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次世代の金融システムは政治から離れたフリーバンキングシステムか。

ロシアの外交政策上級補佐官ユーリー・ウシャコフ氏が重大な発言をしています。BRICSはデジタル技術に基づく決済システムの構築を計画している、と。ただ、もっと重要な発言は以下のモノです。

ウシャコフ氏によれば、このシステムは「政治の外」にあり、国家目標や世界中の国々の法定通貨に依存しないという。

また、プーチン大統領も重大な発言をしています。

ロシアはいわゆる「友好国」とともに、世界的な課題に直面した際に一致団結して取り組むために、政治に左右されない新たな金融インフラを構築することに注力する、と彼は述べた。

この二つの発言に次世代の金融システムの重大なヒントがあります。それは、政治に左右されない独立した金融システムであるということです。

これは、1943年のブレトンウッズ体制から始まり、1971年のニクソンショックでも崩壊しなかったドル基軸通貨体制の終わりを意味します。

ドルは米国が世界を支配するために必要な仕組みでした。つまり、ドルは武器でした。そのことはプーチン大統領も発言しています。

多くのロシアおよび外国の当局者は、米ドルが長い間武器として使用されてきたと繰り返し警告し、そのような行為が世界中の国々に米ドルへの依存を減らすよう促していると指摘した。

しかし、私が次世代の金融システムは政治から離れたフリーバンキングシステムだというのは、ロシア側からの発言ではありません。

米国の共和党が目指していることと、ロシア側の発言が一致しているからです。つまり、現在の基軸通貨システムは終わるということです。

米国の共和党の候補者が大統領になった際に実施する政策を記したレポートがヘリテイジ財団が発行されています。(リーダーシップの使命)

その中の「金融ルール改革の選択肢」に書かれている内容がウシャコフ氏、プーチン大統領の発言と一致しているのです。

米国以外の国から見ると、ドル基軸通貨体制は米国が世界を支配していくシステムです。そのシステムから逃れたい国々が脱ドルを目指しています。しかし、実は米国にとっても、決して良いシステムではなくなってきているのです。

「金融ルール改革の選択肢」に以下の記述があります。

政府が金融政策をコントロールすることの核心的な問題は、2つの避けられない政治的圧力にさらされることである。すなわち、政府の赤字を補助するために貨幣を印刷する圧力と、次の選挙まで人為的に景気を押し上げるために貨幣を印刷する圧力である。どちらも利己的な政治家によって常に存在するものであるため、唯一の恒久的な解決策は、連邦準備制度理事会(FRB)の手から金融の舵を取り、それを国民の手に戻すことである。

米国にとっても2つの「政治的圧力にさらされること」とあります。一つは「政府の赤字を補助するために貨幣を印刷する圧力」です。これは、今、まさに起きていることです。リーマンショックで金融システムを救うために、金融緩和を行い、ドルを増刷しました。パンデミックでも大金融緩和でドルを大増刷しました。また、米国政府は際限なく債務を膨らませています。発行された国債を買うためにFRBはドルを刷り、買い取っています。

FRBは政府からの圧力を受け、貨幣を増やしています。これは、金融システムは政治の圧力にさらされており、独立していないことを意味します。つまり、米国政府の意向で貨幣の増減が決まってしまっているのです。

そして、「次の選挙まで人為的に景気を押し上げるために貨幣を印刷する圧力」です。バイデン大統領のパンデミック対策としての財政支出などはまさにこれにあたります。

この2つの圧力は米国民にとっても良いことではありません。結果的に債務を膨張させ、インフレを加速させ、最終的には崩壊の道へと進みます。

実は米ドル基軸通貨体制はスタート時から問題を抱えた体制でした。それがトリフィンのジレンマ(流動性のジレンマ)です。

特定の国の通貨を基軸通貨とする国際通貨体制においては、基軸通貨の供給と信用の維持を同時に達成できないというジレンマ(矛盾)をいいます。

具体的には国際貿易の拡大に応じて、国際流動性が米国(基軸通貨国)の国際収支赤字(米ドル流出)で供給される場合は、米ドル(基軸通貨)の信認が低下し、一方で米国が国際収支バランスを維持しようとすれば、国際流動性が不足し、世界経済の成長を阻害してしまうというものです。

<流動性のジレンマのポイント>
◎世界経済の中で基軸通貨国が国際的な競争力を有していると、貿易黒字が発生して、流動性供給が不十分となる。

◎逆に基軸通貨国の経済力の低下に伴って競争力が低下し始めると、貿易赤字を通じて世界経済への流動性供給は十分に供給される一方で、基軸通貨国の信認の低下へと結びつき、結果として流動性は不安定化する。

