20190921タイトル

国民民主党と民社党は似ているのか? 労組の地盤とは何なのか?(第25回参院選精密地域分析Part5)

 地域分析の第5回は、国民民主党をとりあげます。まずは比例代表の得票率を概観してみましょう。

⭐国民民主党と原発立地自治体

2019国民民主党

図1.国民民主党得票率 第25回参院選(2019年)比例代表

 得票率が全国1位だったのは、玉木雄一郎氏の出身地でもある香川県さぬき市です。県内で得票率が高かったのも、前回衆院選で玉木氏が当選した香川2区にあたる地域でした。また、一人区で羽田雄一郎氏が当選した長野県では、比例代表も県内の広い範囲で勢いがあります。岩手県で赤やオレンジ色になっている奥州市・金ケ崎町・北上市・花巻市は、選挙前に国民民主党へ合流した自由党の地盤(小沢一郎地盤)ですね。

 しかし、こうした地域とは別に、これだけでは解釈できない得票率の高まりが、日本各地で点々とみられることにお気づきになるでしょうか。

 得票率で全国第2位の青森県六ケ所村。そして福島県双葉町・大熊町。福井県敦賀市・美浜町・おおい町・高浜町。さらに、宮城県女川町、新潟県柏崎市・刈羽村、静岡県御前崎市、佐賀県玄海町も周囲よりひときわ高い得票率にあります。

 国民民主党に、原発立地自治体で支持を得る傾向があることは明らかです。これはつまり、原発に関係する人たちの利害が絡んだ政党であるということを示唆しており、代表の玉木氏が脱原発と一定の距離をおこうとしているのも、こうした事情が背景にあることがうかがえます。


⭐希望の党の得票率の分布

2017希望の党

図2.希望の党得票率 第48回衆院選(2017年)比例代表

 図2には、国民民主党の前身政党である希望の党の得票率の分布を示しました。これが2年後に図1の分布になったわけですが、都市部より地方で票を得ていることは共通するものの、希望の党の時点では特に原発立地自治体で得票率が高い傾向は見られません。

 もっとも、希望の党は立候補者数が桁違いに多く、いろいろな層の票が重なり合わさっているため、地盤が良く見えていない可能性もあります。

 それでは逆に、図1の国民民主党の分布から、さらに票を細分化して見てみたらどうでしょうか。参院選に限っては制度上、そういうこともできるのです。


⭐国民民主党・個人票の分布

 現行の参院選の比例代表では、投票の際に政党名を書いても、候補者個人の名前を書いても良いことになっています。前者を政党票、後者を個人票と呼ぶことにすると、その党から何人当選するかは政党票と個人票を合わせた票数によって決まり、誰が当選するかは個人票の票数によって決まるというわけです。

 ここで、最初に示した図1は、国民民主党の政党票と、擁立された候補者の個人票をあわせた得票率の分布になっています。それでは次に、得票率を個人票のみで計算したらどんな結果になるでしょうか。

2019国民民主党個人票得票率

図3.国民民主党個人票得票率 第25回参院選(2019年)比例代表

 図3に示したのがその分布ですが、こうして見てもなお、原発立地自治体や関連施設がある地域が浮かびあがる傾向があることは変わりません。それでは、そういう人たちの利害を代弁する候補は誰なのでしょうか。

 全国的に得票数の多い候補から順に、一人一人の個人票の分布を見ていくことにします。(細かい内訳になってしまうので、図4から図7までは得票率の色分けの基準を変えています)


⭐UAゼンセン

 まずは国民民主党で最も多くの個人票を得た田村麻美氏です。

2019田村麻美得票率

図4.田村麻美得票率 第25回参院選(2019年)比例代表

 宮崎県に高い地域があることが目を引きます。ここは工業都市の延岡市で、旭化成がある自治体です。山口県で黄緑色になっているのは、岩国市ですね。岩国には基地もあるけれど、基地関係の利害は考えにくいので、この場合は三井化学でしょう。隣接する広島県大竹市も三井化学ですね。

