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【「誰も一人にしないために。」 ~孤立のない未来を見据えて~ 本山幸志郎インタビュー】未来ラボメンバーインタビュー③

10月下旬、画面越しにまっすぐ視線をこちらに向けた彼はごく普通の青年に見えた。

「はじめまして。」

油断してはいけない。NPO未来ラボは熱い人しかいない。
そう思いながらインタビューを始めた。


本山幸志郎
1995年5月生まれの23歳。三重県生まれ、神奈川県育ち。私立栄光学園中高等学校、慶應義塾大学環境情報学部を卒業。新社会人としてシステム開発会社でECサイトの開発に携わるが、今年度末をもって会社が廃業されることになり、転職を視野に入れる。

「友達になる」-キャリアへの問題意識をきっかけとした中高生との関係づくり-

――大学ではどんな勉強をされていたのですか

本山幸志郎さん(以下、本山):僕のいた環境情報学部は情報系や建築系といった理系っぽいことをやっている人もいれば、社会学や法律を学んでいる人もいるような学部です。僕はビジネスとソーシャルのテーマにどっちもいったりきたりみたいな生活をしていました。

――この学部を選択したのはなにかきっかけがありましたか

本山:僕は、高校の時に進路をどうしたらよく分からなくなってしまった時期があったんです。進路選択も「宇宙兄弟」が好きだったので、なんとなく宇宙に関する仕事に就きたいなと思って工学系の大学を受験しました。工学系の大学も合格はしていたのですが、たまたま出願していた環境情報学部に進学することにしました。

――あえて環境情報学部に進学したのはなぜですか

本山:僕が卒業したのは東京大学に学年の四分一が進学するような中高一貫の男子校でした。でも、僕は当時クラスで全然勉強についていけなかった。このまま工学部に進学してしまったら、生活や考え方が高校とあまり環境がかわらそうだなと思ったんです。

――実際、進学してみていかがでしたか

本山:よかったなと思うことの一つは、ものすごく幅広いバックグラウンドをもった学生が大勢いたことです。高校生の時からビジネスしている人、競技かるた全国大会入賞者(※1)。彼らは高校生時代の活動などプレゼンして、AO入試を突破してくる。だから、大学で学ぶ目的意識がはっきりしているんです。そういう学生がこの学部の3-4割を占めています。

※1 競技かるたとは、小倉百人一首を用いて行われる競技。一般の想像以上に気力、体力も求められることなどから「畳の上の格闘技」とも形容されている。

僕はそういう人たちに衝撃を受けたんです。じゃ、今の自分に何ができるのだろうと考えたら、僕は世間の高校生よりちょっと受験勉強ができるくらいの人間だって気づいたんです。なんでもっと将来のこと考えてこなかったんだろうな、ってすごく思ったんです。

自己の経験を通して「中高生のキャリア観の形成」に問題があると考えた本山は「Life is Tech !(※2)」にインターンとして参画した。
※2 Life is Tech !(https://life-is-tech.com/)はライフイズテック株式会社の運営する中高生向けIT・プログラミング教育キャンプ

ーーインターンをされてみていかがでしたか。

本山:高校生の頃の自分は、こうしたプログラムを知らなかった。活動をしながら高校生たちを間近で見ていると、自分も高校生の頃にもっといろいろな大学生と交流を持ちたかったなぁ、と思います。交流というよりは、友達になる感覚ですね。

僕の高校生活では学内の人としか知り合うことがなくて、いわゆるロールモデルとなるような大学生や大人が身近につくることができませんでした。
その結果、好きな漫画に感化されて大学を選ぶ、そんな形になってしまったと思います。

ーー身近であることが重要、ということですか。

本山:学校にはOBの方が講演等にお越しになることがありました。今になって思えば、大学や社会を知る機会になっていたのかもしれません。ただ、僕は当時興味を持つことができなかったんです。その人との距離が遠いというか。話を一方的に聞くだけじゃ弱いんです。より身近な存在になっていかないと中高生がキャリアについて考えることはあまりないのでは、と思います。