この流動性のジレンマは基軸通貨の矛盾を突いています。そのため、貿易赤字を続ける米国の通貨であるドルへの信認は低下しているはずです。米ドル基軸通貨体制は最初から成り立つには難しい仕組みであり、それを軍事力、経済力で抑え込んできたということです。

米ドル基軸通貨体制を維持してきた理由は以下のブログをご一読ください。

そして、米ドルは基軸通貨システムを維持するために、中東、日本、中国を巻き込んできました。この辺りは落合莞爾先生のブログをぜひご一読してください。

もはや、米ドル基軸通貨は、米国へマネーを還流させるためだけのシステムとなっており、さらに、米国内でも政治的圧力にさらされ、通貨本来の在り方ではなく、米国強欲主義の道具になってしまっています。

つまり、世界的にも、当の米国内でも終わりを迎えようとしています。

そして、次世代の金融システムについて以下の記述があります。

これは、貨幣における連邦政府の役割を完全に廃止するか、商品貨幣の使用を認めるか、政治的干渉を避けるために厳格な金融政策ルールを採用することで実現できる。もちろん、フリーバンキングも、商品裏付け貨幣の許容も、現在議論されているわけではないため、我々は改革のメニューを策定した。それぞれの選択肢は、連邦準備制度理事会(FRB)をいかに効果的に抑制するかということと、議会にとって政治的に、また既存の金融機関を混乱させるという点で経済的に、それぞれの政策を実行することがいかに難しいかということのトレードオフを含んでいる。これらの選択肢を、インフレと好不況のサイクルに対する有効性の高い順に紹介する。

フリーバンキング。フリーバンキングでは、金利も通貨供給量も政府によってコントロールされない。連邦準備制度は事実上廃止され、財務省は主に政府の資金を扱うことに限定される。米国の地域には、1824年から1850年代まで、「サフォーク・システム」として知られる同様のシステムが実際に存在し、融資が盛んになる一方で、インフレと経済の混乱を最小限に抑えていた。

フリーバンキングの下では、銀行は通常、ドル建てで価値のある商品を裏付けとする負債(例えば当座預金)を発行する。19世紀には、この裏付けは一般的に金貨であった: 例えば、1ドルは約20分の1オンスの金貨と定義され、発行銀行で要求に応じて換金可能だった。今日では、ほとんどの銀行が金貨を裏付けにしていると思われるが、中には他の通貨や、株式や不動産などの他の資産を裏付けにすることを好む銀行もあるだろう。銀行が負債の裏付けとして保有する資産の適切な組み合わせは、競争によって決まるだろう。

①連邦準備制度の廃止、②裏付けのある通貨の発行、③政府によってコントロールされない、この3つが大きな特徴となります。

これらはまさに、ウシャコフ氏、プーチン大統領の発言に一致しています。

次世代の金融は、政府が大きく関与したものではなく、無制限に発行される信用通貨でもない、政治から独立したシステムになっていくのだと思われます。

ここで私にはまだ考察ができないレベルの話なので、今は直感的な話です。しかし、落合莞爾先生は「國體」と「政体」という話をされています。「國體」は決して表には出てこない存在であり、世界を後方から導いている存在とのことです。政体は表に現れている存在です。

現在の通貨システムは政体がコントロールしていましたが、それが限界に来て、後方で見守る國體の意向が動き始めているのかもしれません。

政治から離れた通貨システム。それは、誰でも無茶ができるシステムでは決してなく、背後には見守る存在があるのではないでしょうか。

プーチン大統領の発言は、それを象徴しているようにも思えます。「ロシアは平等と相互利益の尊重に基づいて同盟国と協力している」

2025年1月に共和党の候補であるトランプ大統領が誕生した時、金融システムも新時代を迎える可能性は十分にあるのではないでしょうか。一気にすべてが変わるかは別として、BRICSの台頭と新通貨システムが機能し始めれば、米ドル基軸通貨体制も変化をせざるを得ないでしょう。

2022年2月からのウクライナ戦争の始まりを持って新たな時代の始まりと喝破される落合先生の以下のnoteは重要なことが書かれています。ぜひご一読をお勧めします。

いずれにしても、新時代の始まっており、今は移行期。金融システムも新時代を迎えていくことでしょう。

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