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飽差はどのように変化しているか❗(光合成管理)

こんにちは。農業経営サポーターの小川隆宏です。今日は施設栽培の環境制御の「飽差管理」の話です。飽差管理については今まで何度か記事で書いてきていますが、その復習とともに実際の農園での飽差の状況について見てみたいと思います。

〇飽差とは
何度か記事にしていますので、復習になりますが「飽差とはなにか」からお話させていただきます。
「飽差」とは、1㎥の空気の中に、あと何gの水蒸気を含むことができるかを示す数値です。
具体的には、空気中に含むことができる水蒸気の最大量(飽和水蒸気量)と空気中の水蒸気の飽和度の差分をいいます。
「あとどれぐらい空気中に水蒸気保持できるか」というのが飽差です。
現在の空気中の水蒸気量と飽和水蒸気量の差が大きい状態では乾燥状態にあり、植物は自らの乾燥を防ぐために気孔を閉じてしまいます。気孔を閉じると光合成に必要な二酸化炭素(CO2)を取り込めず、また、水分が蒸散しないため根からの吸水をしなくなり、光合成が活発に行われなくなります。
逆に飽差が低い場合は、空気中の水蒸気量と飽和水蒸気量の差が非常に小さくなるため、気孔は開いていても蒸散が起きません。土壌中の水分を吸い上げなくなるため、必要な養分を取り込めず、やはり光合成が活発に行われません。

飽差が適切な範囲内であれば、日中の植物は気孔を開き、光合成に必要な二酸化炭素を取り込むとともに、少しずつ体内の水分を蒸散します。同時に蒸散によって外に出した水分を補うために、土壌水分を養分とともに根から吸い上げていきます。
つまり飽差を適切に保つことが光合成促進には重要です。

飽差の適正なレベルは3~7です。これを下記の表(飽差表)のように縦軸:温度、横軸:湿度の関係で表すと、飽差3~7というのは緑色の部分になります。飽差がこの緑色の範囲にあれば、光合成環境としては「適切」ということができます。

一応、念のためですが、緑の部分以外でも気孔はすべて閉じているわけではなく「半開き」みたいな状態で開いていたりするので全く光合成をしないわけではありませんが、光合成の効率は低下しています。

〇実際のハウス内の飽差の状態を見てみる
では実際のハウス内で飽差がどのようになっているか時間の経過とともに見てみましょう。
下記は私が管理しているハウス内の飽差の状態が時間の経過によりどのように推移しているかを表しています。

実際のハウス内の飽差の状況

朝6時、日の出前ごろ、飽差レベルは2くらい(温度:約17℃、相対湿度:約90%)となっています。飽差は低すぎで気孔は開いていても蒸散もできず光合成は進まない状態ですが、この時間帯は太陽の光も少ないので、特に問題はありません。

7時頃になると太陽の光が当たり始めるとともに温度上昇もあり、飽差は4.3くらいになります。光合成にはよい環境ということができます。
しかしあっという間に温度上昇とともに飽差も高くなり8時くらいには飽差は8くらいになっています。飽差の最適範囲からは出てしまっていますが、まだ光合成にとっては悪くない範囲といえると思います。
しかしさらに1時間後の9時には飽差は14くらいになります。かなり乾燥状態といえると思います。それから12時くらいまでは乾燥状態が続いている状態で、気孔が閉じている割合も大きいと思われます。
この時間帯は太陽光が強い時間帯なので、気孔が開いていれば光合成が積極的に行われるのですが・・・。もったいないですね。飽差が最適範囲の3~7の範囲に戻るのは15時ごろとなっています。

このように見ていくと、太陽の光が最も降り注いでいる8時~14時ごろに乾燥状態(飽差が高い状態)になってしまっていて、せっかくの光エネルギーを活かしきれていない、、ということができます。

〇急激な環境変化は禁物!
あと飽差管理で大事なのは「急激な変化をさせない」ということです。植物は環境の急激な変化に敏感で、急激な変化が起こると身を守るため気孔を閉じてしまます。きっとビックリするんだと思います。そしていったん閉じてしまうと開くまでかなりの時間を要します。
飽差を適切に誘導するのは大事ですが、急元気な変化を与えず、ゆっくりと誘導することが重要です。

今日は飽差管理の話をいたしました。


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