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課題発信、原動力、現場だけのことを考えない視点【第2回定例会:「PLAS」門田さん(後編)】

「NPO未来ラボ」の第2回定例会は、ケニアとウガンダでエイズ孤児の支援に取り組む国際NGO「PLAS」の門田瑠衣子さんを招いて行われました。活動を継続・発展させていくため、資金調達において重要な寄付者・ファンの獲得について、またツイッターやVoicyなどSNSでの発信について、お話を聞きました。前編、中編、後編に分けて、お届けします。

写真 NPO未来ラボの定例会で話す門田さん

まずは社会課題を知ってもらう

今井:情報発信は、NPO業界の人、ソーシャルビジネスをやる人には大切。まずは社会問題を知ってもらうためにちゃんと伝えていくことって、重要だよね。

門田さんも発信を重視していると思うんですけど、ツイッターとかVoicyとか、どういうことを心がけてやっているんですか?

門田:発信の方針は二つあって、一つは問題を知ってもらうこと。自分たちが取り組んでいる課題、国際協力がそもそもあまり関心持たれていないので、そこに関心を持ってほしいなというのが一つの軸としてある。もう一つは、国際協力の現場で働きたいとか、働き始めたという人がどんな情報がほしいかなと思いながら発信しています。


問題に関心を持ってもらうのは、結構難しい。関心を持つ種が、その人の中にないとどんなに発信しても引っかからない。例えば有名人や著名人に協力してもらって、その人たちにPLASを応援するという発信してもらって、サイトに来てもらって、ああこういうことあるんだと知ってもらうというようなこともしている。

今井:以前に比べて最近は、国際問題に関心がない人が多いかもね。見たいものしか情報として見れなくなってきたというのはある。ツイッターとか見てると、情報がコミュニティーによって全然違う。コミュニティー同士だとか、クラスタで、分断が激しくなってきていて、情報の流通性がない。だから共感ももらえていないというのが、俺の実感としてあるかな。

保険のお姉さんと二足の草鞋を履いた創業時


今井:初心者向けに、NPO法人を作るのは大変でしたか?

門田:得意な人に任せていたから、あんまり分からない(笑)仲間がいれば得意な人にやってもらうのが一番いい。そんな感じでも何となる。

今井:創業当時は、僕自身はすごく苦労した。無鉄砲にNPO作って、寄付や事業も知らなくて、半端ないくらいお金がなかった。大阪の激安スーパー「玉出」の100円のお好み焼きを、毎日食べる生活を二年間ずっとしていたくらい。今は法人スタッフの給料は、大阪の平均給料と同じくらいは払っているんですけど。そういう苦労ってありました?

門田:私も最初何もわかっていない状態で起業した。ウガンダに学校建設しよう、行く人いないから「私が行きます」って言ったけど、私その当時はケニアしか行ったことなかったんだよね。

建設の仕方も知らないし、でももうこの期間に建てるというのを決めて、20人のボランティアスタッフを集め、お金もいただき、助成金もとった。それで現場に行って「もうやりきるしかねぇ」というような状態だった。分からないことも多いし、私は当時24歳の女の子で、そんな若い女性が現場に入ってくると、年上の大工さんは、お前中学生か?みたいな感じでバカにする。そういうところから、何とか理解を得て、建設するという状況。

「明日、100万シリング払わないと学校を取り壊すぞ」脅されたこともあった。大工さんが酔っぱらったまま来たり、逆に一人も現場に来なくて、大工さんの家まで行って「今すぐ現場来て」と呼びだしたり。本当に苦しくて、日本に帰ってきて最初は写真も見れなかったんだけど、活動報告せざるを得なくて写真を見てみたら、写ってる自分が全部笑顔だったんですね。あ、私、結構楽しかったのかも、と。

当時はアフリカに3カ月滞在して、日本で3カ月バイトするという生活を二年間やっていました。保険を売っていたんですけど、成績が結構良くて、外資系の保険会社で20人くらいの部署で売り上げの4分の1くらいが私ということもあった。だから3カ月アフリカ行きますって言っても、戻ってきたらまたやってよみたいな。それで何とかやらせてもらった。

写真 オンラインで聞く関西ラボメンバー

自分が作りたい社会のため、自分が楽しい!と思える瞬間が原動力


今井:門田さんは、団体を10年以上も続けられる中で何がモチベーションになっているんですか?

門田:常に楽しいわけじゃなくて、大変なことも多いけど、結局やっていて楽しい瞬間があることですかね。結局、自分のためにしかできないのかなというのが、13年活動した私の結論。本当の意味で、人のために活動するんじゃなくて、自分のために活動している。自分がこういう社会を作りたいから、その作りたいっていう自分の思いのために、自分がやる。目の前に困っている人がいるからというのももちろんあるんだけど、そうでなくて「それを何とかしたいと思ってる私!」みたいな。そこに軸足を置くと、続けやすいかな。

今井:僕もなんでやっているのかというと、高校生が成長していく瞬間を何回も目の当たりにして、それがあまりにも面白いから。この前、実感したことがあって、中学三年で夜の仕事にどっぷり浸かっていた子がいたんですけど、関わっていくうちに「のりさん、ちゃんと学校に行きたい」と言って学校に行きだした。昼の仕事に変えて、次は就職に向けて頑張っている。他にも起業する子たちも出てきたり。やっぱり、すごい楽しいじゃないですか。だから続けられる。

門田:活動していく中で出会う人たちに対する共感だったりとか、その人たちが変わっていく喜びっていうのはすごいある。結局その背景にあるのって、自分が変化している、バージョンアップしているってことなんじゃないかな。それも一つの楽しさかな。

とにかくやってみる、そして現場にとらわれない視点を


今井:NPOをやる上で、これは気を付けた方がいい。もしくは考え直した方がいいってことあります?

門田:えー、とにかくやった方がいいと思う。自分がそういうタイプだからかもしれないけど、よく相談にくる人で、これがそろったらやるって言っている人の条件がめちゃくちゃ高い。始めたいと思ったら今始めちゃった方がいいんじゃないかな。失敗したらそれはそれで学びじゃないですか。一番の失敗は何もやらないことだと思う。

今井:僕自身が気をつけた方がいいなと思うのは、現場ばかり考えないということ。イノベーションも生まないし、資金集めもできないし、小さい規模でしかできない。だから、自分の情報網を開いておくことが重要。

僕の立ち位置もよく変わっているねって言われて、NPOだけど、VCとかスタートアップの人とも仲良くて、いろんなところから呼ばれる。自分のこだわった視点しかみないというのはアウト。自分が動く時に、いろんな手段やコラボを考えていく、それがNPOにとって価値になるかもしれない。現場は絶対に重要視するんだけど、いろいろ巻き込むというのは重要。業界の中ばかりで考えても何も生まない。十年二十年経ったらすごく保守的な業界になっちゃうんじゃないかな。

(番外編、質疑応答につづく)

文章・編集 はしみー

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