【スタマイ】【SEASON1】STAGE11~STAGE20を分析

STAGE11~STAGE20
ACT.02 警視庁捜査一課 荒木田蒼生

前回めでたく朝霧のスカウトに成功し、次のターゲットは荒木田ということになりました。
STAGE11では荒木田の捜査一課内での評判を聞きます。朝霧曰く『ワンマン捜査』、服部曰く『外にも中にも敵ばっかり作る、使いづらい一匹狼』ということです。そして、服部からは荒木田に近づかないよう命令されます。
STAGE12ではマトリ側の味方である今大路から荒木田の噂を聞きます。『捜査から捕物、取調べまでを全部ひとりでやってのける』ということらしいです。
ここまでの情報にはすべて、『ひとりで動く』ということが含まれていますね。これが荒木田の性格ということでしょう。
今大路と別れた後、ついに荒木田と対面しました。予想通りですが、スカウトを断られてしまいます。
(……こんだけキツめに言えば、諦めるだろ)という荒木田の心の声がありますが、その時の荒木田の表情はやや辛そうなものとなっています。その後の玲の心の声で『諦めたら試合終了』となっているのは、この後の荒木田との会話でバスケが出てくるからでしょうかね。
STAGE13で荒木田と対話し、その中で「一人で出来ないもんは、全部やめたから」という言葉が出てきます。これはポイントになりそうですね。
当然のように玲のところに服部がやって来て、ルールと破った罰としてカフェでおごらされました。服部からさらに荒木田について、『荒木田はいい子』『本人が自分のことをそう思ってない』という情報が出てきます。服部は玲に対して、「蒼生さえ落とせないようじゃ諦めた方がいい。蒼生も、スタンドも」と厳しい言葉を言います。
前回の朝霧の時に捜査一課側で情報をくれてのは菅野でしたが、今回の荒木田のお話では服部がくれるんですね。
今度はマトリ(渡部、由井)から荒木田の噂を聞きます。
朝霧編ではマトリからは青山、夏目、捜査一課からは菅野がよく出てきましたが、今回の荒木田編ではマトリ側の今大路、渡部、由井、捜査一課の服部がよく情報をくれました。荒木田編では朝霧がすでに玲を認めているので、朝霧も比較的協力をしてくれます。
余談ですが、朝霧編と荒木田編の人選は、ドラマトで新キャラお目見え編で一緒に出てきた組み合わせですね。朝霧と青山、菅野と夏目、今大路と荒木田、服部と渡部……由井は新キャラお目見え編とは関係ないです。あとはメインストーリーの中核に関わるため初期段階ではストーリーのない菅野と服部はそれぞれバラバラに振り分けられた感じですね。
STAGE15の後半ではマトリとしてのお仕事に場面が変わります。その現場で荒木田と鉢合わせることになりました。
荒木田の指示にバディである町田が従わず、犯人をスルーするという事件が起こります。
「そんなに勝手にやりたきゃ、一人でやってろよ!」という町田の言葉に荒木田は傷ついた表情を見せます。
<町田>
「お前にとって、仲間なんて邪魔でしかないように、こっちだって、お前みたいな勝手な奴は邪魔なんだよ!」
<荒木田>
「……皆とかこっちとか。そう思ってんのは『お前』だろ。主張してーなら大勢に隠れんな。卑怯なんだよ」
よくネットでも主語を大きくするな、と言われているやつですね。ただし荒木田には悪い意味の実績があるので、町田の主張にも一理あります。
<町田>
「……皆が皆、お前みたいだと思うなよ。『目の前に犯人がいるのに、上の支持とか関係ねえ』とか、不愛想で冷めてんのに、変なトコばっか熱くてさ。疲れるし、ついていけないんだよ、そういうの」
「一人が好きなら、一生一人でやってろよ!」

ここでも荒木田は傷ついた顔をしています。

こうしてみると荒木田は他人への期待値が大きいのかもしれませんね。正義の中身自体は間違っていないので、荒木田の期待に応えられない周囲の人間は追い詰められてしまい、荒木田を避けるようになります。結局荒木田の近くに残れるのは荒木田の高い期待に応えられる優秀な人材だけになっていく、という感じでしょうか。

荒木田と町田が揉めているところに朝霧が割って入ります。
<朝霧>
「自らの能力の低さを棚に上げ、大勢と同調して個人を蔑むことでしか心を保てない。脆弱ですね」
「スキルも熱意も根性もない、妬むことばかり忙しい人間が仕事に真摯な人間の矜持に『ついていけない』?当たり前でしょう」

