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2016年1月20日 小値賀島・野崎島

長崎旅日記二日目。1月20日水曜日。朝、黒島にて起床。

予想外の暴風で黒島滞在が一日延びましたが、この日は無事にフェリーが運航との報せ。

朝6時半、まだ暗いうちに黒島を出港します。

相浦港に着いた時にはすっかり明るい空。ありがとう黒島。また訪れたいです。

行きと反対に相浦鉄道を佐世保方面に乗ったのですが、行きは空いていたのにこの日は学生でいっぱい。そういえば平日の通学時間なのを忘れていた。
地元だとあまり学ランやセーラー服やジャンパースカートが見られないのでつい制服ウォッチングをしてしまいます。

そして佐世保港から高速船で小値賀島へ出発。

さすが佐世保、港も軍艦が停泊中。小値賀に向かう途中も沢山すれ違いました。

波しぶきで虹が見えて幸先の良い船出。

高速船で一時間半弱で小値賀島に到着。二年前も訪れたので二回目の来島です。
港の窓口で野崎島の入島手続きを済ませ、レンタサイクルを借りて野崎島行き連絡船の午後便の時間まで小値賀散策。

小値賀はなだらかな道が多く、自転車でも走りやすい。

土地が比較的平坦で田が多く、捕鯨の基地としても栄えたため長崎の島の中では栄えた土地だったそう。
後述する野崎島と比べると、平らな地面、田畑として開墾出来た土地の面積が随分違うのが分かります。棚田にしなくても田が作れる。

今は一つの島の小値賀島ですが、かつては浅瀬で二つの島に隔てられていました。鎌倉時代末期に二つの島の間を埋め立てて田を起こし一つの島にする大工事が行われましたが、難工事で使役された多くの牛が犠牲になったとか。
その牛を供養するために経を埋納し供養塔を建立したのが「牛の塔」

小値賀港から自転車で少しの舟瀬の海岸に佇んでいます。

天気も穏やかでのんびりとサイクリング。昨日の吹雪は何だったのか。

赤浜海岸。
青緑の海、赤い砂、白い波頭。
静かに波が打ち寄せていて、どこか異界に紛れ込んだようで不思議な光景でした。

地の神島神社。
対岸の野崎島の沖の神島神社と海を隔てて向かいあっていて、本宮と沖津宮の関係にあります。
二年前に沖の神島神社に行ったので、二年越しであの日眺めた対岸に来ることが出来ました。

今でも祭祀の時はこの鳥居をくぐって海を渡って対岸の神社に上っていくそう。
ちなみに沖の神島神社には王位石という巨大な石舞台のような岩があって、そこに登って断崖絶壁でくらくらしながらこちらを眺めたのを思い出します。

神社には陽気な狛犬。

連絡船の時間も近づいてきたので港近くに戻ります。

小値賀の路地裏はどこも歩きたくなる雰囲気。

商店街で店に入り、昼食に五島うどんと熱燗を注文。何しろ身体が冷え切っていたので。
店の入り口のガラス戸がすっぽり抜けていて、聞くと昨日の強風で割れてしまったそう。さすがフェリーが欠航するだけのことはあります。
吹きさらしで寒くてごめんねと店主が魚の皮の酢の物をサービスしてくれました。とても美味しくて、ぽかぽか。

酒も入って元気になった所で、野崎島に出発。
連絡船の乗客は私と管理人さんだけで何だか申し訳ない。宿舎も私一人しかいないのに開けてもらうことに。寒い中ありがとうございました。

30分程で、二年ぶりの野崎島に到着。

かつては野崎・野首・舟森の三集落があり、多い時で650人前後の人々が暮らしていた野崎島。現在は管理人以外いない無人島。港がある野崎集落は一番最後、2001年まで人が暮らしていました。
最後の一人の住人は沖の神島神社の宮司さんだったそう。
野崎集落はまだ家が形を保ったまま残っていますが、やがてここも他の2集落同様建物が風化してなくなっていくのかもしれません、

二回目でもやはり心を掴まれる風景。

宿舎のある野首集落まで歩きます。小値賀島と比べて俄然アップダウンが多い。

野崎島にはとにかく鹿が多いです。少しあるけば鹿。どこにでも鹿。
野生のニホンジカが400頭以上生息しているそう。
猪も出ると聞いていたのですが鹿ばかりだよなあ、とこの日はまだのんびり思っていた。そう、この日は…。

少し歩くと目の前に野首海岸の青い海が広がります。

野崎島の海は引き込まれそうに綺麗。

白い砂浜、青い海。
夏は海水浴やマリンスポーツで訪れる人も多いそう。
確かに一度泳ぎたくなります。次こそ暖かい季節に来なければ。

海の見える道を抜けると現れる旧野首教会。

…に早く行きたい所ですがひとまず宿舎に荷物を置きます。

廃校となった小値賀小中学校野崎分校が宿舎として使われています。
調理室があり食事は自炊。

一人でこんなに大きい部屋を貸し切り。

実は前回来た時この広い部屋で暖房が無く、とにかく寒かったので、覚悟してホッカイロを大量に持ってきたのですが、なんと今回ハロゲンヒーターが!
おかげで暖かい夜を過ごすことが出来ました。

周囲は傾斜を削って作られた棚田跡が広がる。
棚田を眺めつつ宿舎のすぐ向かい、旧野首教会へ。

五島や長崎やその周辺で多くの教会建築を手がけた鉄川与助が初めて手がけた煉瓦造りの聖堂として1908年に完成。
1971年に野首のカトリック信徒が島を去ってから無人となり荒れ果てていましたが、1989年に長崎県指定有形文化財に指定されて修復されかつての姿を取り戻します。

風も凪いでいて堂内はひたすらに静か。

床の木目がステンドグラス越しの光で仄かに色づきます。

扉を開けると切り取られた明るい空がワッと広がる。

初めて堂内が暗かったことに気付きます。
外は段々と日が傾いてくる時間で煉瓦がオレンジ色に浮き上がる。

夕暮れまで教会の周りを散策。
教会がある野首集落は、もう家も無く棚田の石垣と瓦礫だけが残っています。

教会裏手からの風景。

日が沈むまで教会を眺めていました。
こうして夕焼けを眺めたくて旅に来たような気がします。

宿舎以外は電気もなく夜は真っ暗になるので、日が沈んだら宿に戻り夕食。
小値賀島で買った食材で暖かいご飯を作り、翌日の弁当にふかし芋も準備。
五島の黒くて魚の味が濃い蒲鉾を焼いて、持ち込みボトルの壱岐ゴールドお湯割りを飲みます。
前回来た時宿舎で一緒になって飲んだ工事の親方が魔法瓶にお湯を入れてお湯割りしていたのを真似してみました。冷めなくてとても便利。それに今回はヒーターもある。
暖まってほろ酔いでぐっすりと眠りました。

四日目に続く。


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