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イーサリアムとは?

イーサリアムはヴィタリック・ブテリン氏によって開発されたプラットフォームの名称です。このプラットフォーム内で使用される暗号資産(仮想通貨)をイーサ(英: Ether、単位: ETH )といいます。日本では、プラットフォームを意味するイーサリアムと通貨を意味するイーサをどちらも「イーサリアム」とする表現が普及しています。
イーサリアムのコンセンサスアルゴリズムは、大型アップデート(The Merge)により、 Proof of Work(略称:PoW、プルーフ・オブ・ワーク)から Proof of Stake(略称: PoS、プルーフ・オブ・ステーク)へ移行しました。
イーサリアムの特徴
スマートコントラクト
スマートコントラストは、ブロックチェン上にプログラムを書き込むことで、設定した要件を自動的に実行する機能です。たとえば、「 1 年後、自分の口座にある 3 ETH を A さんに支払う」とするプログラムをブロックチェーン上に記録すると、 1 年後に 3 ETH が A さんに自動的に支払われます。
他には、自分の 30 ETHと A さんの 1 BTC を交換したい場合、先に送金した方は相手方から送金されないという裏切られるリスクがあります。ここで、「 A さんが 1 BTC を送金すること」と「自分が 30 ETHを送金すること」を取引の成立条件としてスマートコントラクトに書き込みます。すると、ふたつの条件が満たされた場合のみ取引が成立するため、第三者なしで効率的な取引を行うことができます。
このようにスマートコントラクトはあらかじめ取引内容を決め、自動的に取引が実行されることで業務効率を格段に上げることができます。とりわけイーサリアムで利用されるスマートコントラクトは、暗号資産(仮想通貨)の送金だけでなく、商品の売買や不動産取引などにも応用することのできる汎用性があり、様々な分野で実際の業務効率化や新たなビジネスの構築に利用されていくことが期待されています。
dApps 構築のプラットフォーム
もう一つの特徴は、分散型アプリケーション(英: Decentralized Applications、略称: DApps )を構築するための開発環境を提供するプラットフォームとしての機能です。
DApps は、企業や政府、銀行などの中央管理者がいなくても稼働するアプリケーションのことです。アプリケーションを利用する参加者全員がデータを分散管理することで、仕様変更などの意思決定に関わることができます。
DApps は特定の技術を持ったプログラマーでなければ開発が難しい領域でしたが、イーサリアムの登場により容易になりました。その結果、多くの人が DApps 開発に参入することができるようになり、ブロックチェーンやそれを利用した分散管理という概念が社会に広く応用されるきっかけを与えたといえます。現在では、多種多様なユニークなアイディアを簡単に DApps に落とし込むことができるようになり、いくつものプロジェクトがイーサリアムから誕生しています。
イーサリアムの時価総額
2022 年 7 月時点のイーサリアムの時価総額は約 17 兆円で、暗号資産(仮想通貨)時価総額のランキングでは不動の第 1 位であるビットコインに継ぐ第 2 位の暗号資産(仮想通貨)です。
イーサリアムの誕生
2013 年、イーサリアムは当時 19 歳のヴィタリック・ブテリン氏によって考案されました。2011 年 17 歳でビットコインを知ったブテリン氏は、暗号資産(仮想通貨)への関心を高めていきます。2012 年にはビットコインを中心に暗号資産(仮想通貨)業界に特化した雑誌「ビットコインマガジン」の立ち上げを行いました。
2014 年には、 PayPal 創業者で投資家のピーターティール氏が行うティール奨学金にブテリン氏が選出されています。若手起業家 20 名に 2 年間で 10 万ドル(約 1,000 万円)が投資されるこの奨学金は、ブテリン氏のイーサリアム開発にも利用されました。
イーサリアム の歴史
イーサリアムは、 2014 年にブテリン氏が立ち上げたイーサリアム財団を中心に開発が進められています。イーサリアムは、フロンティア、ホームステッド、メトロポリス、セレニティーからなる 4 つの開発段階が明確に示されており、その方針を巡ってコミュニティで活発な意見交換が行われています。
イーサリアムのトークンセール
