宿泊予約サイト「Booking.com」で予約受付をやめた理由

民泊をはじめたのは、2018年6月15日のこと。

民泊なんて、宿泊業なんて、まさか自分がやるなんて、1mmも思っていなかったのだけれど半年以上経ったいま、結局100人以上のお客様が泊まってくれている。

サービス業のいろはも知らない(知っていることといえばアルバイト経験で学んだ接客スキルくらい)なかで、自分たちがあちこちふらふらしていた経験と勘所だけを頼りに、文字通りの手探りで、ここまで運営してきた。

プレゲストハウスとして、北海道下川町で民泊事業をはじめます
“ふつう”はいつもドラマティック──「andgram」というお宿のはじまり
本棚を見るとその人の頭の中が分かる

宿を運営しながら、新しくはじめたことはもちろんたくさんある。

けれど、やめたこともある。

その一つが、世界最大手の一つ「Booking.com」での予約だ。

いま「andgram」で検索すると「Booking.com」が一番上に出てくる。

下川町、宿、ゲストハウスと検索しても「Booking.com」が上位に表示される。

それでも、11月ごろからだったろうか、「Booking.com」での予約は、いますべて停止中。そのため、予約ができない状態になっている。

お客さんにとってみたら不便だし、宿業をやる上で顧客獲得を考えたらどう考えてもアホな決断だと思う。

「ただでさえ下川町は行くのが大変で観光地でもないから宿泊のお客さんをゲットするのが大変なのに、自ら母数を減らしてどうすんの?」というハナシで。

場を経営する観点からすれば、どう考えても「ナシ」だと思う。

実際、「Booking.com」経由で予約を受けるお客様もおられたから、そういう方々を必然的に突き放すことになる。

でも、もう何度もいろんな人に口頭でも伝えているけれど、わたしがやりたいことは、女将じゃない。

宿泊業がやりたくて、「andgram」をはじめたわけじゃない。

「そんな甘い覚悟で始めたなんて、宿業をナメるな」と思われるかもしれない。

けれど、それも仕方ない。

だってやってみないと分からなかったんですもの。

言い方を変えれば宿業をナメてないから、掲載基準にクオリティが見合わない──というか、「andgram」の持つ役割が「Booking.com」というプラットフォームの性質と若干違うと判断したから、「Booking.com」からは予約を受けられないようにした。

理由は主に、2つある。

ひとつは、「Booking.com」経由でお越しになる、お客様の属性。

わたしのnoteだとかを読んで、「andgram」がどういう思いを持ってスタートした場所なのかあらかた知った状態で「Booking.com」経由で予約をしてくださる方もいた(ありがとうございます泣)。

けれど、「Booking.com」経由のお客様は全体の宿泊者数の3割を占め、あと残り7割はすべて口コミ、Airbnb、知人・友人、移住検討者だった。

しかも「Booking.com」経由のお客様のうち、8割ほどの方が深夜に着いて早朝に発つというお客様。

つまり、下川に来たけど下川の町中をほとんど歩くこともなく、人と触れ合ったりする時間もないまま町を出て行く人たちが、ほとんどだったのだった。

自分が宿泊する側なら、「Booking.com」はとても使いやすい。

わたしも出張の時はほとんど「Booking.com」経由で宿をおさえる。

ユーザー数も抜群に多いし、訴求力も高い。

けれど、正直に書けば、とてもしんどくなってしまった。

わたしは下川のことを知ってほしくて「andgram」をオープンしたのに、仕事から帰ってきてヘトヘトな中、深夜まで起きてお客様を待ち、ほとんど会話もしないでチェックアウトしたお客様のシーツを片付ける日が続いて、「なんか違う」と思ってしまった。

