法律昔話 カチカチ山

 むかしむかしあるところに(ただし,平成30年1月1日時点の刑法・刑事訴訟法の適用があるものとする)、おじいさんとおばあさんがいました。

 おじいさんは、畑でイモを栽培してくらしていましたが、おじいさんとおばあさんが住んでいる家の裏の山には、一匹の悪いたぬきが住んでおり、いつもおじいさんの畑からイモを盗んでいきます。

 いくら言ってもたぬきがイモを盗むのをやめないので、おじいさんは、たぬきを捕まえようと思いまいした。しかし、たぬきが「野生鳥獣」に該当し、勝手に捕獲すると原則として鳥獣保護管理法違反になってしまうことを思い出しました。
 そこで、おじいさんは、こっそり試験を受けて狩猟免許(わな猟免許)を取得し、県に登録をしたうえで、畑の見えにくいところにくくり罠を設置しました。

 次の日、畑を見に行くと、まんまとたぬきが罠にかかっていました。これを見つけたおじいさんは、鳥獣保護管理法18条に基づき、たぬきを放置することなく家に持ち帰り、家の天井につるしました。
 おじいさんは、おばあさんに、
「ばあさんや、このたぬきは、畑を荒らす悪いたぬきだから、決して縄をといてはいけないよ」
 といい、また畑に戻って行きました。

 おじいさんがいなくなったのを確認したたぬきは、おばあさんに、
「もう2度と盗みはしませんので、どうかゆるしてください。」
と懇願しました。

 おばあさんも、最初はとりあわなかったのですが、だんだんたぬきがかわいそうになり、今回だけは見逃してあげ・・・ようかとも思ったのですが、最近、知人から「アライグマは特定外来生物で、放すのが禁止されているらしいよ」と聞いたこともあり、たぬきを解放してもいいものかどうか悩みました。

 そうこうしているうちに、おじいさんが畑からもどってきて、たぬきを役所の鳥獣保護管理担当に引き渡しに行きました。

 その後、たぬきがどうなったかはわかりませんが、おじいさんとおばあさんは、ペットのうさぎとともに幸せにくらしましたとさ。

                                  おわり