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猫たちの計りごと

もと自由や気ままさだけではなく、
猫たちは、人の常識の及ばない世界を生きている。

先日とあることで、我が家の数か月に及ぶ猫をめぐる悩ましい出来事は、
実は壮大な猫の計りごとに巻き込まれていたのではないかと分かったことがある。
とある人を守ろうと猫がたくらんだ一連の出来事の顛末は?
猫と人間の縁とは?
そしてすべてはふさわしいところへ流れ落ち着いてゆくということ。
旅人ヒーラーで自称”猫の星の番人”というK子ちゃんに出会ったことを
きっかけに判明したのだが、あまりに面白いので書き留めておこうと思う。

我が家には、人見知りでお嬢さんタイプの女の子・Shanty(シャンティー)と後からやってきた男の子・Sasuke(サスケ)がいる。

Shantyはもとはといえば、路上でないているところを友達の娘さんに拾われて我が家にやってきたこともあってか、少々ビビりな性格だ。
家に知らない人が来れば、一目散に家のすみや塀の上に隠れて、その人が帰るまでは降りてこない。
一人っ子のように育ったせいか、最初は自分を猫だと認識していなかったようで、別の猫を外で見かけても不思議そうな顔をしてジーっと眺めていたもんだ。半年近くになるまで、小さな庭に出そうとしても、怖がって一目散に帰ってくるし、小さな池に魚がいるのをみてはビックしてあとずさりするような性質だった。

一方、ほぼ一年違いで、ご縁あって友達の家からやってきたSasukeは名前の通り元気で無邪気なオスの猫だ。
最初に家に来たときは、物おじせずにShantyに近寄って挨拶をしたのだけれど、ビビりのShantyが逃げ去ってしまった。
何とか、近寄って仲良くなろうとするSasukeに逃げるShanty。
笑える二匹だった。

エサを食べる様子も笑えるものだった。
邪魔されずにゆっくりと食べたいお嬢さん猫のShanty。
いつも、相手が食べているものを僕もたべたいSasuke。
食欲の塊の小さなオス猫に最初に食べさせ、落ち着いたところで
別の皿でお嬢さん猫にエサを与えるのだが、自分の餌を食べるのをやめて
すぐに横から鼻先を突っ込んで食べに来てしまう。

『もう!いい加減にしてよ!』とばかりにあきれるお嬢さん猫。
突然下の子が現れて存在を脅かされる長女の悲哀を彷彿とさせる。

こんな二人が、いや二匹が仲良くじゃれあい、一緒に昼寝ができるようになったとき、心底ほっとしたものだ。
『なんと平和な光景なのだ。なんとかわいいのだ二匹とも!』

その頃のSasuke。こんなに小さくてかわいい。
我が家にやってきたときには、友達のご主人の肩に乗って、まるでインコのように現れたSasuke。
三つ子の魂100歳まで!ではないが、あんまり落ち着かない肩のような場所が好きらしい。安定しないソファーのクッションの上で寝ている。

しかし、こんな穏やかな平穏な猫日和はそんなに長くは続かなかった。

食べ続けるSasuke。小食でお嬢さん気質のShanty。
お姉ちゃんのプライドと気位の高さで何とか、優位を保とうとするものの
日に日にパワーアップするSasukeの体力と体重にだんだん日頃のじゃれあいもお姉ちゃん劣勢の兆しが見えてきた。

このころから、Sahtyがふらりと外に出て帰ってこない日が続くようになる。
どうやら、ご近所の屋根の高いところに上って降りれなくなっているらしい。最初の数日は、一人でミャーミャー泣いていた。
塀伝いに、隣から隣へと歩いて行って、屋根伝いに近くの屋根に降りたものの、今度は段差を飛び越えるのが怖くて帰れないらしい。
すると弟分のSasukeが様子を見に偵察に行って、しばらく二人で屋根の上に滞在。

怖さを知らないSasukeは、しばらく一緒にお付き合いして、夕ご飯になると帰ってくるけれど、Shantyは帰れない。
住人不在の空き家の屋根の上で過ごすという日が続いた。

満月のせいだろうか?
それとも思春期なのだろうか?
夜な夜な、猫のBoy friendに誘われている?
遊んでほしい一身でじゃれつく、Sasukeのパワーに嫌気がさした?
はたまたBali島のブラックマジックにでも引っかかったか?
それとも天啓?

