中二であのバンドに出会って、11年経った。

「なんじゃこりゃ!?」

中学二年生の初夏、家庭科の授業から戻ってきた私は、教室の黒板を見て驚いた。

一時間前まではまっさらだった黒板に

「一生青春。有心論」 とデカデカ書かれていたのだ。

よく見てみると、ドラ〇もんのような丸いキャラクターや 人の顔も落書きされている。

心当たりはあった。……クラスで一番、いや、学年でもトップスリーに入る、おちゃらけ男子、近藤くん率いるイケイケ組(いま勝手につけた呼び名)の仕業のようだった。

そのころ、私のクラスではRADWIMPSというバンドが流行っていた。流行らせたのは、その近藤君だったような気がする。

私は「有心論」という曲をよく聞いていた。

ユーチューブで初めてMV(ミュージックビデオ)を見て、号泣した記憶がある。

今思うと、中学生の多感な時期に、RADの「人間」や「命」に焦点を当てている歌詞が、私を強く惹きつけていたんだなあと思う。

私はもともと音楽が好きだったけれど、このバンドと出会ったことは、衝撃的だった。

歌詞もその世界観も、それまで聞いていた音楽とは違って聞こえたのだ。

すっかりその世界観にのめりこんでいって私は、それから……

ひどい有様だった。(苦笑)

13才で、世界のすべてを知った気になっていた私は、なんだかやたら冷めた態度になっていって、「自分は周りとは違う」と思って、内面でどんどん孤独になっていってた。

(当時、人間関係で悩んだり、学校が嫌だったり、クラスがまとまりなくて疲れていたのも理由だろうなあ)

中学生の一時期の態度を反省した私は、そのあと色んな人や世界を知っていった。そして、色んな事に興味を持つようになっていった。

自分に知らないことが世の中にはまだまだあるんだって知った。


そして、2019年の夏。

気が付いたら、あれから11年経っていた。

先日立ち寄った書店で、「君の名は。」の新海誠監督が新しい映画を作っていたことを知った。「天気の子」という映画らしい。

その主題歌はRADWIMPSだった。のちにその曲は、「愛にできることはまだあるかい」というタイトルだと知る。

気にはなったものの、特別調べたりもしないまま数日が過ぎた。

CMで繰り返されるサビのワンフレーズだけが頭に残ってて、この前カラオケに行ったときになんとなく曲を入れてみた。

そこで歌いながら、初めてすべての歌詞を見ることになる。

「……めっちゃいいやんけ……」

気が付いたら歌いながら泣いていた。あまりにRADのボーカル、野田さんの歌詞が私の心に刺さったので、カラオケどころじゃなかった。

私はこの頃、疲れていた。将来が不安だったり、身内に不幸があったり、職場での人間関係に悩んだり……ここ数週間は色んなことが重なって、ただボーっとしたり何もやる気が起きない日が続いていたのだ。

そんなときに久々に聞いたRAD。

そうだ、このバンド、こうやって、中学生のころにも私の心を揺さぶってくれたんだった! 疲れて無気力になりかけてた心に「感動」をくれたのだ。

11年前から今日まで、腹立たしいことや理不尽なこと、悲しくてしかたないこと、いろいろ見てきた。自分の無力さに泣いたり自己嫌悪したり、悩んだり……苦しい時期も度々あった。

でも、最後には、まさにこの曲の歌詞のように、自分にできることはあるし、愛や希望を持ってれば道は開けるって思っていたのだ。

10代のころに出会ったバンドに、私はいつも背中を押してもらっていたなあと思う。あのころ、出会えてよかったなあ。

そう思いながら、またこの曲を聴きながら、自分のなかで溢れた感情を、久々に絵に描いた。

夢中になって黙々と描いたのは久々だった。あたたかくて力強いような、泣き出したくて寂しいような、混ぜこぜの感情。泣いても泣いても、自分で自分に虹をかけて、また前向いてくしかないなって思った。

きっとこの先も、音楽との出会いがまた私に感動を与え、何度でも前に進む勇気をくれるんだろう。

描き終わったら、晴れ晴れとした気持ちになっていた。

11年前の出会いに感謝しながら、私はモヤが晴れたような気持ちで眠りについた。





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