楽しいこと、苦しいことは表裏一体/NPO法人あっとすくーる 橋口 大知さん(後編) #N男N女 File.3


明日の社会を良くしようと、様々な課題や問題と日々格闘するNPO法人。
そこで働く人たちを戦隊ヒーローに例えるなら、自らの正義を信じてリーダーシップを発揮する代表は赤レンジャーか。では、いつでも冷静沈着な青レンジャー、周りを明るくするムードメーカーの黄レンジャーは・・・?

定期連載「 #N男N女 」では、それぞれの個性や強みを発揮しながら、熱い思いを持って団体の活動を下支えする職員らにスポットを当てる。

今回、大阪北部で子どもの学習支援を行うNPO法人あっとすくーるで働く橋口大知さんにインタビューを行った。

前編では、橋口さんの原体験を中心に、なぜそこまで貧困家庭の子ども支援にこだわりを持てるのか、その力の源泉に迫った。前編の記事はこちら


後編となる今回、橋口さんが愛知から大阪に来て何を感じ、何を得たのか。また、NPOの職員として現在の生活についてうかがった。橋口さんの底知れぬこだわりに、少しだけ触れられた気がする。


子どもたちが持つ芯の部分

大阪での2年目では、市から委託を受けた授業型の事業で責任者を勤めさせていただきました。発達の課題を抱えていたり、不登校だったりする生徒と深く関われたことで、1人の子どもに対して何ができるかをもっと考える必要があると感じました。

3年目には生徒も入れ替わり、様々なバックグラウンドを持つ子どもと触れ合うことになる。その中で出会った、家庭や学校に居場所がない生徒の言葉に、橋口さんはある引っかかりを覚える。


「ここの人たちは全然否定してこない。自分を傷つけてこない。だから味方だ。」


これを聞いた時に僕は、この子だけでなくこの子の家庭や学校の味方でもありたいと思ったんです。学校の先生は人数が多い中で必死に考えているし、保護者さんは長く働いていることが多い。関われる時間が短いんです。


そういう状況で、「なんとか責任を持って育てなきゃいけない。」という思いを保護者さんが持ってしまうと、どうしても強い声かけになってしまう。「ちゃんと勉強しなさい。なんでそんなところでゴロゴロしてるの。」と言ってしまうんです。

寄り添う。保護者や教師の言動にではなく、そうせざるを得ない状況に目を向ける。そうすることで家庭や学校、その生徒自身が幸せになる方法を常に模索していると語る。


4年目に入り、高槻校の塾長になりました。委託型ではないため、経営にも責任が生じてきます。売上が下がると、より多くの生徒に対してサービスを届けられない。そうならないためにもっと質は上げる必要があると感じます。


新しい環境になり、さらに成長しようと思っていた矢先に、大阪を震度6弱の地震が襲った。高槻校のビルにはヒビが入り、子どもたちの居場所は失われてしまったのだ。

現在は拠点探しをしながら、はる遊食堂さんの一角を無償でお貸ししていただき週に4回、学習支援を行うことができています。あまりに突然のことだったため、他に移るのにはやはり時間がかかる。このご好意には本当に感謝したいですね。
また、時間だけでなくお金もかかることなんですが、やはり突然だったためなかなか用意できなかったんです。ただ、子どもの居場所をなくしたくないという思いから、クラウドファンディングをしています。


クラウドファンディングに関する詳細はこちら。


実際に橋口さんの元へは、これから再び大きな地震が来るかもしれないという不安の声や、家で1人は怖いという恐怖の声が生徒から届いたという。

今回の地震で、家庭や学校にしんどさを抱えている子どもたちの内側の部分が見えてきました。そんな子達の声を直に聞くと、新しい場所を早く用意して、そこを今までより良い場所にしたい、と強く感じました。

被災した子どものことを考える橋口さん。星野源さんに似ている。


塾に通っている子どもだけが幸せならそれで良い、という訳ではない。そういう思いから、今まで塾に通っていなかった生徒にも対象を広げて、現在は無料で食堂の一角にて学習支援を行っている。