 ※「岩国・大竹のUAゼンセン票は『三井化学』ではなく、岩国は『帝人』、大竹は『三菱ケミカル』であるとの指摘を受けています。

 そのほか各地の広がりを見ても、化学系・繊維系・医薬品系などが多く、UAゼンセンによる分布であると考えてよさそうです。


⭐自動車総連

2019礒崎哲史得票率

図5.磯崎哲史得票率 第25回参院選(2019年)比例代表

 個人票第2位の磯崎哲史氏の分布は明快です。愛知は有名なトヨタ地盤。福岡にも日産・トヨタ・ダイハツ九州があり、分布がぴったり重なりあっています。同じく自動車で知られる鈴鹿市や富士市でも高いですね。

 こうしたことから、自動車関係の利害が絡んだ人たちの組織的な投票と考えることができます。


⭐電力総連

2019浜野喜史得票率

図6.浜野喜史得票率 第25回参院選(2019年)比例代表

 3番目の浜野喜史氏で、原発立地自治体との対応が見られました。

 細かいので拡大しないとわかりづらいかもしれませんが、党全体の比例票では見えなかった北海道泊村、茨城県東海村、愛媛県伊方町、鹿児島県薩摩川内市もはっきりと浮かび上がっています。これは電力総連の票です。

 なお、今回は電機連合の石上俊雄氏も立候補していますが、石上氏の票の出方は原発立地自治体との関係が認められませんでした。(電力と電機で分野が違うので当然ではありますが、まぜあわせた議論をみたことがあったので、一応、分布を示しましょう)

2019石上俊雄得票率

図7.石上俊雄得票率 第25回参院選(2019年)比例代表

 もちろんこうしたことは、党の関係者や事情に詳しい人だったら「あの候補だろう」というふうに推測がつくものです。しかし候補者個人の経歴や支持団体をいっさい検討しなくても、自治体ごとの産業別従事者数などのデータを併用して分析すれば支持基盤が見えてくるというのは、地域分析の強みでもあります。

 ここでやったことを応用すれば、これまでの労組の組織力の推移や、その選挙でどれほど積極的に動いたのかということが見えてきます。それだけでなく、ある団体がこっそり別の政党や候補に票を流した場合でも、そうした動きを把握することができるのです。*(๑˘ᴗ˘๑)*


⭐国民民主党と民社党の地盤

 参院選の頃、立憲民主党と国民民主党の関係を昔の社会党と民社党の関係になぞらえた議論が各所で起こりました。最後にこの民社党との関係について、地域分析の側から検討を行ってみましょう。

民社党得票率アニメーション

図8.民社党得票率 第13回~16参院選(1983~1992年)比例代表

 比例代表制の導入から民社党の消滅まで、4回の参院選の結果を地図化してみました。それぞれ得票率の変化が大きいため、特定の回を抜き出すのではなく、まとめてアニメーションで表示してあります。

 平成の大合併前なので今とは市町村の境界がだいぶ違いますが、今回取り上げた一人一人の個人票の分布と比べると、愛知県豊田市や宮崎県延岡市、愛知や福岡の自動車産業などに対応が見られますね。

 こうした市町村はそれぞれの産業が設備を持って根を下ろしている地域であり、それぞれの利害が関わっている労組でも、今なお地盤が引き継がれているといえます。労組の地盤とはこのようなものです。

 しかしその一方で、改めて個人票と政党票をあわせた全体の得票率(図1)と比べると、これは果たして関係のある政党なのだろうかというほど、異なる印象を受ける方も多いのではないでしょうか。

 その違いは民社党と国民民主党を隔てる長い時間のあらわれでもあります。そしてまた、組織外の一般の有権者からの票が、組織票以上に多いからなのです。


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三春充希(はる) ⭐みらい選挙プロジェクト

社会を変革する手段としての正確な政治情勢分析を、誰からも独立して探求しています。著書に『武器としての世論調査――社会をとらえ、未来を変える』(ちくま新書)。自由にフォローしてください。Twitter: https://twitter.com/miraisyakai

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