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子供の脳出血  息子の闘病記~手術するの?~ 12

2008年1月10日

脳血管撮影をした。

頭の状態、血管の状態を確認するためだった。

主治医いわく「この出血で、脳動静脈奇形がすべて飛んで消えてたらいいと願ったよ。

でも、それはなかったね。ほんとうにすまない・・・
 
1回のガンマナイフで消えると思っていたけれど、そうはいかなかった。

しかも出血させてしまった。ここで手術するか否か検討するから、明日その話になると思う。」

主人も私も、またこんな出血をするのならば、

もう手術をして、きれいにしたほうがいいのではないかと思った。

それで、出血のリスクがなくなるのなら、

そのほうがいいじゃない。

1月11日

脳血管手術を専門とする、教授のドクターが説明にみえた。

主治医をはじめ、息子の担当のドクターが全員集まって、カンファレンス。

画像を見ながら、説明をする。

「まず、私は今までに脳動静脈奇形の手術を200件以上しています。

 ほとんどの患者さんは無事に退院されています。

 今回のケース。息子さんの場合、確かにこのままではまた出血します。

 ただ、この手術は非常に難しい。脳のいちばんおく深い所にあります。

 問題は、脳血管というのはちいさな赤虫のようにこまかく張り巡らされていて、

 それをすべて、ひとつづつふさいでからはがす手術です。
 
 それは、その血管があった脳の組織を傷めることになる。

 この手術をした場合、息子さんはおそらく元のようにはならない。

 記憶力の低下は避けられない。

 ただし、この病巣は3年前のガンマナイフでかなり小さくなっている。

 小さくなったから手術が簡単かというとそうではない。

 でも、小さくなったということでまた出血しても重篤な危機にはならないと思う。

 私の判断では、もう一度ガンマナイフで治療すべきだと思います。

 息子さんの将来を考えても、手術はしないほうがいい。

 ただし、最悪の事態になったら、手術もやらざるを得ない。

 その時は私が執刀しましょう。

 どうでしょうか?」

 主人も私もそして主治医も顔を見合わせて、納得した。

 「わかりました。ガンマナイフでお願いします。」

 主治医も「もう一度私を信頼してくれますか?」

 私と主人は「先生しかいませんから、お願いします。」


 脳動静脈奇形の手術・・・手術しやすい場所ならば治療では第一候補になるという。

 しかも、血管奇形のあった場所では脳は発達していないので、

 影響が少ないことが臨床的に確認されている。

 しかし、脳の奥深いところでは、そうはいかない。

 視覚、聴覚、神経中枢、感覚、そして記憶と思考・・あらゆる機能が詰まっている。

 この病気の怖いところは、取り残せば、成長とともに再び大きくなること。

 そして、出血すれば、ほとんどの場合後遺症をのこしてしまう。

 息子の場合、切れやすくなった血管は脳室内にかかり、前頭葉と脳梁を覆っている。

 脳室内は、出血しやすいという。

 また出血するのだろうか・・・

 それでも、最初の頃より3分の1ぐらいの大きさになっていた。

 今回の出血も、もしあと1mm右に行けば左半身マヒ、左に行けば右半身まひ、上に行けば高次機能障害、後ろに行けば、もう目が覚めなかった・・・・おそらく植物状態だったと。

 奇跡だった。
 
 そのあと、主治医は「もしも教授が手術をするといったら、僕は自分の専門病院に誘拐しようと思っていた。だって、もう一度で消えるはずだから・・・」

 どうもありがとう・・・一生懸命息子のことを考えてくれて・・・

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