潜在的に求めていることを見る。理由を深掘りする。表面的なところで判断しない。子どもに興味を持つ。子どもに恋をする。橋口さんはこだわる。どこまでもこだわり続け、考え続け、寄り添い続ける。


楽しい、苦しい

やっていて楽しいこと、辛いことは何かと尋ねた。

学習支援を行っているので、やはり合格の報告を真っ先にもらえるとすごく嬉しいですね。あとは卒業式や文化祭などに立ち会えて、その子の人生の一部に関わっていることが感じられるのも、やってて楽しいことですね。


反対に、子どもについて考えることが楽しい時も苦しい時もあります。こうしてあげたい、でもそれが正しいのか、その子の望んでいることなのか。でも、それはしなきゃいけなくて・・・。
こんなことを1人で考えていると苦しいので、職員同士や大学生とのやりとりはすごく大事にしていますね。乗り越えた瞬間は苦しい中の光を感じたりします。苦しいと楽しいの瞬間は、本当に紙一重、表裏一体ですね。


2年間、塾のアルバイトで大学受験を控えた高校生と関わってきた筆者にとって、本当に共感できる話だ。自分の一言で生徒の人生が変わる。決して大げさな表現ではない。

やり甲斐を感じる瞬間でありながら、ものすごい重圧も同時にのしかかる。だからこそ生徒に対して本気になれる。だからこそこだわれる。そんな思いがある場所は、卒業後も生徒たちの居場所になっていく。


NPOの職員として

次に、NPOで働く職員ならではの悩み、金銭面や結婚観についてうかがった。

結婚に関しては未定ですが、したいと思う人はいます。でも僕、本当に貯金が苦手なんですよ・・・。給料が低いというより、入った分を全部使うこの性格のせいですね・・・。



NPOだからといって稼いじゃダメという訳ではないんです。むしろ、自分たちのビジネスプランを練った上でお客さんに質の高いものを提供できると、満足度は上がっていくんです。


1人1人に向き合うこととビジネス的な効率って対極のように思えるんですが、そこを両立して、泥臭く、1人1人に対していいものを作っていく。その過程で社会に認められ、人に必要とされることで結果的にお金は回ってきます。


これからNPOで働こうとしている人へ

まず、どんな形であれ、実際に経験してみることは大事ですね。インターンでもボランティアでも。ただ、1ヶ所だけ見るのは勿体無いです。


自分の中で比べる軸、基準を持つために、同じジャンルでも違うジャンルでも、複数のNPOに携わってみてほしいですね。「より良くしたい」と心から思うために、比べる基準、目標を設定することは大切ですから。


自分の中で軸を持つ。難しいように聞こえるかもしれない。だからこそ、少しずつの時間と体力とお金を、少しずつ違うところに使ってみても良いと筆者は考える。色んな団体に広く浅く関わることで、本当に深掘りしたいところが見つけよう。


NPOは、社会を変える、作るをミッションにしていることが多いです。あっとすくーるの場合は、前向きな進路選択ができる社会を作る、という感じで。


そう聞くと「自分は何もできないなあ」と思う人もいるかもしれません。でも、社会への参加方法は多様にあるんです。例えば選挙で、子どもの貧困問題に対する政策を打ち立てている政党に投票したり、少額でも寄付してみたり、などなど。


そうやってまず動く。どんな小さな一歩でも。そうすることで、今見えている景色がほんのちょっぴり変わって、社会がほんのちょっぴり良くなるかもしれない。そうやって、時に休憩や後退、進路変更をしながら、少しずつ前へ進んでいくのだろう。


最後に


今回、取材に応じてくださったNPO法人あっとすくーるは、現在クラウドファンディングを行っております。

7/26現在、800万円を超えるご寄付をいただいております。目標金額まで後少しです。

この記事を読んでくださり、あっとすくーるの活動にご共感いただいた方。ご支援をしていただけないでしょうか。

微力ではありますが、筆者も寄付させていただきました。心から応援しております。ご協力のほど、よろしくお願いします。


文章・編集  藤原雅樹

インタビュー ひらいだいき

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