いらっしゃい!憧れの大阪おばちゃん道(どう)
年末、息子を連れて新幹線で義実家のある大阪に帰省した時のこと。じっと座っていられない息子の手を引いて新幹線の一番後ろの車両、運転席のあるデッキ部分の窓から外を見せたりして時間を潰していた。
そうしているうちに、若い女性の車掌さんがデッキ部分に入ってきた。息子の姿が目に入ると、何やらゴソゴソと取り出して、私の方を見ながら「あの、もし新幹線お好きだったら、どうぞ!」と一枚のカードを手渡してくれた。
息子の大好きなドクターイエローのカード。もちろん息子の目はキラッキラに輝いて、手渡されたカードをうっとりと眺めている。私がお礼を言うと、彼女は小さく手を振りながら運転席の中へ消えていった。
自席に戻っても、大阪に着いてからも、息子はそのカードをぎゅっと大切に握りしめている。容赦ない握力で折れてしまわないようにこっそりと私のカバンの中に滑り込ませた。
息子が喜んで嬉しい気持ちと、なんだか自分の中にモヤっと消化できない思いがあることに気づきつつ、上手く言葉にできなくて1ヶ月近くが過ぎてしまった。
その未消化な気持ちにやっと名前を付けることができたのは、年明けに共通テストの話題がSNSを盛り上げていたことがきっかけだった。
かつて田舎住まいだった私は初めて知ったのだけれど、この入試シーズンを狙って痴漢をする不届き者がいるらしい。今年は鉄道各社が注意喚起の車内放送をしたり、駅にポスターを貼ったりと対策をするようになったとか。
そんな中で、個人の取り組みとして共通テストの日程に合わせて電車に乗って、困っている人がいないか見張ったり、それをSNSで報告して注意喚起をしている方々を見かけた。
そうか、私はもう”親切なお姉さん”をしている場合じゃないのかもしれない。
本音を言えば、あの新幹線の車掌さんみたいに相手が喜んでくれることをして、自分もニッコリ笑って終わりたい。でも気づけば私も40代に手が届くところまで来てしまった。
もしかしたら、他の人が言いたくないことをあえて言うとか、矢面に立つとか、反撃するとか、声に出せないことを代弁するとか、まぁそんな物騒なことはできれば避けたいけれど、そういうことをやらなければならない、それができる年頃なんじゃないか。
私は幸い声もでかいし口もでかい、ついでにそれなりに気も強いので、舌打ちされたらやり返すくらいの度胸は備えている。そして都合の良いことにそれなりに時間にゆとりのある働き方をしているので一悶着あったとて一向に構わない。
そして思い出したのは、大阪のおばちゃんたちのこと。まぁとにかく声がでかくて堂々とした立ち振る舞いである。
帰省中にショッピングセンターに出かけた時も満員のエレベーターに乗り込もうとしたおじさんに、ぱっと見は小柄でおとなしそうなマダムが「あんたァ!ベビーカー!おるやろ!」と強烈なカウンターパンチを浴びせていた。
一瞬の迷いも躊躇いもなく、そりゃもうお見事!あぁこうなりたいな、気付いても言い出せず、ネチネチ悩んでツイッターに書くのが精一杯の私。反省しかない。
私のおばちゃん道(どう)はまだ始まったばかり。もっと鍛錬が必要ですね。できれば親切だけして過ごしていける世の中になって欲しいもんが、与えられた役割をしっかりこなしていきたいもんです。
それでは、また🎀
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