容赦がないですね。

荒木田は主機能が内向的感情のINFP、朝霧は主機能が外向的思考のESTJであり、二人は双対関係に当たります。
この二人の性格タイプがこの町田とのやり取りでものすごくよく表れています。(ライターさんがそこまで計算して書いているかは不明ですが、気になったので具体的に書いてみます)
荒木田はINFPなので論理的な言い回しが不得手です。先ほど上でも書きましたが、『自分の意見なのに主語を大きくするな』というのは、実際に荒木田は周囲から敬遠されているので主語が拡大しているかと言われるとそうでもなく、適切な範囲なんです。じゃあなんで荒木田の反論はこのような言葉となったのかというと、よく聞く一般的な反論を持ち出してきたと考えるのが適切でしょう。論理的に自分の言葉で反論することができず、「皆」というどこかで聞いたワードがトリガーとなってこの反論になったと考えられます。
対して、朝霧は「大勢と同調して」と言っているので、荒木田が周囲から避けられている事実からは目を背けていません。その上で荒木田を『仕事に真摯』と町田を『妬むことばかり忙しい』とそれぞれの性格を言葉にし、どうして『ついていけない』のかを論理的に語ります。この朝霧の言葉はどこかから借りてきたものではなく、朝霧本人が生み出した言葉だと思います。
このようにですね、Teが主機能の朝霧とTeが劣等機能の荒木田では言葉のキレが違うんですよ。さらに、荒木田は主機能がFiなので町田の言葉にいちいち傷ついてしまいます。

やっぱり仲間と一緒にやっていくことは出来ないし、スタンドに入っても迷惑がかかる、と再度断った荒木田に対して、玲は引き下がりません。
「私も、荒木田さんの仲間になりたいんです!」
この後の朝霧のアシストは上手ですね。自分たちは荒木田の仲間であるという主張を、余計な装飾のついた言葉ではなく、純然たる事実として淡々と話しました。
ここで荒木田は玲と向き合い、その本心を確認します。泉玲という人物を知り、スカウトを受けることを決めました。

それにしても荒木田編は荒木田の価値観に体当たりする泉玲はなく、代わりに町田が価値観をぶつけ合い、結果物別れに終わりました。玲がしたのは、その一連の流れで傷ついた荒木田に仲間がいることを知らせて、うまく心の隙間に入り込むことです。まるでフラれて傷心の相手に付け込んだかのように見えます。上手いことやりました。さすが服部に元・猛獣使いと言われるだけのことはあります。

荒木田編と名前がついていますし、実際メインになっていたのは荒木田です。が、服部のことも結構分かるようになっているストーリーですね。深い性格や価値観は分かりませんが、表面上の性格はつかめるようになっているのではないでしょうか。
チェックの服部とのやり取りは次のストーリーにつながるものでした。独白の部分しか荒木田編要素がありませんでしたが、「周りからどう思われるかよりも自分がどう思うかを貫ける」いうのはまさしくFi主機能を表現するのにふさわしいと思いました。

起=荒木田の人となりを服部班のメンバーや今大路から聞く(STAGE11、STAGE12)
承=実際に荒木田と話した実感と服部からの情報で荒木田の性格が立体的になる(STAGE13、STAGE14、STAGE15の前半)
転=荒木田と現場で鉢合わせ、他の刑事と連携が取れていないところを目撃する(STAGE15の後半、STAGE16、STAGE17、STAGE18、STAGE19の前半)
結=朝霧が荒木田を仲間と認識していることと、荒木田が玲の考え方を認めてスカウトを受ける(STAGE19の後半、STAGE20)

ここから下は分析ではなく感想です。
荒木田編を最初に読んだ時は当然のように荒木田、朝霧サイドに感情移入していて、町田は嫌な奴に見えていました。しかしながら今回分析するにあたり、細かく見たところ、実はそうでもないのかなと考えが変わりました。
朝霧が三つ挙げていましたが、スキル、熱意、根性、これら一つでも常に持ち続けている人ってどれだけいますかね?しかも荒木田といるとその熱さに巻き込まれて、実力的についていけない場合には否定されるんですよ。少なからず正義感のある刑事という人種が、他人のより強い正義によって否定されるんです。
自分で自分を否定しながら日々を送るのは精神的に参ってしまいます。だから自分の心を守るために、相手を否定せざるを得なくなってきます。町田が荒木田を否定するためにした犯人スルーは、市民の安全を考えても絶対にいけないことだと思うのですが、そういう行動をとるに至った町田の性格までは否定できないかなと思いました。
スタマイに限らず、このような物語を読んでいるときに自分を悪役モブサイドで考えることはあまりないと思うのですが、うっかりすると、というか少しでも努力や自分と正面から向き合うことを止めると、この町田のようになってしまいかねないと感じました。
そんなわけで、私の中で町田は『嫌なモブ』から『気の毒なモブ』に変わりました。


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