20191020タイトル

与党の政策は根本的に何がいけないのか

 日米貿易協定によって日本の農業生産額が年間600憶~1100憶円減少するという試算を、政府が10月18日に発表しました。この試算では日米間で協議されている自動車への関税が撤廃されるという前提のもとに、GDPが0.8%上昇するとも見積もられています。もっとも、関税をめぐる協議の先行きはまだまだ不透明で、撤廃が実現するかどうかはわかりません。

 ここで、都市と地方という観点からこの日米貿易協定のことを考えると、これは都市部の自動車産業を優遇するために、地方の農業を犠牲にしているということができます。以前の記事で、今の日本では都市と地方のバランスが崩れていることに触れてきましたが、今回の日米貿易協定でもまた、与党が一貫してそれを推し進めていることが浮き彫りとなりました。

 このことは決して農業にとどまる問題ではありません。地方に不利で、中央や大都市に有利な政策は、地方から大都市への人口の移動を加速させていきます。その結果、労働力を減らしていった地方は生産力そのものを失くしてしまいます。そのようにして、平成以降の日本では、都市の発展と地方の衰退が並行して起こりました。

 この25年間で中国のGDP(ドル)は30倍になっています。韓国は4.5倍になりました。日本は1.1倍です。(※2019年のデータはまだなので、「この25年間」とは1993年から2018年までを指しています)

 この1.1倍という現実こそ、都市の発展と地方の衰退が相殺した結果にほかならないのです。だから日本の停滞は、単なる停滞ではなく社会全体のアンバランス化とともにあるわけです。

 このアンバランス化は何を招いているでしょうか。地方では、人口減によって経営難に陥った商店や企業、交通機関の撤退が次々と起きています。地方の暮らしはますます不自由になり、そこで暮らす人たちの活躍の機会を奪うでしょう。

 対して人口が増加する都市部ではどうでしょうか。過密ゆえに保育園に入れない状況があります。子育てや教育がしにくい状況になっています。非正規の若者があふれかえり、技術を身に着けられないままに職を転々としています。

 また、都市に出て行った若者と、地方にとどまる高齢者が分断されています。こうした中で高齢者も若者も、多くの人が力を十分に発揮できない状況におかれ、生産も、消費も、子育てだって歪められてしまい、こうしたことが絡み合って日本の成長を阻害するわけです。

 特定の人たちに「力があるのにそれを活かせない」という状況をおしつけてしまうのは、日本の社会全体にとって途方もない損失です。それなのに、政府与党の政策は真逆であり、日本のアンバランスを拡大することをやっています。そんなことを続けているから日本のGDPは1.1倍なのです。国際的にはそれは途方もない没落です。

 いま日本ではびこっている中国や韓国への反発や、「日本は実はすごかった」というような話は、こうした日本の没落を肌で感じた人たちの悲鳴でもあるわけです。

 けれどいくら悲鳴をあげたところで、これまでの与党の経済政策を転換できないままならば、この傾向は延々と続くでしょう。日本はますますアンバランス化し、没落はいつまでも止まりません。見渡してみてください。あれだけ豊かだった日本が今はこんなことになってしまった。世界史に残るような失策をやっているわけです。与党の政治家も、野党の政治家も、そのことをちゃんと自覚していますか。

 地方の衰退を止めなければ日本の発展はありません。与党の政策は真逆です。けれども野党もまたそれに対抗して未来をひらくビジョンを持てておらず、有権者に希望を抱かせることが実現していません。地方は犠牲にされているのにもかかわらず、与党の地盤になっています。そうした状況は変わりうるはずで、それを変えなければ日本の没落は止まらないということです。

 このことを何とかしないといけません。ぼくにできることは限られているので、こうした視点から政治を考える人が増えればと思います。特に政治家はこのことに関心を持ってほしいと思います。与党の人も野党の人もです。この問題に対してどういう態度で臨むのかということは全ての政党、全ての政治家、そしてすべての国民に問われるのですから。


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