【不登校の子どもをなくすのではなく、“不登校”という言葉自体がなくなる社会を目指して』】未来ラボメンバーインタビュー⑤

誰が見ても、「優しそうだな」と感じる柔らかい表情。そして、決して相手を蔑ろにしないからこそできるコミュニケーション。彼と話していると、誰もを受け止めてくれるような親心を感じる。しかし、彼に初めて会った時、僕は彼に自分の全てをさらけ出せない、不安というよりは違和感のようなものを感じていた。

 そんな彼は、立山剛さん。大学の職員として勤めながら、特定非営利活動法人東京シューレというNPOで理事をしているもやられている。教育に興味があり活動している僕は、二つの異なる教育機関で働く立山さんの話を聞くのが楽しみで、違和感など気に留めることもなく、インタビューの準備をした。

【多様な学びの形を創出する東京シューレ】

――東京シューレって、フリースクールと呼ばれる学校運営されているNPOですよね。フリースクールについて、少しだけ説明お願いします。

立山:一般的な学校とは異なる考え方に基づいた学びの場で、子ども達の主体性、子ども達がやりたいことを、形にしていこうという学びを提供しているのが東京シューレの特徴です。なので東京シューレでは、「ほっとできる居場所」「やりたいことを応援する場所」「自分で決めることを大切に」「子どもたちで創る」「違いを尊重する」ことを理念として掲げています。

子どもの主体性を尊重したいと思っているので、来てくださいとは言いません。本人が行きたいという意志がなければ、受け入れにも慎重に対応します。

――なるほど。子ども達の主体性を大切にしてるとおっしゃいましたが、具体的にはどういうことをしているんですか?印象に残ってるエピソードなどがあったら教えてください。

立山:面白いエピソードは沢山あるんですけど、僕が東京シューレに興味を持つきっかけとなったエピソードを紹介します。荻上チキと言う人がTBSラジオでやっている「セッション22」という番組があるんですけど。様々な社会問題について発信している番組で、ある回に東京シューレの代表の奥地圭子さんが出演してたんです。ちょうどその時に話していたエピソードを2つ紹介します。

一つ目はログハウスを作ったエピソードです。子ども達の「ログハウスつくりたい!」から始まり、カナダから、材木を輸入して、ちゃんとログハウスの専門家から造り方を学んで、子ども達でログハウスを作った過去があるんですよ。なので実際に、結構立派なログハウスを長野県に持っていて、今も子ども達の企画した合宿などに使われています。

もう一つはオーロラを見に行ったエピソードです。子どもがオーロラを見に行きたいって言って、それでアラスカにオーロラを見に行くことになるんです。でも、ただ見に行くだけではなくて、オーロラを見る為には、いくらかかって、どうやって行けばいいのかとか、どこに行くのかとか。そこから始まるんですよ。アラスカという場所を決めたら、アラスカという場所についてもちゃんと調べたりとか。そういった形で、子ども達のやりたいことを出発点に、学びを広げていくことを大切にしています。

【立山さんと東京シューレ】

――興味を持ったきっかけとなったエピソードを紹介して頂きましたが、その後はどのような流れで関わることになったのですか?

立山:実は、僕の息子が今東京シューレの会員なんですよ。(東京シューレでは、通う子どもを“子ども会員”と呼んでいる。)息子は、小学校1年生の終わり頃から学校に行くのを渋り始めて、2年生の終わり頃にはもう五月雨登校になって。教室に入れなくて保健室に通っていたので、学校に通う事は厳しいと感じていました。なので、学びの場を学校に拘らないで、色んな人と繋がりながら、学びを広げて行けたらいいなあ、という思いが僕にはありました。その後一年半くらい、息子は将棋やプログラミングを教えてくれる場所に通っていたんですよ。

小学校4年生くらいの時に、先程話したラジオを聴いて、息子を見学に連れて行ってみました。それで「どう?」と聞いたら、「ここなら行けるかな」って言ったので、じゃあしばらく試しに行ってみようかということで、最初は会員である息子の親として関わり始めました。

――親として実際に関わり初めて、今は理事をされているとの事ですが、それはどういうきかっけがあったんですか?

立山:もともと東京シューレの理事は、スタッフが半分、それから親が半分で構成されています。先程話した通り、僕は自分の子どもを通して関わるようになり、色々手伝っているうちに声がかかり、理事になりました。それが一年半前ですね。

――具体的には東京シューレでどのような活動をされてるんですか?

立山:今は、ブランディング、ファンドレイズ、広報、IT化。もう全部まとめてやっちゃおうということで、同時並行で進めているところです。

――おおぉ、すごいオールマイティにやってらっしゃるんですね。なんでそんなに沢山の活動を兼任されてるんですか?

立山:最初はファンドレイジングだけやればいいかと思っていたんですよ。どんな家庭の子どもでも、もしシューレに来たいというのであれば入れるように、「ちゃんとお金集めした方がいいよね」ってところからファンドレイジングに取り組み始めました。

けれども、社会に対するビジョンみたいなものがまだ明確になってなくて。教育の理念はあるのだけれど、じゃあそれでどういう社会を目指したいのかは、まだ言葉ではっきり表現できていなかったんです。そうしたら、ブランディングも同時に始めないといけないってことになり、ブランディング、ファンドレイズ、広報、IT化を全部まとめてやることになりました。

――そういったお仕事はもともとされてたんですか?

