寡黙な死骸 みだらな弔い

私は幅広く本を読むタイプでは無いけど、文章を読む行為は好きで
本棚はそこそこ大きめのものが部屋を占拠しているけど
気に入ったものを繰り返し読むので「読書好きです!」と声を張れるほどでは無い。
好きな作家は何人かいるけど、その中でも小川洋子はかなり好きで、全てでは無いけど読んでいる。

表題の作品は短編集で、毎編人が死ぬ。
弔いの話だからまぁそうなんだけど、その死の描写がまぁ美しい。
静謐で品がある。死ぬってなんだっけ?とすら思わせない
ただただ歩いたり食事をするように人が死ぬ。
特別なことでは無いような気にさせる。

私は人が死ぬことを望んだり喜んだりする訳では無いけど
退廃的な世界観は今でも魅力的である。

悲壮感がない。死んだ人も殺した人も、遺された人も全員。
身近な人を亡くした時に、わたしもこれくらいフラットな気持ちで居られるのかわからないけど
なるべくこれになりたいと思う救いがある。

ちなみに「みだらな弔い」とあるけど、エッチなシーンは特に無いです。
ただ、この人の描写は全て生々しくてフェチい。
所作の1つ、何でもない状況の説明ですら。

SMとか変態という表現じゃ追いつかないし、直接的な言葉は一切ないのに性的
この人はきっと、世間がフェチだのSMだのと騒ぐずっと前から
その世界を味わい尽くしてるのだろうな。

死をタブー視する事に違和感を感じていたので
この物語は本当に清々しい。
村田沙耶香の「殺人出産」にも近い。
生も死もそれ以上でも以下でもない扱いをする世界観が好き。

性も死も平等に感じて、特別視しない世界観と友達に
わたしはいつも救われてるんだなぁ、とふと思う。

出張の際の移動中に本を読むことが多いのだけど
行きの新幹線でこれを読んでいたら、何も辛いこととはないけど
うっかりホームに飛び込みたくなるくらいカジュアルな生死感。
軽やかすぎる。

なにごともウェッティに捉えがちな世論なのでは?と
考えると自分もウェットな気持ちになっちゃうので
なにごとも軽やかに捉えて考えて生きていきたい気持ちになれる本かも。

そうでもないかも。




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