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【毎週ショートショートnote】1分しまうま

「ばぁちゃん…」

おばあちゃん子だったボクは、祖母の死をいたみ、最後の別れの夜を泣き通した挙句、情けないほど腫れぼったいまぶたで葬儀の終わりを迎えていた。

ボクは客間に掛けられた鯨幕くじらまくが外される様子を赤く腫れた目で見ていた。慌ただしく過ぎた葬儀は手際よく片付けられていく。さすがばあちゃんが生前終活準備を完璧にしていただけあって担当業者の仕事が早い。

「十分幸せな人生だったよ」
「湿っぽい雰囲気はすぐ消してほしい」

遺言ではないが、ばぁちゃんが業者に遺した言葉。どれだけ費用をかけたのか。とにかくベテラン風なスタッフばかりで作業時間はどれもこれもだいたい1分。仕舞しまうまでの効率が半端ない。感傷に浸る余韻すら残らないほどだ。

何事も引き際が大切。降ろしたシマウマ柄の幕はカーテンコールでは上がらない。

「振り返る暇があったら前を向いて顔を上げていけ!」

黙祷もくとうの1分、しまう前のばあちゃんの言葉を思い出し、ボクはまぶたと顔を上げて、大きく深呼吸を始めた。


411文字

今回も田原さんの企画に参画してます😁

~あとがき~
言葉遊びでしまうま感無いですね🤣 楽しく書けましたが、ルビ付けが慣れない😅そして生死に触れる内容が多い気がする💧 素敵な企画ありがたいですね( *´꒳`* )🍀

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