「関係性を生み出せる場をつくる」、そのために。

社会人となり、本山の問題意識も変化をしていく。
しかし、根本にあるものは変わらない。
他者との関係をどう紡ぐのか。そうした視点があるように感じた。

本山:社会人になって、改めて自分の関心の強いテーマってなんだろう、と考えることがありました。そう考えた時に浮かんできたのが、「孤独」なんです。

ーーそれはどうしてでしょうか。

本山:最近、ニュースや書籍でも取り上げられている「中高年男性の孤独」や「介護の孤独」は僕の家族を含めてごく身近にある問題だったことも一因です。

僕自身、これまで学生時代のグループワークなどの小さな単位でのリーダーを務めることもありました。そこで他のリーダー役の方たちとも話をすると「孤独」を感じていることがわかりました。リーダーを務める方って友人が多いとか、周囲に人が周りにいっぱいいるといわれて孤立とは無縁なように感じることも多い。でも、人はいるけども感じる孤独というものもあるんです。

そして話は自身が企画した不登校児向けのイベントとNPO未来ラボへの加入へとつながる。

本山:僕の知り合いのお子さんにゲーム好きな不登校の子がいたんですね。僕自身もゲーム好き、むしろやりすぎていた子どもでした(笑)。「ゲームはよくないもの」という風潮もまだ世の中には根強く残っていると思うんです。でも、僕はゲームは仲間づくりの最強のツールだと思っています。ゲームは一人で遊ぶだけじゃない。仲間と一緒に遊べる、世代を超えて共通言語になるものだって。

そういったこともあって、その子のためにもゲームを介して参加者同士が仲良くなるような場をつくってみたい思たんです。何度かそうした機会を設けていくことで不登校かどうか関係なく、ゲームを入り口にして関係性を生み出せる場ができればと考えていたんです。

が、台風の接近にともなって中止しました。ただ、一緒に企画を進めていた方たちの感触もあまりよくなくて、「コンセプトに対してこの企画づくりでよかったのか」と自分の自信も少しなくなってしまっていて。

NPO未来ラボにはいったきっかけの一つがこの経験です。こうした運営側に金銭的なインセンティブなどがない活動企画に際して適切なアドバイスをくれる人や似たような活動している人と繋がれることを期待していたところがあります。

――9月に加入されたんですね

本山:会社から「クローズします」という宣言された次の日に入ったんです(笑)。もともと今井さんの登壇するイベントに参加したこともあって、加入しようかは迷っていました。でも、ちょっと前から「クローズしたら入ろう」と決めていたところもありました(笑)

まだ2回くらいしか、オフラインでは参加したことはないのですが、そのうち1回が都内で行われた「新歓」でした。でも、元から入っている人が1人しかいなかったんです。

―みんなはじめましてですね。

本山:ほんとにはじめましての人ばかりの飲み会だったんです(笑)。
でもそのときに東京シューレ(※3)の理事をされている立山 剛さんとお話ができました。ディスカッションさせていただいたり、今度フリースクールに見学にきてもいいよといったお話をいただいたり。今までにない機会を作ることができました。

※3 東京シューレ(https://www.shure.or.jp/)はフリースクールの運営を中心に、学校に行っていない子どもとその親を支援する活動行う特定非営利活動法人

ほかにも今回のライティング講座の講師をsoar(※4)の工藤 瑞穂さんが務めてくださったり、コルク(※5)の佐渡島 庸平さんやcotree(※6)の櫻本 真理さんが定例会に登壇されたり。こういった各組織の代表の方々などに身近に会えるチャンスがあるのはすごくいいなと思います。

※4 soar(https://soar-world.com/)はウェブメディアの運営に始まり、イベントの開催、コミュニティの運営、リサーチ活動の実施など、人の持つ可能性が広がる瞬間を捉え、伝えていく様々な活動を実施している特定非営利活動法人
※5 株式会社コルク(https://corkagency.com/)は漫画家・小説家・エンジニアなどクリエイターのエージェンシー事業を展開している。
※6 株式会社cotree(https://cotree.co/)はオンラインカウンセリングなどを中心に、個人・法人・大学向けのメンタルヘルスケアに係る事業を展開している。

「孤立を解消する」-転職のタイミングで思うこと-

―今後、どんなことをしていきたいですか

本山:エンジニアになった理由の一つは、モノづくりが好きだったからというのもありますが、Webサービスは孤立を解消する手段の一つとして大きいなとも考えています。

では、オンラインからリアルにどうつなげていくのか。そうした仕組みに興味があります。例えば「友達がいない」「仲間がいない」ということで苦しむような人がいなくなるようなことを仕事を通して目指していけたらいいなと思います。

彼の話はどれも身近な問題を起点としている。
だからこそ言葉に体温がこもっている。
淡々と語るがやはり彼も熱い。
これから転職という次に一歩を踏み出す彼。
彼のまっすぐな視線の先に何を見据えていくのか。
これからが楽しみだ。

文章:おざわたくま

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