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覚醒するは•••汝にあり! 特別編. 4

フライデーナイト•セルフヒーリング
香りの癒し



貴婦人と一角獣


 もう、彼此10年くらい前になりますが、私は、ある美術展の会場にいました。

 其処は、多くの来場者で溢れていて、作品を近くで見る事は困難でしたが、何故か皆さん其れにも関わらず、少しでも人よりも前へ行こう、行こうとされ、当然のように私は、弾き出されてしまいました。
 
 其れは、フランスの或るお城にあったタペストリーの展示会でしたが、メディアの前宣伝もあり、平日でも多くの人が来場していたのです。 

 私は、どうせ弾き出されたのならと、会場ホールの中心に立ち、人混みがはけるのを待ちました。
 
 すると、如何でしょう。
一瞬、会場内のざわめきが消え、くるっと回転する様に全てのタペストリーが見え、私を中心にして、回り出したのです。
 
 そうか、これは、一つ、一つ見るのではなく、全体を同時に見て感じる時に、ある現象が起きることへのメタファーであり、暗示なんだと其の時気付いたのです。
 
 一体何のこっちゃ、わからないでしょうが、このタペストリーには、触覚、味覚、嗅覚、聴覚、視覚の五感を表現していて、最後の一枚には、
” MON SEUL DESIR “ フランス語で、(我が、唯一の望み)と言う意味の言葉が書いてあったのです。
 
 教室でも五感を使う取り組みをして、これがお勉強に何の役に立の?と、お母様方には、思われたのですが•••。
 
 さて、私が確認したかったのは、五感を活性化した其の結果、願望が成就する、と言うことでは無いか?と、言う私の仮説を、実際にそのタペストリーを見る事で、確認したかったのです。
 
 其のことについては、後日詳しく説明する事になると思いますが•••。
 
 実際には、同じ部屋にあって、同時に見られたのかどうかは、わからないのですが•••。
 
 製作年は1510年くらいらしいのですが、今だにこの最後の絵の解釈は、色々有り、今だに謎らしいのです。

 
 既にこの頃から、其の様に考える人がいたとは、驚愕に値します。
 
 さて、本日のテーマは、其の五感の一つである嗅覚、香りの癒しです。
  
 嗅覚が、脳にある、視床下部や大脳辺縁系に直接作用し、自律神経や内分泌系に影響を与える事は知られています。
 
 つまり、感情や情動に影響を与えているのです。

平安貴族の遊び
  

 恐らく、これも仮説に過ぎませんが、平安時代の貴族は、人類の進化の過程で失われていく能力や機能について気が付いていて、遊びの中で、其れを退化しない様に補っていたのでは無いか、と、推測します。 
 
 平安貴族達の間では、独自の薫を作り香りのセンスを競う、薫物合わせと言う流行りの遊びがあったそうです。
 
 随分と昔に、室町期に始まったお香の御宗家を招いてのお香の会を、当所の製作スタッフが、ある学園の創立記念行事として、コーディネートしたことがあったそうですが、其の様子を聞くと、匂いを嗅ぐという敢えて野蛮な行為をし、嗅覚の優秀さを競い、その後に和歌を詠むと言う高尚な行為をして其の振り幅の大きさに、当時の武将も貴族も、その高尚さと原始的な振る舞いのワイルドさのギャップに熱狂したのでは無いか、と、思うのです。
 
 一月の他の記事、” BIZIOMIRAGIO 6.“に茶道の作法に、官能的な美しさがあり、どきっとさせられた事を書きましたが、其れに近いものを此の香道の中に感じました。
 
 香りと言えば、以前、ニューヨークの5番街にある、世界一の販売スペースを誇る某有名デパートで、新しいフレグランスを探していたら、丁度その日に、ロンドンから入ったばかりの香水メーカーの売り場を見つけて、其の時、メーカーから派遣されたばかりで、其の初日に売り場に立っていた、如何にもロンドンから来たと言った出立のストロベリー•ブロンドの長身の青年が勧めてくれたのは、フレッシュな柑橘系でしたが、其の数年後、同じメーカーが、日本にも入って、以来、品の良い洋梨の香りの香水が気に入って、愛用しています。
 
