20190607タイトル

一人区の序盤情勢と、それを動かすために

■一人区の序盤情勢(図1)

一人区の野党統一候補について、報じられた情勢が良い順に上から並べました。(全選挙区、全候補者の情勢はここに載せています→「第25回参院選 情勢報道集約」)

愛媛県、沖縄県、長野県は野党統一候補が先行する情勢とみられます。秋田県、宮城県、山形県、滋賀県、新潟県、三重県は各社の報道が食い違う激戦です。岩手県は名前が後順の接戦となっています。

今後の選挙運動が当落にもっとも強く影響するのは接戦のところですから、接戦区に注力するということは、この表の重要な見方です。

それと同時に、参院選はまだ2週間ある長丁場の選挙なので、劣勢な選挙区をどう接戦に持ち込むかということが重要な問題になります。

野党の支持率は与党と比べて低いですが、選挙時に急上昇することや、無党派層が野党側に投票しがちであることが明らかになっています。無党派層をどれほど引き込めるかということで、情勢は変化しうるでしょう。


■唯一、接戦につけている立憲の候補者は石垣氏

上の一人区の序盤情勢(図1)で、唯一、接戦の位置につけている立憲民主党の候補者は、宮城県の石垣のりこ氏です。

全くの新人が、18年間参議院議員をやってきて支持基盤ももっている自民党の愛知治郎氏と競り合っているわけですから、これは凄いことではないでしょうか。

公示前から見ていてとても見事な選挙運動だと思いました。それで、6月25日にこの記事「選挙ブーストをおこすために」のP.S.で石垣のりこ氏を挙げ、「どの党派にとっても自らの表現で無党派層に切り込んでいく候補者をどう活かしていくかはとても大きい」ということを書きました。

選挙ブーストというのは選挙時に政党支持率が急上昇する現象です。しかしそれは待っていても自然と起こるとは限りません。むしろそれは自らが起こそうとして有権者に働きかけていく必要があるものです。支持率が上がるということは、有権者の心が動いたことの結果なのですから。

選挙時に支持率が急上昇するということは、無党派層が支持層に変わることを意味しています。その無党派層は漠然とした存在ではありません。その市の、その町の、一人一人の道行く無党派が、様々なことに思い悩んでいるはずです。その人たちの注目を集め、関心を引き付けていく言葉や振る舞いが支持になっていけば、その結果が選挙ブーストとしてあらわれるわけです。


■今、立憲民主党の支持率を見ると(図2)

上の図2は、2019年7月4~5日に実施された共同通信の世論調査による、都道府県別の立憲民主党の支持率です。

宮城県の支持率がいちばん高い結果でした。調査の結果は誤差に留意して見る必要があるものの、これは石垣のりこ氏の選挙運動が立憲民主党の支持率を牽引していることを示唆するものといえるでしょう。

言葉の力、表現の力、そういったものを持った候補者が活躍することは、その地域の票を伸ばすだけにはとどまらないかもしれません。

例えば宮城県の選挙が中継されれば、全国の人がそれを見ます。他の選挙区や、全国比例にも影響があります。

また、自民党の世襲候補に全くの新人が逆転するかもしれないという情勢も関心をひくかもしれません。消費税に対するスタンスが立憲民主党の主流派と異なることも、注目されるでしょう。

そんな候補者が激戦を闘う中で、宮城の立憲の支持率が全国一位になっています。そういえば『武器としての世論調査』の第五章のおわりに、「政党が支持を拡大するということは、選挙を戦うということと共にあるのでしょう」と書いていたのでした。

漫然としたやり方でもない、旧態依然としたやり方でもない、新しい選挙「戦」を今の宮城県に見ているような気がします。宮城県から発信された波紋が、そして各県から発信された波紋が、広がり、重なり合って、選挙ブーストを作っているようなイメージです。


■始まりだした選挙ブースト(図3)

最後に政党支持率のグラフを示します。7月6~7日に実施されたJNNの世論調査を反映したところで、各党の支持率の上昇傾向が鮮明になり、選挙ブーストが始まったと見ることができそうです。

本格的に参院選に入り、いま、無党派層が刻一刻と、与党支持と野党支持に分解していっています。それにともなう選挙情勢の変化も、各党の今後の選挙運動にかかっているはずです。

P.S.情勢を見るのは、楽観するためでも、悲観するためでもありません。情勢を見ることの価値は、ただそれを変えるという一点にあります。

P.S. 立憲民主党の宮城県の例をだいぶ長くとりあげましたが、これは党派を問わず検討に値することのように思いました。

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note: みらい選挙プロジェクト情勢分析ノート