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一人旅の原点

*本文始まる前に。サムネは、数年前に一人旅した出雲日御碕です。


私は子供の頃は臆病者で、1人で何処かに行くのは怖かった。自転車は乗っていたが、近所のスーパーくらいしか行けない。

それというのも、出掛けた先で、もし分からない事があったらどうする? 道に迷ったらどうする? などなど、赤の他人に話し掛ける勇気もなく、想定の時点で恐怖でしかなかった。

そんな私が、どうして日本中何処でも一人旅が出来るようになったのか。

私が初めて一人旅をしたのは、20代前半。

そのきっかけとなったのは、実は当時付き合っていた彼氏との旅行だった。どういう事かというと、付き合っていた彼氏は乗り鉄で、その彼氏との初めてのお泊り旅行は、オール鈍行列車で秋田だった。

行きは、懐かしの「ムーンライトえちご」という夜行快速電車である(今は無い)一番後ろの席で、今でも覚えているのが、座席の後ろに他の方の荷物があり、座席を倒す事が出来なかった。そんな状態で良く眠れるはずもなく、朝、着いた駅で私はお腹が痛くなったが、薬も飲めずに泣いた。

鈍行の旅なので、目的地に着くまで駅を降りる事も出来ないし、仮に降りられたとしても、地方の鈍行列車が止まる駅はお店すらない無人駅が多い。私も当時は旅慣れていなくて、浮かれていたせいか薬の用意もしていないのも悪かったのは分かっているので、その場では大人しくしていたのだが、内心ではそのままUターンして帰りたかった。

これが、令和の話なら良かったが(いいのか?)この旅行は、1990年代のバブル時末期の出来事である。

世の中にいるカップル間では、高価なブランド品の贈り物が飛び交い、記念日やクリスマスイブには高級ホテルで過ごすのがステータスだった。今では考えられないバブリーな時代に、何で初めての彼氏と、しかも普通ならドキドキ心ときめく初めてのお泊り旅行に来ているのに、こんなしんどい思いをしなくてはならかったんだと。

こう書くと、まるで私が彼氏にバブリーなお付き合いを望んでいると感じるかもしれないが、別にバブリーな高価なブランド品や高級ホテルを求めている訳ではなく、せめて、旅の移動を少しでも身体が楽な新幹線か飛行機と言っているだけの話である。

何とか無事に秋田から帰って来た後に、この男と付き合い続ける限りは待っているのはこういう鈍行旅しかないのか。彼氏が頑固なのは知っていたので、改善してくれる望みは薄いのは分かっていたが、私は別れるのを覚悟で、彼氏に鈍行旅の不満をぶちまけた。

「貴方の個人的な(乗り鉄)趣味に、何で私が全面的に合わせなくてはならないんだ。しかも、電車に乗るだけ乗って、全く観光せずに電車を乗り継く事しかしない。それをこれからも私に強要して、頑なに鈍行旅がしたいのなら1人で勝手に行け。私は早く目的地に着いて観光をしながらゆっくりと旅を楽しみたいから、貴方とはお泊りの旅は出来ない。それが嫌なら別れましょう」

案の定、絶対に折れない彼氏(石より硬い頑固者)と絶対に折れない私で、全面対決の大喧嘩になった。普段は私は折れる事の方が多いのに、何故か旅の事は折れたくなかった。これは、その時はまだ目覚めていない旅魂のせいだったのかもしれない。

彼は電車に乗るという過程を優先して、私は目的地での観光を優先する。

カップル間では、良くある完全な価値観の相違である。

結局、旅の件は決裂したまま、付き合いはそのまま続いた。彼氏とは4年付き合ったが、2人でのお泊りの旅は、本当に初めての秋田のみでその後一切しなかった。

その大喧嘩の数か月後、私は初めての一人旅に出る事になる。

彼氏への不満で意地になっていた。どうせ行くなら、めちゃくちゃ快適に。でも、海外はさすがに怖かったし、当時はバカみたいに海外旅行が高い時代だったので、飛行機で沖縄に行く事にした。

その旅行で、私は完全に旅魂が目覚めてしまった。

それからというもの、日本の最果て巡りをしたり、北海道と沖縄を同時に旅したり、原付で長距離ドライブをしたり、無茶な事をやりたい放題になった。

そんな事を長年続けている内に、一人旅は私を語る上での代名詞になってしまった。

もし、あの時の彼氏が普通に快適な旅をする人だったら、私は子供の頃のまま何処に行くのも怖いし、一人旅なんてとんでもないとなっていたかもしれない。それを証拠に、うちの母はこれまでの人生で一人旅をした事がなく、誰かに連れて行ってもらわないと何処にも行けない。子供の頃の性格と母からの遺伝子的にそうなる可能性の方が高かったに違いない。

もちろん、旅魂が目覚める年齢がもう少し遅れるだけだったかもしれないが、こればかりは、元彼と付き合わなかった並行世界を覗いてみないと分からない。

一人旅をするようになってから、私は自分でも驚くくらい、赤の他人に話し掛ける事も平気になったし、度胸が付いた。

今は一人旅が出来る状況ではないが、また必ず旅に出る。これだけ長年旅をしていても、まだ行けてない名所もたくさんある。身体が動かなくなるまで、全国津々浦々旅をしたい。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

#わたしの旅行記

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