 しかし、先程の美術館を皮切りに、長期滞在したついでに、日に何箇所も吐き気がするくらい都内の美術館を見て周り、最後に新幹線に飛び乗って、茶道の大先輩の茶室がニ棟もある別荘にお招き頂いた時に、玄関に入るや否や、あ、やられた•••と、思ったのは、なんとも言えない、ほのかな香木の香りに、一瞬で癒されたからなのです。
 
 今まで見てきた、大量の絵画や彫刻を見た疲れは、一体何処に行ったのか?と、思わずにはいられないくらいの、脳内にダイレクトに届く癒しでした。

 其の時は、伽羅という香木を焚いて下さっていたのです。
 
 お香には、ストレス•ホルモンのコルチゾールを低下させ、抗酸化力を高める働きがある事を、その後に知りました。

 私達は、何と優雅な文化を持つ、民度の高い国に生まれたのか、と、感謝致しました。
 
 お昼過ぎから、夕方まで、ゆったりとした刻の流れのなかで、何回か、お茶を頂きながら過ごしていると、茶道とは時空を超え、人を異次元空間に誘い、五感を癒しながら、総合的に人を回復させ、次なる見解を見出せる為の嗜みだったことに
往時の先人達の民度の高さに、感服致しました。
 
 その時に頂いた、お茶、茶室で過ごした刻は、お香の香りと共に今でも心に残っています。
 
 香りと言うものは、人の過去の記憶を甦らせるものなんでしょうね。
 
 是非、皆さんには、お香を生活の中に取り入れて頂きたいと思います。
  
 香道の簡単なセットなら、各老舗のお香屋さんで、購入することができます。
 
 最近では、現代生活にも使えるものがあり、きっと、お気に召す物が見つかります。
   
 気分が晴れないときや、逆に気分が良い時や、物事や頭の切り替えの時に使えます。
   

望郷

 
 学生時代の友人が、就職が決まらず、そのまま大学院に進学することになり、アルバイトと研究室の合間の息抜きに、古い映画を上映している映画館に入り、がら空きだったので、前の座席に足を投げ出して、主演のジャン•ギャバンの煙草の吸い方や、セリフを研究していたら、主人公が相手役に言った台詞が、聞き取れなかったようで、字幕の意味をフランス語にしたら、” Cest lodeur Doug metro. “ なんだけど、どうしても、” sens sent du metro.” にしか聞こえない。と、言うので、其れは、私にはどうでも良くて、意味からしたら、地下鉄の匂いに、パリの都会からきた人と言う印象がした、つまり、パリを思い出したと言う意味で、「地下鉄の匂いを感じる•••。」では訳が様にならないから.「地下鉄の匂いだ•••。」にしたのでは、と言うと、「あ、其れで、サ•サン•ドウ•メトロなんだ!」と、納得していましたが、正解かどうかは今だに疑問です•••。
 
 皆さんは、” 失われた時を求めて “ のマルセル•プルーストの、” プルースト効果 “ と言うのをご存知でしょう。
 
 匂いで、幼い頃の記憶を思い出す逸話から、匂いが、記憶を呼び覚ます事を言うのですが、嗅細胞から伝わった信号が、嗅皮質、海馬に伝わるのですが、其の後、其の情報は、脳内の至る所に格納されるそうなのです。
 
 結論です。
香りというのは、人の脳の中にある記憶と直結し、感情を揺り動かし、郷愁に誘うものであると言う事です。

 色々あった週末には、お気に入りの香りで癒されては如何でしょう。
 
 因みに、最近の私のお気に入りは、パロサントという南米の香木です。

 お香の乳香に似た香りで、とてもナチュラルです。
 
 其れでは、また、次のフライデーナイトまで、
おやすみなさい•••“ bonne nuit!. “

遍く人の覚醒と癒しの為に…。
 
May both awakening and healing be with you.
               
                 Mio



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