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FPが「確定申告」を解説する!④通院の交通費が医療費控除できる

今回は、医療費控除についてお話しします。

医療費控除は所得控除の一つ

そもそも医療費控除とは、1年間に得た収入から引いてもらえる費用です。
1年間に得た収入から必要経費を引いた所得に対して税金が課せられるのが原則ですが、実際には様々な所得控除(収入から引いてもらえる金額)があります。

具体的には、雑損控除、医療費控除、社会保険料控除、 小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、 地震保険料控除、寄附金控除、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、基礎控除とたくさんあります。

サラリーマンの方は、このうち、雑損控除、医療費控除、寄付金控除以外については会社で年末調整してもらえます。
したがって、雑損控除、医療費控除、寄付金控除については、確定申告が必要です。
寄附金控除はふるさと納税した場合に使いますが、ワンストップ特例を適用している場合には確定申告は不要です。

医療費控除になるのは何か?

① 原則として、治療のために係る費用はすべてと考えていいと思います。

したがって、病院や医院で支払った治療費だけではなく、薬局やドラッグストアで買った薬代も控除の対象となります。
ただし、単なる健康促進のためのサプリメントや栄養ドリンクなどは、治療とは言えないので対象外です。

② 逆に、病院や医院で支払っていても、治療そのものに関わらない費用は控除の対象になりません。

具体的には、次のような費用です。
(A)人間ドック、健康診断
(B)予防接種
(C)入院時の寝巻や洗面具などの身の回り品の購入
(D)医師や看護師に対するお礼
(E)本人や家族の都合だけによる個室入院による差額ベッド代
(F)親族などに付添料の名目でお金を支払った場合
(G)病院で支給される食事以外に出前を取ったりした場合
※(A)については、その結果病気が発見されて治療するようになった場合には、控除の対象になります。
(E)(F)(G)については、治療上必要とされる個室代、付添人の付添料、食事代は控除の対象になります。

③ 治療に必要であれば、松葉づえやコルセットなどの医療器具、さらにリハビリ等の費用も対象となります。

④ また、治療を受けるために病院や医院に行くための交通費も、治療に必要な費用として控除の対象となります。
ただし、公共交通機関を利用した合理的な経路を取る必要があります。
タクシー代は原則として対象外となりますが、けがや病気の具合によって公共交通機関を使うことが困難な場合は対象となるでしょう。

また、マイカーを利用して通院した場合の、ガソリン代・駐車料金は、控除の対象外とされています。

⑤ 歯の矯正については、美容のためであれば対象外ですが、治療の一環と認められれば、対象となります。子供の歯列矯正は、控除の対象と認めれているようです。

いくら控除されるの?

控除額は次のように計算されます。
① 医療費控除額=(医療費-保険金)-10万円  

つまり、払った医療費から、もらった保険金を引いた残りの内、10万円を超える金額です。
この医療費には、同一世帯の家族の分をまとめても構いません。

たとえば、家族全員の1年間の医療費が30万円かかりましたが、医療保険に入っていたので、保険金として15万円もらえました、という場合は、
 (30万円-15万円)ー10万円=5万円
となり、5万円が所得から控除されます。

② もし、総所得が200万円以下の場合は、最後に引く10万円が、総所得の5%になります。

たとえば、先ほどの例で、申告する人の総所得が100万円であった場合には、控除する金額は、100万円×5%=5万円となりますから、
 (30万円-15万円)ー5万円=10万円
となり10万円が所得から控除されます。

10万円を超えない場合

それほど医療費も使っていないので、控除するほどないなぁと思った場合でも、特例が使える場合があります。
それは、セルフメディケーション税制という医療費控除の特例です。
そこで、次にこのお話をします。

セルフメディケーション税制

これは、特定一般用医薬品等購入費を支払った場合に認められる所得控除で、12,000円以上の特定一般用医薬品等を購入した場合に12,000円を超える部分が控除されます。

したがって、たとえば1年間の医療費が5万円だった場合は、10万円を超えないので医療費控除の対象にはなりませんが、そのうち薬代が3万円だとした場合には、この特例の対象になる場合があります。

ただし、この特例を受けるためにはつぎの要件を満たしていなければなりません。

① セルフメディケーション税制の適用を受けようとする年分に、「健康の保持増進及び疾病の予防に関する一定の取組」を行っていること。
言い方は難しいですが、要するにちゃんと健康診断やメタボ健診等を受けていれば大丈夫です。予防注射を受けていることも含まれます。

② セルフメディケーション税制対象の医薬品を購入したこと。
実はすべての医薬品が対象となっているのではないのです。薬局やドラッグストアで買った医薬品のレシートよく見ると、たとえば「★印はセルフメディケーション税制対象の医薬品です」と記載されていることがあります。
この記載がないものはダメなんですね。
一部の医薬品には、パッケージに「セルフメディケーション税制対象」であることが表示されているものもあります。

②の対象となっている医薬品のみ集計して、12,000円を超えれば、申告して所得から控除できます。
申告の際は明細書を作成すれば、現物の領収書を添付する必要はありません。
現物の領収書と、①を証明するための領収書や結果通知書を一緒に5年間は保管しておかなければなりません。
明細書を送るだけで、現物の領収書を5年間保管しておくことは一般の医療費控除も同じです。



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