20190627タイトルa

いま、問われること

この地図を見てください。これは、人口が減っている市町村を水色や青で、人口が増えている市町村を黄色や赤で塗り分けたものです。

昔、もっと広く分布していた黄色や赤の自治体が、時を経るごとにどんどん青く染まっていく様子を見せたかったのですが、間に合いませんでした。だから、そうした自治体が一つ一つ消えていき、一握りの人口密集地だけが残されていく様子を想像してください。

この傾向が今のまま続けば、現時点で人口が増えている自治体も一つ一つが転落していきます。やがて札幌が、広島が、仙台が、人口減少の地域へと変化していくことが予測されています。村や町からはじまった衰退が、より大きな市へ、そして都市部へと浸食していってしまうのです。

これを、食い止めなければなりません。

なぜなら、これは日本の生産力を突き崩すものだからだからです。

誰もが都市部へ移動して、都市部で生活していくなら問題はないのかもしれません。しかし現実にはそうではなく、地方に留まることを選択する大勢の人たちがいます。いろいろな事情から地方を出ることができない人もいます。

そうした人たちがどういう状況に直面するでしょうか。

人口が減っていけば、採算の取れなくなった交通機関が地方から撤退していきます。客が少なくなることにより、スーパーなどの店舗も撤退に向かうでしょう。労働力が確保できなければ企業もさらに撤退していきます。地方で生まれた子供たちも、社会に出ていくときに就職先がなく、地元では活躍の場を得ることが難しくなってしまうでしょう。

こうしたことが今後、加速的に起ころうとしています。そして様々な不便や就職の都合により、地方で暮らす人たちが、自らの力を発揮する機会が失われてしまうのです。それが日本の生産力にとって大きくマイナスに働くことは想像に難くありません。

特定の人たちに「力があるのにそれを活かせない」という状況をおしつけてしまうのは、日本の社会全体にとって途方もない損失です。本来、政治はそのようなことがないように、采配する必要があるはずです。

しかしながら、近ごろ政府が行ってきたのは都市と地方のアンバランスを拡大することばかりでした。

最近のことでいうならば、日米間の貿易協定で農産物について譲歩することは、地方の農業のさらなる衰退を招くでしょう。また東京オリンピックや大阪万博など、都市部にばかり予算を投下するようなことも、地方を衰退させ、都市と地方のアンバランスを拡大することの一つにほかなりません。多くのデータを検討していると、こうしたことがほとんど自滅する行為のように見えるのです。

いま、消費税の増税が一つの問題になっています。また、反緊縮を掲げたり、さらなる国債の発行に言及する政治家もでてきました。しかし、そうした議論とは別に、都市と地方のアンバランスの中で、予算をどう使うかということが深く論じられる必要があります。

税の問題、あるいは国債の発行というのは、根本的には、いかに予算を調達するのかという問題です。しかし、そうして作った予算を投下した後に残るものが東京オリンピックや大阪万博の遺物ではいけないのです。米国から買った戦闘機の山であったりしてはいけないのです。

一人一人が力を発揮できる環境を作るように、そして一人一人の生活が向上するように、そうした社会の実現を目指して予算を投下する必要があります。

単純に人口が減ること自体が問題なのではありません。その中で若者と高齢者のアンバランスが生じ、都市と地方のアンバランスが生じることが問題です。そして若者の生活が圧迫され、高齢者が不安定を強いられるのであれば、それは阻止するべき事態であるはずです。

ここで、将来の世代につけをのこさないようにと、消費税増税を掲げたりするのは、何ら根本的な解決にはなりえません。それはここまで書いたようなことが、日本の社会の構造に関わる問題であるからです。予算の調達の問題ではないからです。

人口減少や地方の衰退は、既定路線なのでしょうか。自民党はそう考えているように見えます。そしてその既定路線を進むうえで、例えば年金が足りなくなるから受給開始年齢を引き上げるということや、財源の確保のために増税するというような議論がされています。

しかし実のところ、人口減少も地方の衰退も、これまで行ってきた政策によって作られたものです。だからこれは、転換できる問題であるはずです。

日本の各地で選挙に出馬する候補者の皆さん、この都市と地方の問題をどうしますか?

あなたの政策で、この地図の未来は、どのように変わりますか?


人口の問題については、「武器としての世論調査」にも書きました。p.136~144あたりなので、必要に応じて参照してもらえればと思います。
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