自分の家の屋根でも
5メートルは優に超えるところに助けに行くのは容易ではない。
ましてや、住人不在のご近所の空き家の屋根となると・・・・。
しかし、暑い日が続き、水も飲まずに屋根の上にいつづけるとなると
3日目を超えると気が気ではない。
不在の住人の塀の上に息子に上らせ、エサと水を袋に入れて投げ与えること幾度・・・。

一筋違う通りの住宅地の守衛さんに、頼み込んで梯子をかけて
住人不在の家に上ってもらった。
しかし、根っからの怖がりビビり猫。
見ず知らずの人のところにノコノコと助けられるわけはなく、
結局は息子が登る羽目に。

下から見守る私としては、はしごの足が外れたらこれは大けがどころでは済まないな。生きた心地がしたものではなかった。

しかし、やっとの思いで連れ帰り、家でエサを食べさせ、水を飲ませ、抱きかかえて『もうちゃんと家にいるのだよ。』と頼み込んでも、また数日後の夕方には、あらぬ方向からミャーミャーとか細い鳴き声がするのだ。

何回目からかは、空き家の屋根の上に、屋根裏に通じる隙間があって
もぐりこんで、せっかく助けに息子を上らせても出てこないこともあった。

猫に裏切られた思いで、怒る息子をなだめつつ
万策尽きた思いに途方に暮れた。

呼ぶたびに心地よい響きが広がる名前に使用とつけた名前Shanty。
サンスクリット語で、平穏。安らぎの意味を表す。
ここBaliでは、朝、昼、夜と流れるガヤトリマントラーの中でもオームと唱えた後にShantyと3度繰り返して平穏を祈る締めの言葉でもある。

用があって家を空ける予定が迫っていた。
人間の浅知恵から、オスのSasukeが追い掛け回すのが原因ではと、予定より早めて下のオス猫の去勢手術を早めて様子も見てみた。

おさまったのは数日。
やはり繰り返し家での連続だった。
『大きくなったオス猫との相性がわるいのでは?』と思い、急遽Saukeを知り合いの家に預けることにした。


弟分がいなくなって、急にしゅんとしたお姉ちゃん猫のShanty。
これで落ち着くかと思いきや、落ち着いたのは2週間程度。
またも連日家でが始まった。
さらに一件先のオーストラリア人カップルの家の屋根に飛び移ることができるようになったものの、人見知りで怖くて人のいる居間を通過して帰ってくることができない。

外から名前を呼ぶと、助けてとばかりに知らない人の家から
『ミャー。ミャー。助けてよ』となくのである。

『ちょいと、ちょいと。お嬢さん。あんた猫でしょ。隙間を見つけてするりと帰ってらっしゃいよ。』

都合の悪いときは、ニャーニャーの一点張り。
困った猫である。

最後の家出の日には、夜9時を過ぎても住人が返ってこないので、あきらめて翌日に迎えに行こうと帰った。
すると、Shantyお嬢、夜通し、オーストラリア人の家で逃げ道を探ったのだが、怖くて家人と対面できず、夜通し家の中を泣きながら徘徊したらしい。
翌日迎えにいったときには、寝不足と繰り返されるよその家の家で娘の世話で疲れたオーストラリア人はカンカン。

『もうたくさんだわ!また次に来たら、もう返さないから!』
とお冠だった。

Shanty は不思議な猫だった。
我が家に来た初日に、初めてこの手で抱き上げたとき、何か大切なものを受け取ったことを感じ取ったものだ。
小さい子供のようにかくれんぼをするのが大好きだった。
こちらが物陰で待っている気配を察して、相手も待っているような猫なのだ。
朝起きると、一人機嫌よく『ゴロゴロ』と喉を鳴らして寝転がっている
Shantyからどれだけ助けられたことか。


霊感の強い友達が来た時に我が家で言ったものだ。
『この猫を抱っこしていると、いろんなメッセージがたくさんおりてくる。あ!もう次の飼い主がみえているよ。
この猫は、飼い主の負担にならないように、次期が来たら家を出ていくみたいよ』

この言葉もあって、まだ私の元を離れないで!とばかりにしきりに連日、
家出娘ならぬ家出猫を探しに出かけたこの2か月。
もう限界だった。

わがままにわがままを言って、Sasukeを引き取ってくれた友達に相談して
Shantyを代わりに預かってもらえるように頼んだのだ。

猫の通常の常識からいうと全くナンセンスだった。
家に居つくというメス猫のビビり猫を、車で一時間も移動させ、塀や囲いもないオープンな環境に連れて行くのだ。
『もし逃げて、帰ってこなくなってもしょうがない。』お互いに話した。

おまけに、先に引き受けてもらったオス猫のSasukeは、
『ここ最初から僕の家!』だといわんばかりのなつき様。それを3週間余りで引きはがして連れ帰ろうというのだから、人間の身勝手もいいところだと思った。

Shantyを連れて行った日は、人間も悪酔いしそうなひどい渋滞だった。
車で移動する間中、Shantyはひどく取り乱し、隙あらば逃げ出そうと
藻掻き、ひっかき、なき続けた。

新しい家に着いたそうそう、犬にほえられ、さらにかごの中で縮上がった。
友達の部屋に着く早々、ビビりのShantyは
まるで小さい子が布団に頭を突っ込んで触れ腐れて寝てしまうように、
座布団の積み重なる部屋の一番隅っこの安全地帯に
居場所を陣取り出てこなくなった。

