鈴木みそ【マンガ家の生活】 vol.21(12月21日発行)絵の古さとは何か

目次
1.今週の日記
2.今週のオススメマンガ

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今週の日記

12月13日(日)
メルマガを書き、マックファンのネームを作って、ワインを一本空けて、気づいたら寝てた。
美味しいワイン飲むと幸せを感じるけれど、高いのが問題。(と言っても2000円までのワインしか家では飲まないようにしてるが)芋焼酎のお湯割飲んで幸せならそっちがコストパフォーマンスがいいよなあ。


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12月14日(月)

マックファンの原稿を1日。
佐渡島本読了。
風呂敷がとにかく大きくていい。
どーんと広げる。あとは流れにまかせていく。またドーンを広げる。
同じ未来を共有する。それは素晴らしく可能性のある未来である。というメッセージは大切。

仕事をやり始めると、書くことが極端に減るね。短いメルマガは仕事やってる証拠みたいなもんかしら。


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12月15日(火)

ゲットナビの原稿を1日。
昨日から、やっとクリップスタジオを使って原稿を描いているが、本当にペンタッチはまったく違うもので、とても気持ちがいい。
文字周りや吹き出しのファイルの保存が慣れないので、無駄な時間を費やしているが、このペンの気持ちよさで、すべての苦労が報われる気がする。
クリスタのファイル概念はどうしても理解できない。なんでこんなシステムを採用したのか。頭の中を割ってみてみたい。

まあ、しょうがないのでコツコツ調整するのである。

寝る前に、ストレッチポールので上に乗ってゴロゴロするのが日課になって一月ほど。
最初、全然期待していなかったので、一度も日記に登場していないが、最初息子用に買って、全然使わないので、嫁が寝床に持ち込んで、オレのベッドの横に、やけにでっかいふにゃふにゃした丸太がある。という状態になっていました。
なにこの丸太は。
すごくいいから乗ってごらんなさいな。と言われて、懐疑的な意識で毎日乗っていたら、肩こりが一気に良くなりましたよ。信じられない。
これ、ウレタンの丸太が5000円以上するらしくて、ぼったくりやん。と思ってたけど、効果を考えたら安いわ。
ただ上に乗って毎日10分くらいゴロゴロするだけ。
マッサージ機が好きで、もう3回くらい買い換えたけれど、実はこれが一番効果がありました。いいですよ。肩こりに悩まされている人は一度も試してみてください。すげえから。


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12月16日(水)

テニスの納会。毎回4人集まるかギリギリだったりするが、今回は20人近いメンバーが集合。
いつもの山本直樹プラス、原作者の鍋島さん、そして久々のとり・みきさんが登場。
「とりさんお仕事は終わったの?」と全員がバラバラに聞いていて可笑しい。
律儀に「もう12月も中旬になると、年末進行のお仕事の多くは終わって、のんびりし始めるんですよ」
と、それぞれに丁寧に答えるとりさん。
お昼から4時間打って、その後中華で飲みっぱなし。
となりのとりさんに「そういえばお仕事は終わったんですか」とふると、
もうこの時期になると年末進行は終わってのんびりし始めるんですよ。と答える。
次に会った時も忘れずに聞かないといけない。
「プリニウス」だけでも相当な時間ががかかる絵なのに、カラーの4ページという新しい連載も始めた。
「オレはきついって言ってるのに、マリさんが「大丈夫できるできる」って始めちゃうんだよ」とぼやいていた。
ヤマザキマリさんは手がものすごく速いから、やれるっていうんだろうなあ。
2人で共同して漫画を描く、という難しさは色々あるんだろうが、アシスタントを使いにくい。というのをとりさんから聞いてなるほど、と思った。
普通の漫画はたくさんのアシスタントによってバックや処理がされている。
プリニウスでアシスタントを使うと、共同漫画家との違いがわからなくなるので、結局二人でバックも描くことになってしまうので、やたらと手がかかる。ということらしい。
とりさんがTwitterでつぶやいていた。
「漫画家には絵を描くのが好きな人と嫌いな人がいる。自分は後者である」
オレもです。

2次会で、人狼の話で盛り上がるが、やってみたいーと盛り上がる人とまったく興味が無い人に真っ二つに別れて、テンションに大きな差が出るところが面白かった。飲み屋で話す話題としてはあまり適切ではないかもしれない。
次はSFの忘年会だ。毎日飲んでるので、そろそろお酒を抜く日を作らなければいけないのではないか。


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12月17日(木)

二日酔いでフラフラしながら、渋谷で就職漫画の最後の打ち合わせ。
漫画のネタというより、契約についての話。
1月から始めるこの漫画は、半分はイーブックジャパン、もう半分はITのベンチャー企業が出資するもので、クラウドファンディングをしかけて読者から資金を調達する。という新しい仕掛けをするのです。
漫画の原稿料ってけっこうかかるので、そのリスクをどうやって分散させようか。という話で、これから漫画のクラウドファンディングを増やして行こう、という試みなので失敗することは許されないという状況なのです。
一口千円から、企業向け50万円、というものまで並べて大々的に広告する予定。
まだ漫画は真っ白だけどね。

