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催眠術は本当にある

オカルトでもなんでもなく、「あ、催眠術ってほんとにあるんだ」と思った瞬間がある。

1回目は大学の授業中。べつに先生の話を聞いていたらつまんなくていつの間にか夢の中……とかじゃない。

ま、先生の話を聞いていたら、というところまでは同じなのだけれど、授業中に先生が「思い込みは怖い」みたいな話をし始めて、「今ここで僕が、だらあーってチカラを抜いて眠っていいよって言ったら眠れるんだよ、人間は」みたいな、ちょっと明確な言葉は忘れちゃったけど、今すぐ本気で眠ろうと思えば「寝ろ」と言われれば簡単に人は眠れる、みたいな話をして、そのとたん、私は本当に急激に、マジで秒速の速さで眠気が襲ってきた。それまでハッキリ起きていたし授業も至極真面目に受けていたけれど(平和学という歴史と心理に関する授業だった)、なんだかもうマトモに前を向いていられないくらい頭がぼーっとしてまぶたが重くて眠くてたまらなくなってしまった。そして寝てしまった、すぐ起きたけど。浅い眠りでも、なんとまあ誰かに眠れと言われてほんとに眠気に襲われることなんてあるんだ、と朦朧とする意識の中で驚いたことを覚えている。

2回目はヨガの最中。やったことがある人は分かるけれど、ヨガはインストラクターのひとが「目を閉じて、ゆーーーーーっくり、呼吸をしましょう。体の中の、いやーーーーーーなものをぜーーーーーーーーーんぶ、吐き出してーーーーーー」というふうに、すごくゆっくりした口調で指示を出す。

最初と最後は必ず瞑想で終わるのだけれど、汗がダラダラ出て、最後シャバアーサナという死体のポーズで仰向けになって寝転がる時間がある。これは疲れた体を休ませて気分を鎮静化させるポーズで、ヨガの最後に必ず行う。

この時も、インストラクターの先生は穏やかな通る声で静かに指示を出す。「今日の疲れや嫌なこと、ストレスをすーーーーーーーーーっと吐き出してしまいましょう」というふうに。

わたしはふだん、このシャバアーサナのときは、疲れ切ってフワーーーッと頭が空っぽになりただただ横たわっているのだが、この日は違った。その日あったこと、ストレス、など言われた時、一気に直近のそれらがフラッシュバックして、本来ならじっと横たわっているべきポーズなのに、突然、右足の貧乏ゆすりが止まらなくなったのだ。

もう、イライラしてるというか憑き物が体の中で暴れているような感じで激しく貧乏ゆすりをしないと冷静でいられないような気分だった。このままジッとしていなくちゃというわたしが、何もかもぶっ壊してやる!!!!!みたいなわたし?がのたうちまわっているのを押さえつけようと葛藤し、それを必死に貧乏ゆすりで紛らわしているようだった。

幸い、真っ暗だし隣の人は遠くにいたのでわたしの貧乏ゆすりが怪しまれることは多分、なかったと思う。が、いわゆる霊媒師の人とかが、よくテレビで憑き物落としみたいなことをしていた人がいたけれど、あれってあながち嘘じゃないかも、と思ったりした。

そのヨガの部屋から出たあとは、貧血気味でしばらくうなだれていないと気持ち悪くなり、負けたボクサーのように膝に両手をついて首をもたげてジッとしていた。

これらは催眠術と呼ぶべきか分からないけれど、でも言葉の力で心を一気に操られるというのは、実際にあると思う。その引っ張られるタイミングとか、どれくらい耳を傾けているかとか、いろんな条件が合致しないと作動しないのだろうけれど、とにかくわたしはこの2回とも、催眠術みたいなものにかけられていたんじゃないかな?と思っている。

だからこそ、というわけではないけれど、わたしは言霊信仰みたいなものを信じているし、言葉にすると現実になるというのは、結構本気でそう思っている。それが秒速で効く催眠術じゃなくても、言霊のチカラがじわじわ効くこともある。

不思議な体験だった。そして、言葉の力を文字どおり体感した瞬間でした。

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