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知っておきたい『特商法関連省令の改正#7』

こんにちは。弁護士の野村拓也です。
いつもメルマガをお読みいただきありがとうございます。
前回のメルマガでは、 『不正競争防止法の基礎(営業秘密編)』についてお伝えいたしましたが、今回は、先日改正された特定商取引法施行規則および特定商取引法施工令(以下「特商法関連省令」とします)について対応が急務なのでテーマを変更してお伝えします!

■特商法関連省令が改正されました!

特商法関連省令の改正案について、2022年11月30日から2022年12月29日まで改正案についての意見公募手続(パブリックコメント)が行われていましたが、先月27日、 特商法関連省令案につき閣議決定がなされ、 本年6月1日から施行されることとなりました。
改正の主な目的は、2022年特商法の改正で契約書面の電子化が可能になったことに伴う、
・利用する電磁的方法の種類および内容についての明確化、
・電子化承諾の撤回等について
ですが、
*電話勧誘販売に該当する要件としての「消費者に電話をかけさせる方法」として、広告を新聞等に掲載する方法、テレビ放送、ウェブページ等を利用する方法が追加されました。
この追加によって、通販事業者、特にコールセンターにおいてアップセル・クロスセルトークをしている事業者は対応が急務です。

■パブリックコメントに対する消費者庁の回答
【パブリックコメント】
※インターネットやカタログを見て、電話注文する際に注文したい商品が売り切れていた場合
以下のケースでは、電話勧誘販売に該当するのか?

〈コメント1〉
同じインターネットサイトやカタログに『掲載している』 別の商品を事業者側から先に提案すること

〈コメント2〉
同じインターネットサイトやカタログに『掲載していない』別の商品を事業者側から提案すること

〈コメント3〉
お客様側から「他に似たような商品がないか?」とリクエストを出されたことに対して別の商品をすすめること
→不意打ちしょうがないかと思うケース

【消費者庁の回答】
個別の事例によりますが、販売業者又は役務提供事業者が契約の締結について勧誘をするためのものであると告げずに電話をかけることを要請したといえる場合には、電話勧誘販売に該当します。他方で、契約の締結について勧誘をするためのものであると告げずに電話をかけることを要請したといえない場合には、電話勧誘販売に該当しません。

【パブリックコメント】
「電話勧誘販売に該当する要件としての消費者に電話をかけさせる方法として広告を新聞等に掲載する方法、テレビ放送、ウェブページ等を利用する方法が追加」について、まずこれまでの議論が殆ど行われていない中、唐突とも思えるタイミングでの追加に違和感がありますので、徹底した議論を行うことを求める。
【消費者庁の回答】
今回の改正は、販売業者又は役務提供事業者が契約の締結について勧誘をするためのものであることを告げずに電話をかけることを要請したといえる場合には、電話勧誘販売に該当するとしたものであり、そのような販売方法は従前より電話で実質的に勧誘行為を行うものとして不意打ち性が高いと考えられたものであり、現に消費者被害も生じていたものであることから、原案どおりとさせていただきます。

■今後事業者がとるべき対応について
消費者庁のスタンス
上記コメント1・2に対する消費者庁の回答からも明らかなように、本改正の前から、消費者庁としてはテレビ放送やウェブページ等で契約の締結について勧誘するためのものであると告げずに電話をかけることを要請している販売手法に「電話勧誘販売」の規制(懲役刑を含む刑事罰も定めれられています!)をかけたいと思っていたことが伺えます。
今後、注意すべき事案
また、消費者団体からはパブリックコメントと併せて以下の事例報告が上がっており、事例1については詐欺的定期購入商法の疑いもあるため行政処分可能性が高く、事例2については、施行後は電話勧誘販売として対応する必要性があるものと考えます。

事例1
膝サポーターの折り込みチラシを見て電話をかけたところ、オペレーターから「関節に良いサプリメントを購入すれば、サポーターは無料になる」といわれた。意味が良くわからなかったが承諾した。5日後サプリメントとサポーターが送られ てきたが、その翌月、またサプリメントが送られてきた。サプリメントが定期購入になると聞いた覚えはない。自分が欲しかったのはサポーターでサプリメントはいらないので解約したい。⇒ 膝サポーターの折り込みチラシでは、「関節に良いサプリメント」の紹介は記載されていなかったものと思われます。
そのため、膝サポーターの申込み電話で「関節に良いサプリメント」の購入を勧めるクロスセルを行うことは、電話勧誘販売にあたります。

事例2
テレビショッピングで拡大鏡の紹介をしていたため、当該拡大鏡を注文しようと電話してきた消費者に対し、目に良い成分の入ったサプリメントの同時購入を紹介し、消費者がセットで購入した。
⇒ テレビショッピングの段階で、拡大鏡と一緒に当該サプリメントの紹介をする旨を明示していなければ、当該サプリメントの販売(クロスセル)は電話勧誘販売となる。                  ↓
消費者に対し法定書面を交付する義務が発生、クーリングオフの対象になります。
クーリングオフの行使期間制限は、法定書面を受け取った日から8日以内なので、法定書面を交付しなければずっと、いつでも消費者はクーリングオフが可能です。

■具体的対応策
コールセンターでのアップセル・クロスセルをしている場合には、アップセル・クロスセルすることを消費者に伝えた上で行っているかという広告内容の確認が必要です。
解約時連絡で代替商品を提案する方法も、電話勧誘販売とならないように注意する必要があります。

【未来創造弁護士法人】 www.mirai-law.jp
神奈川県横浜市西区高島1-2-5横濱ゲートタワー3階
弁護士 野村拓也(神奈川県弁護士会所属)

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