【読了 #2】有川 浩「阪急電車」

出会いというものは不思議なものである。
名も知らないどこかの誰かはいつしか自分の日常になり、なくてはならないものに進化したりもする。

阪急電車を舞台にしたこの作品もまさにそんな物語であった。

各駅でそれぞれ主人公が違うがその一人一人が絶妙に絡み合い、影響しあって、読み進めて行くうちに「あ!このときこの人は同じ車両にいたのか!」といった驚きのプレゼントが待っている。

また半分を過ぎると電車は折り返して始発駅へと戻っていく。
この後半が主人公たちの出会いに対する答え合わせのよう。
前半で彼らの応援団のようになっている読者は後半戦で幸せに包まれる。

出会いというものは楽しさや、幸せだけが支配しているものではないがこの作品をみていると自分たちの物語にもこんな結末が待っているのではないかと思わせてくれる。

本作は出会いからある種のゴールまでを作品化したものであるが、このあとにはおそらく波乱万丈な人生が待っているのではないかなと思う。この先に主人公たちがたどる人生を覗き見したい…そんな気持ちにさせてくれる作品だった。

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