知っておきたい『不正競争防止法の基礎(営業秘密編)』

■「営業秘密」とは?

「営業秘密」というと皆さんはどんなものをイメージするでしょうか。
顧客情報、仕入先情報、自社独自ノウハウ、人事情報、決算情報etc
これら会社の営業に関する情報のすべてが「営業秘密」であると考える方が多いのではないでしょうか。
しかし、法律は、会社の営業に関する情報すべてを営業秘密として保護してくれる訳ではありません。

■「営業秘密」として法律上保護されるには?
もちろん、特許技術や著作物など、特許法、著作権法等の法律によって法的に保護されている営業に関する情報もあります。
しかし、それらの法律で保護されない営業に関する情報は、不正競争防止法上の「営業秘密」に該当しなければ保護されません。
かっぱ寿司の社長が前職のはま寿司の食材の仕入値データを、元部下に依頼して持ち出させてかっぱ寿司で利用したとして逮捕され刑事事件になったことも記憶に新しいですよね。

*不正競争防止法の「営業秘密」にあたるためには

特に、1の秘密管理性があるか否かが問題になることが多く、裁判等で立証することも難しいため、「営業秘密」の持ち出しや漏洩を防ぐためには、徹底した秘密管理が重要になります。

*「秘密管理性がある」とはどのような状況をいうのか?
秘密管理性が認められるために一番重要なのは、
【1】「なにが営業秘密なのかをあらかじめ特定しておくこと」です。
『会社の情報はすべて』であったり『営業上または技術上の情報すべて』であったりという形で特定したいお気持ちは重々わかります。
しかし、そのような概括的な特定の仕方では、裁判所は何が「営業秘密」なのか分からないと判断する傾向が強いです。

秘密管理性の条件をみたすためには、何が「営業秘密」にあたるかを特定することが必要です。

次に重要なのが、【2】「営業秘密」を秘密として実際に管理することです。
・自社の情報を重要度順で階層分けしたけど、全て同じように管理している
・従業員であれば誰でも見ることが出来たりした状況である
上記状況は秘密として管理していたとはいえません。

そのため、
▼全従業員との間で営業秘密保持に対する誓約書をとる
▼就業規則と一体となる秘密管理規程を作成
▼営業秘密管理者を定めて、営業秘密の管理方法、管理体制、違反時の罰則を含めた営業秘密保護のためのフローを整備することが必要です。
(例)秘密情報にマル秘マーク等をつける、アクセス制限する、決裁制を導入する等
経産省が提供している 秘密情報ハンドブックが昨年5月に最新版に改訂されました。 概要版でも十分な分量ですので秘密管理のためにご参照ください。

【1】営業秘密を特定すること
【2】営業秘密を秘密として管理すること
の2つを満たしてはじめて秘密管理性の要件がみたされることになります。

~「営業秘密」を秘密管理するために必要なこと~
規程を整備するだけでは、従業員が理解した上で行動できません。
どんなに立派な誓約書を作っても、どんなに立派な秘密管理規程を作っても、従業員の皆さんが「営業秘密」を営業秘密として管理するよう行動してくれなければ、「営業秘密」は漏洩してしまいます。
そのため、常日頃から従業員の皆さんに「営業秘密」の重要性を理解してもらい、また「営業秘密」の漏洩は刑事罰にもなりうることを理解してもらい行動してもらうことが必要です。

行動に落とし込むためには定期的な研修が必要!

(1)新入社員への研修時
(2)昇進して今までアクセスできなかった「営業秘密」にアクセスできるようになった時
(3)退職する時
3つの機会で「営業秘密」の保持に関する誓約書を作成し、従業員の方に「営業秘密」の重要性および漏洩した場合にどうなるかを理解するよう説明または研修を行うことが必要です。
日々の秘密管理は、定期的な研修によって保たれるといっても過言ではありません。

かっぱ寿司の社長が逮捕されているように、「営業秘密」を漏洩させること、漏洩することは、不正競争防止法違反となり、民事上の責任のみならず刑事上の責任も問われることになります。
社内から犯罪者を出さないためにも、会社にとって重要な「営業秘密」を漏洩させないためにも、日々の業務の中で営業秘密を管理する意識を社内に徹底させることが重要です。

【次回テーマ】
『不正競争防止法の基礎(競業避止義務)』についてお伝えします。

【未来創造弁護士法人】 www.mirai-law.jp
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弁護士 野村拓也(神奈川県弁護士会所属)
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TEL:03-6435-8622

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