2013 年にブテリン氏はイーサリアムのホワイトペーパーを公表します。その後 2014 年 7 月に開発資金を集めるために 42 日間に渡りイーサとビットコインを交換する形でプレセールを行いました。
その結果、約 6,000 万 ETH が販売され、約 32,000 BTCを集めることに成功しました。その後 1 年間の準備期間を経て本格的な開発がスタートしました。
フロンティア(英: Frontier)
2015 年 7 月 30 日、イーサリアムが一般公開されました。フロンティアでは、開発者向けの仕様でイーサリアムがリリースされました。これはイーサリアム上に不具合が見つかった場合にやり直しができるような選択肢を残しておく意図があったためです。
最初のブロックが生成されるとマイニングも開始されました。当時のマイニング報酬は 5 ETH に設定され、ASIC 耐性のあるアルゴリズムを採用したマイニングは CPU や GPU によって行われるように設計されていました。この頃からすでにイーサリアムのプラットフォーム上ではいくつかのプロジェクトが立ち上がりを見せています。
ホームステッド(英: Homestead)
2016 年 3 月 14 日、フロンティアから半年を経てイーサリアムが安定的に稼働することが確認されると、第 2 の開発段階であるホームステッドへのアップグレードが行われました。
THE DAO 事件
ホームステッドへの移行が完了したことでそれまで様子を見ていたプロジェクトも参入し、様々な試みがイーサリアム上で見られるようになります。
その中でも注目されていたのが、スマートコントラクトを利用して煩雑な手続きや監査機関なしに資産運用を行うベンチャーファンドの立ち上げを目指した「THE DAO」というプロジェクトでした。しかし、2016 年 6 月に「THE DAO」の欠陥を突いて、約 50 億円相当のイーサが何者かに盗まれる事件が発生しました。
この事態にイーサリアムのコミュニティは被害者を救うためにハートフォークを実施し、ハッカーが盗んだとされるイーサの取引記録をブロックチェーンから削除した上で被害者にイーサを戻すことを提案します。
コミュニティ内にはこの措置に反発する声もありましたが、ハードフォークは実行されました。しかし、被害者は救われたものの THE DAO は失敗に終わります。この時に、ハードフォークに賛成しなかった一部のグループはイーサリアムクラシックという名前でイーサリアムとは異なる暗号資産(仮想通貨)の運営を行うことになります。意思決定機関のない分散化された組織がプロジェクトを遂行する危険性や難しさに直面した事件であったといえます。
メトロポリス(Metropolis)
第 3 の開発段階であるメトロポリスは、2017 年に行われたビザンティウムと、2019 年に行われたコンスタンティノープルの 2 つのアップグレードから構成されます。メトロポリスを通してイーサリアムは匿名性の向上、セキュリティーの強化、そして PoW から PoS への移行が計画される最終開発段階のセレニティーに向けた準備が行われました。
匿名性の向上を目指して、匿名通貨ジーキャッシュ(英: Zcash、単位: ZEC)が導入するゼロ知識証明(英: zero-knowledge proof )という技術がイーサリアムにも導入されました。ゼロ知識証明は、取引に用いるアドレスや送金額などプライバシーに関わる情報を公開せず、その取引の正当性を証明することのできる技術です。また、プライバシー保護に有効なだけでなく、外部から特定の取引を見つけて攻撃することが困難になるため、ネットワークのセキュリティー向上も見込まれます。
セレニティーに向けた準備として、マイニングの難易度であるディフィカリティの低下とマイニング報酬の減額が行われました。これにより取引の承認を行うマイナーは以前よりも早く取引を処理することができ、 1 ブロックあたりの生成時間が短縮されたため、イーサリアム上での処理速度が向上することになりました。
一方、マイニングが容易になることはマイナーが受け取る報酬の増加と、それに伴うマイニング競争の激化を招くことになります。そこでマイニング報酬を ビザンティウムでは 5 ETH から 3 ETH へ、コンスタンティノープルでは 3 ETH から 2 ETH へ減額し、実質的にマイナーが受け取る報酬が大きく変化しないようにする措置が取られました。

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