『お母さん帰っちゃうよ。ごめんね。ごめんね。』
と私が最後に言い訳をしようにも出てくることなく、
その日はとうとうご飯も食べずに寝たそうだ。

また、Shantyと引き換えに、連れ帰るSasukeに対して
預かってくれていた家のご主人は猫に向かって話しかけたそうだ。
『俺がお前だったら、もう帰らない。ここがいい!って昔のご主人に言うぞ!お前も行ってみたらどうだ?』と。
やっと新しい環境になじみ、愛着ができたときに引きはがす身勝手さに
申し訳ない思いばかりだった。


それから一週間。
日本から家族がやってくるのにかこつけて、
お嬢猫の様子をみにお邪魔して驚いた。
まるで『私、昔からここにいたわよ。』とでも言わんばかりに
新しい家になじみ、
おまけに饒舌におしゃべりをするようにまでなっていたのだ。

ちょうど、この友人の友達で、”猫の星の番人をしていた”という
旅人ヒーラーの女の子がBaliに来ているというので、会うことになった。

いったい、
ここ2か月のお嬢様猫をめぐる家出騒動はいったいなんだったのか?
旅人ヒーラーのK子ちゃんからアクセスバーズのセッションを
受けながら聞いてみた。

『うーん。なんか猫は困ってはないみたい。というか、猫が仕組んだことみたいですね。猫がこの流れを作ったというか。猫がここに来るために、猫なりの方法で騒ぎを起こして、流れを作ったみたい』

『えーーーー?????』
どういうこと???

『うーん。流れなので、言葉にしてしまうとなんか別の意味になったり
ちょっと違う意味になったりするのだけど、まあ、猫がこの流れを作ったということですね。それにShanty は、彼女とパートナーとの間も取り持つみたい』というお返事。

その日は、あまり意味が分からないまま、とりあえず猫と過ごし友人のプロジェクトが進むウブドのヴィラで家族とともに一泊したのだった。

ウブドのNaya Veda Vastu からの朝日。ヤシの木陰から登る光がまぶしい。

フラワーオブライフを思わせる、灯り。朝日の光もこの窓から差し込む。

洗面台のアンティークな灯をみていると、時を忘れる美しさ。

翌朝のことだ。
Shantyを引き取ってくれた友人が朝からなにやら、いたく、興奮している。
『猫の話には、続きがあったのよ。
 実は、昨日古くからの友人から電話があって、
 あることでスピリチュアルな人のところに行ったら、
 いきなり強い猫の顔がバーンと出てきたのよ。
 そして、この猫があなたの髪型を思わせる女性を守っているって
 いわれたの。
 犬や猫だけが、こういう形で人間を守るらしいんだけど、
 ある人とのトラブルから猫が守るためにやってきたんだって』
 と言われたそうだ。

 彼女が何かと大変な時期にあることは知ってはいたのだが、
 まさか猫がそんなことまでするとは思ってもみなかった。
 おそらくは、目先のトラブルやもめごとから守るだけではなく
 彼女たちが手掛けるプロジェクトがしっかりと実現し
 多くの人に新しい生き方と場所を提示できるように
 もっと大きな流れの一環としてこの猫は
 ここにやってきたのだろうと思った。

 いわれてみると今回は不思議なことでもあるのだ。

 ビビり猫で、元来、男の人には頑として近づかないようなお嬢猫が
 引き取られた翌日から友人のベットで寝ているという。
 おまけに翌々日からは
 彼女のパートナーに信頼感を抱いてなついているというのだ。
 もっと人懐っこいオス猫のSasukeでさえも
 一週間以上もパートナーになつくのに時間がかかったというのにだ。

 さらに、引き取られてたった、一週間。
 会いに行ったときには、まるで人間のように
 よくおしゃべりをする猫になっていて、
 最初から我が家だったような顔をして友人の家を歩いているのだ。
(メス猫って、家になつくのではなかったっけ!?)

 かつての愛猫が、まるで水を得た魚のような顔で
 幸せに暮らしているのをみると、
 人間も動物もおさまる場所に収まるのだなと
 妙な感覚が押し寄せてきた。

 ちょうど自分も変化の真っただ中にあって、
 来年どこにどうやって暮らしているかも
 まるきりわからない渦中にいるのだから、
 一連の猫の計り事が見せてくれる”大きな流れのおさまり具合”には
 説得力がある。

思えば、旅人ヒーラーのK子ちゃんから、
アクセスバーズをうけるのも流れだったのだろう。
一年前に別のチャンスがありながらなんとなく気が乗らず
計ったわけではないのに、すべてが整い、会う人に会い、受取り、
符号がまるで音を立てて”カチッ!”と会う瞬間を見せられたような
数日間だった。

そして、愛猫Shantyが最適の場所と最愛の飼い主を得て、最高に幸せな猫になっているのをみて、ぴたりと私の心のざわつきもやんだのだ。
手放した瞬間に、本来、宇宙はこんなにも完璧で美しさに満ちていると
猫のはかりごとは伝えているような気がしている。

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