もちろん、大前提として、お客様は何も悪くない。

わたしだって、ただ眠るためだけに宿を予約したことなんて何回もあるし、宿泊場所としての機能を考えれば真っ当な使われ方だ。

ただ、わたしが“シンプルな宿業として”のみ、お客様を迎え入れることについて、想像以上に早い段階で、ものすごいストレスを覚えてしまった。

耐えられなかった。

お客様の快適な睡眠のためだけに、自分の時間と体力を削るのが、思っていたよりも辛かった。

「これは長続きしないぞ、むしろ宿業自体キライになっちゃいそうだ」と、自分で自分にイエローカードを出したのだった。

だから何度も「わたしがやりたいことってなんだっけ?」と自問自答を繰り返して、自分がやりたいことを苦しくない範囲でできる方法を探した結果、「Booking.com」の予約は、全面的に停止するという決断に至った。

「やりたいことのためなら少しくらい苦労しろ」という声も、分からなくはない。

でも、わたしの苦労のしどころは、そこではなかったのだと、今は思う。

(「andgram」リノベーション中の様子)

一番の理由は、このひとつ目。

ふたつ目は、ここ(andgram)は、ゲストファーストのホスピタリティで勝負をするところじゃない、ということだ。ごめんなさい。

町の人、生活、風土、匂いに触れる場所でありたいと、思っている。

そういう色味を守り、醸成していきたくて、その過程を知ってほしいし体感してほしくて始めた場所で。

だから、少しお客様に負荷をかける場所だと、個人的には思う。

負荷というと語弊があるけれど、例えば本を持ってきてください、というリクエストとか、家主居住型だからシェアハウスのような空間で宿泊をするだとか、いわゆる巷で出回るゲストハウスより、もっと“生活”に寄った場所だ。

だから、ゲストハウスやホテルのクオリティを求めて泊まりに来る人にとっては「andgram」はまだまだ不足だらけなのだ。お風呂も寒いしね。

けれど当面は、できる範囲で最低限の清潔さと安心・安全な環境を担保しつつ運営して、これ以上投資するつもりはない。

快適で、ホスピタリティに満ちた宿泊をご希望なら、他にも下川には選択肢はある。

なんなら、下川の隣の名寄市にだって、泊まる場所はたくさんある。

それが「Booking.com」で予約を停止した、ふたつ目の理由です。

その代わり……というわけではないけれど、民泊を始めた当初から今までずっと、Airbnbでは常に予約をオープンにしている。

予約の窓口を、Airbnbとメール(stay.andgram@gmail.comへどうぞ)に絞った結果はというと……

特にお客様の数が激減した感覚はない。

いまは予約を停止して、よかったと思っている。

予約をしようという時、お客様は不便だろうけれど(申し訳ございません)そこで「万が一空いていないかな」と思って問い合わせをくださる方もいて、そういう場合は適宜対応させていただいておる。

どのプラットフォームを使うかということは、「誰に向けた場所か」ということを示す一つのメッセージになる。

どんなに「ナメてる」とか「甘い」とか言われても、誰かに頼まれて始めたわけではないし自分でやりたくて始めた場所だから、自分のやりたいようにやる。

これまでぎゅっと絞った入り口にした今でも、ぽつらぽつら、来てくださる方がいるから、そういう方々との時間をていねいに紡ぐことに、頭と体を費やしたい。

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読んでいただき、本当にありがとうございます。

ありがとうございます。明日もご機嫌に過ごせますように。
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20190101〜/コラムや日記、メモリ〜

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コメント1件

沖縄で16年の宿業やっております。決してナメてるなんて思いません。とっても良い判断だと思います。私も今、特に海外OTA(Expedia, Agoda)をどうしようか考えています。Booking.com始め海外予約サイトは値段と写真だけが選択材料にされ、宿に対する思いが上手く伝えられないサイトです。
ですが私は今後もこれらのサイトを使い続けるかもしれません。それは、国内海外含め新たな出会いがあるかもしれないから。
沖縄市コザという街も沖縄にありながらまったくリゾートっぽくない街で、逆にその魅力を、新しく出会った人に知ってほしいと願って活動しています。
とりとめのないコメントになりましたが、立花様の活躍を祈念いたします。
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