話をしているうちに、漫画のネタをたくさん拾えた。さあ、もう描くだけ。やらねばの娘。


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12月18日(金)

ジムで筋トレ2時間。
3周年の記念としてクジを用意しました。というので、引いてみたら「おめでとうございます。1カ月無料券が当たりました」
おお! 実質7000円が当たった。地味に嬉しい。
どのくらいの確率で当たるんですかこれ。
と聞いたら、200ちょっと作って、アタリは5枚なので、けっこうレアですよ。
とお姉さんが教えてくれた。よし、ついてる。
一昨日、娘から連絡が来て、大学で1割しか合格しない、カナダの大学の留学テストに合格した。という連絡が来ていたが、どうもツキが回ってきたらしい(笑)
ついているなどというと、必死に勉強した娘に怒られそうではある。
娘は来年1年間、カナダにいくそうですよ。交換留学だから余計なお金がかからないのも嬉しい。
まあ、大学も就職もそこがゴールではなくてスタートなので、楽しく頑張れればそれでよいのだ。そういえば今回の就職漫画は、娘に教える就職の実態。というのが最初の企画だった。

夕飯はチリコンカンとコールスローを作ってみた。毎週作っていたらそろそろ飽きてきた。家族の売れ行きも悪い。
もらったワインがまずくてがっかり。1000円くらいでも美味しいものは美味しいのになあ。
ぶんか社の漫画雑誌から、料理の読み切りの仕事が来た。忙しくなるともっと忙しくなるの法則というのがあり、来ない時はさっぱりなのに、忙しい時に限って仕事の依頼が来ると漫画界でよく言われる。魚の釣れ方もそういう感じがあるかもしれない。
来年3月あたりの締切というので、ちょっと考える。
釣れ過ぎた魚は干したり漬け込んだりして保存を考える。漫画も暇なときに描いて保存しておいたらどうか。と言うだけは言ってみる。できっこないのに(笑)


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12月19日(土)

週末になると、いろんなイベントが行われる。今日は、鷹野凌×福井健策さんによる、著作権についての公開イベントが渋谷で行われるのだが、いよいよ原稿に火がついてきたので出かけられそうにない。
福井先生とはまだ面識がないので、一度ご挨拶をしないといけないのだが。

月刊スパの『今年最初に読みたい50冊』に、チョイスした12冊をメールする。6冊が選ばれたので、紹介を150字程度で書く。
このメルマガで知った本も入ってますよ。来年最初の号だそうです。お楽しみに。

ネームをみっちり。もうPCで作り始めよう。
先週借りた新譜をエンドレス再生しているが、カラオケで歌う曲が決まってきた。
ただ、エレファントカシマシの「RAINBOW」はなんじゃこりゃー、というくらい難しい。
歌えないかなー。毎日練習してるが、高すぎて音がでない部分が結構ある。裏声ですら出ない。あれはハイFかハイGではないだろうか。
あー、カラオケ行きたい。もう2ヶ月まるまる行ってない。なんということか。

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12月20日(日)

ネーム。キャラクターを何度も練り直す。あーでもなくこーでもなく。答えのない問題の正解を探すのは大変。正解があるのかどうかもわからない。
ここまで考えるともうどうでもいいかとも思ってくる。どうだろう(笑)
夜、気分転換にワインを開ける。いや毎日開けてるけども。
Amazonプライムの映画に、「ロボコップ」の最新版がアップされている。これ一昨年劇場で見たんだが、傑作ですよ。

近未来の世界は、完全なロボットの警察を作る技術があるが、アメリカは法律によってロボット警察を認めていいない。
大切なセキュリティをロボットにまかせてはいけない。とアメリカの民衆は信じているが、第三国では米国製ロボットによる統治が進んでいる。

マフィアとの不正を暴く刑事が、マフィアによって大怪我を負ってしまい、ロボット技術によって蘇る。人間とロボットのキメラ、ロボコップの誕生である。
古い事件から最新の情報まで、犯罪情報は全てインプットされ、虹彩をチェックして瞬時に相手を確認するロボコップは、あっという間に犯罪者を捉えまくる。
ところが、人間であるがゆえに、ロボットに比べて反応時間が遅れる。という問題点が発生する。そこで脳にある仕掛けをするのだが、ロボコップの苦悩を上手に書き出していく。
とにかくシナリオが絶妙で唸った。
未来の自動運転車の問題はこんなところに出てくるかもしれない。
これはすげえ面白いから見なさい。と嫁に見せたのだが、ロボコンは地方予選から全て録画して見ているロボット好きの嫁が、これはダメ。全然おもしろくない。と吐き捨てた。
えええ? どこがダメよ。としばらく話をしてみて、見ている部分が全然違うことに改めて驚いた。

