左投手と、サイド(気味)投手のフォームについて

過去イチで長いタイトルにしてしまったところで、いきなり申し訳なさを感じています。前回はオーバースローの右投手という、一番オーソドックスな投手のフォームの観察点についてまとめました。ただ、さすがにそれだけでは不十分なので、今回は左投手と、サイドスローおよびそれに近いアームアングルの投手のフォームについて考えてみようと思います。それではー、れっつらごー。

●左投手のフォームについて

かつては日本人左腕で速球派はほとんどおらず、いたとしてもノーコン気味かリリーフかで、先発で活躍している左腕はだいたい平均140km/hいくかどうかでした。この理由について多くの仮説が提唱され、内臓の比重が左半身と右半身とでは違う(右半身の方が重い)からだとか、人体は左方向には回りやすいが右方向には回りにくいせいだ(トラック競技も野球も、左回りですよね)とか、色々言われてきました。ただ、近年は150km/hを大きく超えてくる速球を投げる左投手も多く生まれていますし、これらの説は少しオカルトだったのではないかと思っています。

個人的に、明確に違うなと思っているのは、前々回・前回のnoteにも書きましたが、うで体・あし体に関する点です。うで体とよばれる人は、右利きの場合、踏込み足(左足)が背中側に回っていきやすい骨盤の付き方なのですが、左利きの場合は踏込み足が右足になるので、あし体のような身体の使い方をする必要があります。恐らくこれが、左投手が右投手と同じ投げ方をしても、うまくいかなかった理由のひとつではないか?と思います。

少し違うアプローチから話します。なぜ球速が遅くても左投手は先発で活躍できるのか。これはやはり希少価値でしょう。右投手の球なんて見慣れすぎていますが、左投手は球筋からまず違います。右打者から見ると、右投手の速球は左から右に向かってきますが、左投手の速球は右から左に向かってきます。同じように立って、同じように当てに行っても、同じようには飛びません。しかし、かといって左投手の球を打つ練習をしすぎると、右投手の球に合わなくなります。左投手の球ばかり練習するわけにはいかないのです。

何をもったいつけて、フォームの話をしなかったかと言いますと、まだ日本においては、左投手のフォームは、球速が出ていれば割と欠点のある場合でも通用する場合が多いです。右投手なら、球速が出ていても、肘下がりトップや、ボールが頭の後ろから早々に離れていくフォーム、体重が前に乗り切らないフォーム等は、球速が出ていても打たれる時代になりつつありますが、左腕ですと、速球に力があれば押し切れてしまいがちです。

とはいえ、そんな左腕の中でも抜きんでた球速・成績を残している投手たちは、理にかなったフォームをしています。リバン・モイネロ投手(ソフトバンク)や、昨年の中村恭平投手、ヘロニモ・フランスア投手(ともに広島東洋)はまさにお手本のようなフォームです。なお、菊池雄星投手(マリナーズ)は昨オフにフォームを改良し、見違えるほど良いフォームになっています。なお、お手本のイメージは前々回・前回のnoteに書いてある通りです。目指すなら、やはり彼らのようなフォームを目指すべきではないか、と感じます。

●サイドに近いアームアングルのフォームについて

いわゆるオーバースローと、サイド(に近い)スローとの違いを、説明がややこしいので右腕の場合に限って考えていきます。このフォームを考える際、大きく分けて2通りのタイプのフォームがあると思います。

★アームアングルは低いが基本はオーバースローと変わらないタイプ

戸郷翔征投手(巨人)や石川柊太投手(ソフトバンク)、村西良太投手(オリックス)らが該当するのかなと思います。トップを作る際に少し身体を後ろに反らすという点、背骨と垂直のアングルで上腕を出していくという点などは同じですが、リリース時にそこまで上体を一塁側に傾けません。オーバースローですと左肘とグラブを左腰付近に落とし、右腕に縦回転の要素を強めていきますが、オーバースローほど落とさず、横回転の要素を強めるのが特徴です。戸郷投手と山岡泰輔投手(オリックス)、同じフェーズを見比べてみたのが下の画像です。リリースの際の肘の位置関係や、体重移動の方法なども、オーバースローと同じ感覚で考えていいと思います。

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★アンダースローに近い腕の使い方をするタイプ

トップができるタイミングで少し上体が三塁側・捕手側に前傾するタイプです。平良拳太郎投手(DeNA)、アーロン・ノラ投手(フィリーズ)、平井克典投手(西武)などが該当するのかなと思います。右肩より右肘が下に来て、右肘が少し、右腰や胸ラインより前方でリリースすることが多いです。トップができる際に肘の向きが三塁方向を向いているという点も特徴かもしれません。

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このタイプの投手は、左足が接地した後、下半身が強く前に体重移動する必要はないのかなと思います(リリースまでに左股関節に体重移動することは大切ですが)。いわゆる、骨盤が横に回るような動きをします。インステップして踏み込む場合もよく見かけます。

肘を曲げたまま、肘が胸ラインより捕手側に入ってくると、肘に大きな負担がかかります。その状態を長くとどめていられないので、前腕が反射的に鋭く前へ走ります。この現象を使ってスピードを出しているのではないかと思います。ですので、この状態であまり速い球を何十球も投げていると、肘には良くないでしょうから、出力を下げたりだとか、肘にやさしい変化球を多めに投げるだとか、先発以外で投げてもらうだとか、そうした工夫は必要になるかと思います。

この2つのフォームで、推奨されるべき/べきでない動きが違ってくるので、変に混ぜてしまうと、エネルギーの流れが阻害されたり、手投げになってしまうのではないかと思います。たとえば村西良太投手が現状、まったく通用していないのも、そのあたりに理由があるのではないでしょうか。

●おつかれさまでした

本日は、左投手と、サイドスロー(+それに近いアームアングル)の投手のフォームについてまとめてみました。前々回、前回と右投手のオーバースローに関して書いたので、今回は主に、彼らとの差について書きました。もう少し踏み込んだ話が見たい、という方は遡ってご確認ください。次回は、投手が故障しやすい箇所、故障する原因、および故障防止案についてnoteにまとめてみようかなと思っています。その後は少し前の話題に戻り、新しく出てきたドラフト候補についてまとめてみる予定です。

それでは本日のnoteはこれで終わりになります。最後までご視聴ありがとうございました。こういうの初めて見た!とか、また次回のnote読みたい!とか思ってくれたら、高評価、よろしくお願いします。それでは、ばいば~い。

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