いっその事こと、私の記憶からあいつの顔をその消しゴムで消してよ」

心を内を見透かされた様で私は焦った。彼女は知っているのか…

私の描いた容疑者は必ず変死体となって見つかる。私は描いた似顔絵をこの消しゴムで消している。誰も知らない。描かれた容疑者の顔は潰されている事を。

…誰も知らない。

「安心して!犯人はこの世から消えますから」

そう言うと、彼女から表情が消えた。


(434文字)
今回も田原さんの企画に参画しました٩(๑•̀ω•́๑)و

なかなか忙しくて書く暇がない事と、410文字程度で終わらなかった🤣

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