「遠野物語」サムトの婆 柳田 國男
松崎村の寒戸と云ふ所の民家にて、若き娘梨の樹の下に草履を脱ぎ置きたるまゝ行方を知らずなり、三十年あまり過ぎたりしに、或日親類知音の人々其家に寄り集まりてありし処へ、極めて老いさらぼひて其女帰り来れり。
其日は風の烈しく吹く日なりき。されば遠野郷の人は、今でも風の騒がしい日には、けふはサムトの婆が帰つて来さうな日なりと云ふ。
photo : コダマ model : ミライ
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松崎村の寒戸と云ふ所の民家にて、若き娘梨の樹の下に草履を脱ぎ置きたるまゝ行方を知らずなり、三十年あまり過ぎたりしに、或日親類知音の人々其家に寄り集まりてありし処へ、極めて老いさらぼひて其女帰り来れり。
其日は風の烈しく吹く日なりき。されば遠野郷の人は、今でも風の騒がしい日には、けふはサムトの婆が帰つて来さうな日なりと云ふ。
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