見出し画像

楠本まきホリック再燃

先日、上野のエッシャー展へ行った。
わたしの中ではエッシャーといえば楠本まきの「Kissxxx」の
カノンとかめのちゃんの会話を思い出す

カニのカノンなんて、まさにあのふたりの為のようなタイトル、、、!
と、ひとり興奮していた中学二年生の頃から変わらずに今も興奮してる。

楠本まきといえば、サブカルクソ女あらため、サブカルクソバンギャロリータババァの永遠のバイブルにして家宝なのでは?
言葉が汚くなったことを反省せざるを得ないくらいに
私の中の一番キラキラした綺麗な感情とかが詰まってると今でも思う。
楠本まきの作品の全ては私の美意識と性癖の礎かも


代表作にして、一番好きな作品の「Kissxxx」は1988年からマーガレットで連載していた少女漫画。
当時はまだ少女漫画を読む年齢ではなかったので、リアルタイムでは目にしていなかったけど、ロリータファッションに目覚めた中学生の頃に
先人の勧めで読んで見事にどハマりした。

線が細くて、儚くて繊細で美しい。退廃的で詩的で刹那的で
とにかく当時の私を虜にするのには十分過ぎたコンテンツの塊。
ビアズリーのタッチにも似てるあの病的な線画。

カノンは今でいうV系のようで、かめのちゃんはロリータファッションを身につけていて、そんな二人の恋愛漫画。
そういうと、とても陳腐過ぎてなにひとつ良さが伝わらないんだけど。


少女漫画然として、カノンとかめのちゃんが出会って恋人になってという流れではあるけど、そこには特にドラマティックなことは何も起きなくて
若干のライバル?的なキャラやちょっとしたいざこざはあるけど、特にストーリーを大きく揺るがすこともなくて、カノンとかめのちゃんは常に変わらずにお互いを大好きで、ただ暮らしてる日常でしかない。
そういったストーリーも最高。
ただただ、登場人物たちが、素敵に暮らしてる。生活感も将来も無く。
それがいい。

トーンをほぼ使わないモノトーンでの表現。
要所要所に絵画的だったり絵本的だったり詩的な表現が織り交ぜられているのも、中学二年生の心のやらかい場所を今でもまだ締め付ける。

王道の少女漫画ではないけど、「少女漫画の金字塔」と言われる理由は今になってなんとなくわかる。
これは少女の時代に読んでこその金字塔なんだと思う。
大人になってから読んでも、当然素敵ではあると思うけど
あの、何を見ても感動して感化されて頭がぽーっとする時期に
楠本まきの世界観を脳みそに刻めたか刻めなかったかで、その後の人生とか価値観が大きく変わると言っても言い過ぎではないと思ってる。
それくらい、私にはセンセーショナルな作品だった。

1番好きなシーンは最終話のこのくだり
ほぼトラウマレベルで衝撃を受けたセリフだ。

わたしは一生こんな可愛いらしく暴力的な言葉を言えないと思う。
もはや漫画を超えた文学的作品なのでは?

あの頃のわたしはかめのちゃんになりたかった。
たぶん、当時のロリータやバンギャは全員そう思ってたはず。
かわいくて、世界中から可愛がられてて、美しい恋人(バンドマン)から
一心に愛されてる。最高かよという状況。まぁ少女漫画だからね。
かめのちゃんのファッションも全部好きだった。
実際はロリータファッションとはちょっと違うんだけど
今はなき「田園詩」のようなクラシカルなお人形みたいな格好に夜も眠れないほど憧れた。
そこで私は洋服を作るようになった。買えないから。
ロリータじゃなくても、普通のカジュアルな服も全てが可愛くて似合っていて、楠本まきのセンスの良さを20年ちかく経った今でも思い知らされる。
今は正直かめのちゃんみたいな女は嫌いだけど。

生まれついての容姿や環境に恵まれてるという点だけじゃなくて、周りがなんでもしてくれるので、自分で何かを努力したり学習することをしない女に嫌悪感を抱く、いわゆるお局的な年齢になってしまったのだろう。
だからこそ、あの年齢でKissxxxにはまることができて本当に良かった。
今初めて読んだら、ここまで聖書として崇める作品として出会えなかったような気がする。
大人になったものだなぁ、という気持ちです。

多感な時期に心をズタズタにするまで読み混んだ作品は、一生脳に影響を及ぼすのだな、と今になった改めて痛感してる。
どんなに疲れても汚れても爛れても、楠本まきの作品を読むと一瞬で
あの頃の何にでもドキドキしてときめいて、感化されて胸がキュンとする
アッパーでデカダンな気持ちになれるので「麻薬だな」と。
この歳で、まだこんなに切ない気持ちになれる事ってそうそう無い。
どんな事でも「だいたい知って」て「だいたいわかる」
それは動揺する事が少なくて生きていきやすくもあるけど、ちょっとつまらなさもある。


もうこの先、こんな気持ちになれる作品に出会えるかわからないけど
こういう年甲斐もない気持ちになれるものは、これから先もすっごく大切にしていきたいと思った平成最後の六月の終わり。

あぁ、でもカノンとかめのちゃんは結婚しません、っていう話
出どころ不明なんだけどあれを知った時は本気で悲しかったなぁ、、、。

#楠本まき #kissxxx #エッシャー #読書感想

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?