繊細で愛らしい。挿絵画家マーガレット・エバンス・プライスって?
はじめに
今回ご紹介するのは、シカゴ出身のイラストレーター、マーガレット・エバンス・プライス(margaret evans price)です。
赤ずきん
まずは、こちらの絵をご覧ください。
一目瞭然、グリム童話「赤ずきん」の挿絵ですね。赤い頭巾をかぶった少女が、狼と話している様子が繊細なタッチで描かれています。狼の毛並みなども細やか。木の合間に見える建物も雰囲気が出ています。黒々とした木陰が、狼と赤ずきんちゃんのシルエットを浮き立たせていると同時に、これから先おばあちゃんが狼に食べられてしまうという恐ろしい展開を暗示しているようにも見えます。お話の世界に引き込まれるような作品でした。
美女と野獣
つづいては、こちらの絵。
ヴィルヌーヴ夫人によるフランスの異類婚姻譚「美女と野獣」の挿絵です。テーブルや椅子、丸いひさしのようなお城の調度品が丁寧に描かれており、目を引きますね。ピンクのドレスをまとい、ヴェールを被った末娘のベルはたおやかで優美。野獣の不器用そうなポーズもほほえましいですね。
シンデレラ
最後はこの一枚。
フランスのシャルル・ペロー作、「シンデレラ」。ゴッドマザーにかぼちゃの馬車を作ってもらうシーンですね。ふくよかな体にとんがり帽子とまさに魔女そのものの風貌。シンデレラは「清貧」という言葉がぴったりな容姿です。かぼちゃを変身させる魔法は星や水玉で表現され、コミカルな演出もする画家なんだなという新鮮さがあります。ところどころに散りばめられた花々も可憐で、シンデレラが舞踏会に行けることを祝福するかのようです。
※画像はいずれもhttps://www.brwnpaperbag.com/2017/04/13/tbt-margaret-evans-price/から引用。
作者の生涯
鑑賞が終わったので、今度は作者の生い立ちを見ていきましょう。
マーガレット・エバンス・プライスは1888年シカゴに生まれましたが、ほとんどの人生を東アメリカとカナダで過ごします。彼女はかなり幼いころから絵に興味を持ち、わずか12歳で絵入りの物語を「ザ・ボストン・ジャーナル」という日刊新聞に有償で提供したのです。とても早熟な子供だったんですね。マーガレットはマサチューセッツやボストン、フランスで絵を学びました。卒業後は、ニューヨークの数々の雑誌でイラストレーターとして活躍しました。
1909年、21歳でアービング・L・プライスと結婚。1930年には夫とハーマン・G・フィッシャーとともにおもちゃ会社フィッシャー・プライス社を設立します。マーガレットはその初めてのアート・ディレクターとなり、彼女の絵本のキャラクターを元にした引っ張り玩具をデザインしました。1973年、85歳の生涯を閉じました。
おわりに
いかがでしたか?今回の記事はMary Carolyn Waldrep 「Women Illustrators of the Golden Age」を参考にしました。アマゾンの本カテゴリで「illustration golden age」で検索すると掘り出し物が見つかるのでおすすめです。それでは、今回もみなさんに瞳の至福が訪れますように!
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