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何が違う?黒字と赤字の農業法人の損益

こんにちは。農業経営サポーターの小川隆宏です。今日は農業法人の経営管理のお話です。
「農業は儲からない」とよく言われていますが、なかにはしっかりと利益を獲得しているところもあります。農業も農作物を作り販売していく事業です。当たり前ですが慈善事業ではないので、利益を獲得していかなければ農業という事業を継続していくことはできません。
そこで農業法人の損益計算書をベースに、利益を獲得している農業法人の損益計算書と赤字の農業法人の損益計算書を比べて利益を獲得している農業法人の特徴を見ていきたいと思います。

使用する損益データは、日本政策金融公庫の「令和4年農業経営動向分析結果」をもとに今回は「法人部門の施設野菜」について見ていきたいと思います。

https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/r05_zyouhousenryaku_3.pdf

日本政策金融公庫のレポートによると、「法人部門の施設野菜」の損益計算書は下記の通りです。

見にくくてすみません

この損益計算書は66社の農業法人の損益計算書を平均したもので3年分が掲載されています。そして直近の令和4年分については全66社のうち 経常利益が出ている農業法人28社のみの平均損益計算書も併記されてされています。
つまり表のヘッダーのピンク色「経常黒字」は黒字の農業法人28社の平均損益計算書、ヘッダーが緑色の「全国」は「経常黒字28社」も含む、全66社の平均損益計算書が記載されています。

この表から「経常赤字である38社」の平均損益計算書を算定し、「経常黒字28社」の平均損益計算書を比較してみたいとおもいます。
比べるにあたっては農業事業の収益性を見たいので、売上高~営業利益までの状況を見てみたいと思います。

※企業(法人)の利益の概念は「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「当期純利益」などがありますが、本業で稼ぎだした利益を表すのは「営業利益」です。

〇黒字法人と赤字法人の損益比較
日本政策金融公庫のレポートから赤字法人38社の平均損益計算書を算出してみました。
この損益データは「施設野菜」という枠組みで集計しているので、栽培している農作物や販売モデルなどはわかりません。そのため単純に数字だけでどのような傾向が見て取れるのかを見てみたいと思います。

<売上高>
栽培面積は、黒字法人:15,945㎡、赤字法人:15,055㎡と大きな差はありませんが、売上高は大きく違うことがわかります。
単純に㎡あたりの売上高を見てみると、黒字法人は㎡あたり11,899円の売上をあげているのに対し、赤字法人は8,814円の売上高にとどまっています。㎡あたりの売上高は黒字法人は赤字法人の1.35倍の売上をあげていることがわかります。

<売上原価>
一方、売上高に対する原価(売上原価)を見てみます。売上原価総額の比較では黒字法人:118,535千円、赤字法人:112,621千円です。
これを売上高と同様、㎡単位で比較すると黒字法人は㎡あたり7,434円、赤字法人は7,480円となり、1㎡あたりにかかっている原価(コスト)には大差ないコトがわかります。

<販売費・一般管理費>
売上原価は黒字法人と赤字法人とでは大差がなかったのですが、販売費・一般管理費を見ると、赤字法人にくらべて黒字法人の方がコストがかかっていることがわかります。販売費・一般管理費の内訳を見ても、総じて黒字法人の方がコストがかかっています。
同じように㎡あたりで比較すると、黒字法人の㎡あたり販売費・一般管理費は3,981円、赤字法人では2,505円となっています。

このように見ていくと、
黒字法人は、赤字法人の比べて

・単位面積あたりの売上高は大きい
・単位面積あたり生産コストはあまり変わらない
・単位面積あたり販売・管理コストは大きい
→販売・管理コストはたくさんかかっているがそれ以上に売上高が大きい

ということができます。

繰り返しになりますが、損益計算書だけでは、栽培作物や販売モデルまでわからないので正確なことは言えませんが、少なくとも黒字法人は売上高を増やすために、販売・管理活動にしっかりとコストをかけている、、ということが言えそうです。

最後に売上高に対する各コストの割合を下記に記載しておきます。みなさんの農園が黒字になるためには、売上高に対してどれくらいのコストを掛けられるのか、どれぐらいが適正なのかを考える「ものさし」として見てみてください。


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