立山:大学の職場でも、「ちゃんとブランディングして、学生を集めないとだめだよね」という話になり、その働きに僕も関わっていました。それもあって、東京シューレで最初「ファンドレイズをやらないといけないね」という話があった時に「やりましょう」と言ったんです。でも色々調べていくうちに、これ結構大変なことを言ってしまったということに気づいて(笑)。本を読んだり、ネットの記事などを読んだり、手探りで調べている中で、NPO未来ラボの存在を知り、noteで1回目と2回目の定例会の様子を見て「自分が学ばないといけないのはこれだな」と。

【NPO未来ラボから、ありのままの自分で生きれる世界を】

――立山さんは現在、NPO未来ラボとどのような関わり方をされていますか?

立山:定例会や、soarさんのライティング講座など、今井さんやラボメンが企画してくれてるイベントには行くようにしています。それ以外でも、NPO未来ラボがきっかけで繋がった人達が働くNPOを訪問させてもらい、ファンドレイズや広報の取り組みについてお話しを伺いました。

――なるほど、ラボのイベント以外でもラボメンと会って情報共有されてるんですね。NPO未来ラボに入って3ヶ月程だと思うんですが、入って一番良かったと思うことはなんですか?

立山:一番良かったのはやっぱり、沢山のNPOの活動を知ることができたということですね。色んな活動の話を聴いてると、結構共通点があることに気づきます。例えば、小学校にLGBT教材を配布している認定NPO法人ReBitの越智さんを訪問して話を聴いていると、やっぱり多様性なんですよ、共通するのが。誰もがそのまま、自分のままの姿で生きていける社会を目指してるんですよね。

シューレも、不登校だからとか学校に行けないからとかじゃなくて、学校に行かない選択をしても、成長できるし、社会で生きていけるってことを伝えたいんですよ。そういう根本の部分は共通することが本当に多くて、共感できる部分が結構ありましたね。具体的な話を沢山聞くことが出来たのは凄く良かったですね。

――今後立山さんがNPO未来ラボに求めること、もしくは新しくやっていきたいことはありますか?

立山:定例会以外の情報交換というか、学びの場みたいなものができるといいかなと思ってます。例えば今、色んな学んだことを東京シューレで活かせるように動いているんですが、今まで東京シューレではやったことのないことが多く、ファンドレイジングや広報に精通してる人もいないんですよ。だから、そういったことを実践している人達と勉強会ができたらいいなあと思ってます。

【“不登校”という言葉を無くしたい】

――先程息子さんの話が出ましたが、学校の外に学びの場を求めるという判断に抵抗は無かったんですか?

立山:ありました。僕も最初はどうすればいいのか分からなかったです。でも元々僕は学校には絶対に行くべきだというような考えではありませんでした。でも実際に学校に行かないという場面に直面すると、他に行くところも分からないし、家では僕が仕事してるから見られないし、これは学校に行くしかないよなーということで、手を引きながら一緒に行ってたんですよ。

ある冬の日、学校の校門の前に来た時に、息子がランドセルを放り捨てて、ジャンパーもガパっと投げ捨てて、大の字で転がって。「俺は学校に入らない」と明確に意思表示された時に、僕は初めて「そんなに行きたくなかったのか」と気づきました。それで、もう完全に学校以外のところを探そうと決めました。

――そんなことがあったんですね。そんな立山さんが、東京シューレでの活動通して目指している社会はどんな社会ですか?

立山:基本的に東京シューレと関りながら目指しているのは、子ども達の選択肢を増やすことです。そもそも不登校っていう言葉や、不登校と言わざるを得ない状況自体が、学校に行くっていう選択肢一つしかないことを表してるんですよ。選択肢が一つしかないから、学校に行けない子=不登校というふうになる訳です。

学校の外にも沢山の学びの場所があって、それを子ども達が自由に選んでもいい、選べる状況になれば、学校に行くとか行かないじゃなくて、「私はあそこに行く」とか「僕はここ」、それで終わりじゃないですか。だから、子ども達の選択肢を増やす、学びの場を増やすことで、“不登校”という言葉自体を無くしたいんです。そういう風に子どもが、自由に、自分の学びたい場所で学び、成長できる。そいった社会が来るといいなと思っています。

彼のインタビューを振り返っていて、だんだんと僕が最初に感じていた違和感のような気持ちの正体が分かってきた。静かな“怒り”と、そこから生まれる“親心”。今振り返れば、彼と始めて会った時に感じた違和感はその一見対立する二つの心から感じたものなのかもしれない。

「なぜ子ども達の選択肢がこんなにも限られているのか。もっと多様な選択肢から、子ども達が自由に選べる社会でもいいじゃないか。」そんな怒りのトゲが彼の中にはあったのだ。しかし、そのトゲは決して誰かを傷つけることはなく、むしろそのトゲを包み込む柔らかい綿で、周りの人をも包み込んでくれるのだ。

いつか僕や同世代の友人に子どもができた時に、躊躇いなく「どこで学びたい?」と聴けたら、どんなに素敵だろうと思った。

文章:宮野

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