奥さんや子供は、ロボット企業(悪役)にもっとアプローチの方法があるはずなのに、変な動きしかしない。シナリオありきのためにキャラクターの整合性が壊れている。だいたいロボットに対する愛情がなさすぎる。
という主張。
いやあ、それを言い始めると、ほとんどの映画が、シナリオのために端折ったり、おかしな動きをすることはあるんじゃない? インディージョーンズなんて、潜水艦に潜り込んで、次のシーンはドイツの港だぜ。どうやって潜水艦で生活したのよ。みたいなことはあるじゃん。
という説明はしたが、一度引いてしまうと、もう物語に入り込めないようで、あんなに面白い映画なのに、クソ映画扱いされて、実にもったいないことです。それぞれの考えるリアリティの違いはかなり面白い。
漫画も映画も上手にウソをつくことが大事で、どこかで「うそじゃん」「作り物じゃん」と気づかれてしまってはいけないのである。

体重がじわじわ上昇してきた。飲み過ぎである。来週はちょっと絞ろう。

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オススメ漫画

【大塚 一郎】
早速ですが私の部屋の本棚に見えるおすすめ漫画を紹介します。
趣味の関係上SFばっかりですが(笑)

「セントールの悩み」
4本足ではなく6本足で進化した脊椎動物の世界。
その余分な足によりケンタウルスや翼を持つ形態など、
多種多様な姿をもつ様になっている人類。
そんな世界のお話です。

女の子が可愛いので萌系で売って行こうとしてるみたいです が、所々に表現されている
ディストピア的な不穏さがいいアクセントになっています。
SF好きにも可愛い女の子好きにもおすすめできる一作で す。

「ベントラーベントラー」
宇宙人が確認されたはいいけど、正式な交流はさ ておかれている世界。
だってコミュニケーション不可能な異星人の道具の漂着とか あるんだもの。
さあ人手不足の中まだ話の分かる異星人と一緒に解決しよ う!

メカや異星人のデザインが独特。
話もとても読ませて最後ホロリとさせる全三巻なのがもった いない位。
SFが得意なアフタヌーンの連載陣中でも出色の出来です。

「宇宙家族ノベヤマ」
宇宙からのメッセージを解読できるようになった地球人に送 られてきたメッセージ、
それは特別な配列のDNAを持つ「メッセンジャー」を 使者として送り出してくれというもの
日本からは仕事人間で崩壊寸前の家族をもつサラリーマン野 辺山雄一、その息子がそれと選ばれる。
地球人の代表として、いざ宇宙家族出発!

地に足の着いたSFを書かせたら天下一品の岡崎二郎の隠れ た名作。
宇宙文明というマクロな世界と家族というミクロな世界、そ の両方が呼応して
とても面白いすこしふしぎ作品として仕上がってます。

以上マイナーかどうかちょっと微妙ですがこれらが私のおす すめです。

【みそ】
おおー、SFですね。
宇宙家族ノベヤマしか知らないなー。どれも面白そう。
今年のオススメ本、今年のうちに。ということで、ネームができたらまんが喫茶にこもってバリバリと未読を処理しないといかんですね。正月休みも、海外をやめたので時間あるし。
オレのSFのおすすめとしては、
星野之宣先生の一連の作品は大好きですね。
今ビッグコミックでやってる、超能力ものはいまひとつというか読むのをやめましたけど(笑)
宇宙の変な生き物が出てくるやつ描いて欲しいなー。「ベムハンター・ソード」みたいな。

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【jmz】
最近知った昨年発売のオススメ漫画をオススメしたいと思います。

となりのロボット(西 UKO)

出張版>http://tap.akitashoten.co.jp/comics/tonarino/1

出張版を読んで頂ければわかると思いますが、百合物なのです。
ですが、それはストーリー上そうなっているだけで、ロボットと人間の触れ合いとスレ違いと再会が素敵に描かれています。

SF好きの自分にとってかなりのストライクでした。
人によって好き嫌いが分かれそうですが、SFファンならぜひ読んで欲しい一作です。

【みそ】
線が美しい漫画ですねー。
これは読まないと。たまたまのSFつながり。
百合にしても、エロ系の場合、絵がキレイであることはめちゃめちゃ重要ですね。そこがSFも大事だったりします。
話は変わるんですが、よく年配の作家が「絵が古い」などと言われたりしますが、あれは線が多すぎるからだと思ってます。
目の下に線を描くか描かないか。ほっぺたに斜線を入れるかどうか。みたいなことを細かく見ていくと、古い絵、というものは、余計な線がたくさん入ってます。
それが作者の持ち味だったりするので、それでタッチが完成している作家は、線を減らすことが難しいわけです。
今っぽい絵は、影をつけることで、凹凸を想像させてます。
線を減らせないのはなぜか、というと、ぶっちゃけ絵がもたないんですね。たくさん線を増やせば、それだけで安定感は出るので、書いてて安心です。
昔の漫画でも線がシンプルな人は、モダンな感じがして、古いというイメージではないですよね。
つい書き込んでしまって古くなる。と考えているので、自分の漫画はあまり黒くならないようにしてます。

そろそろPCで書いた漫画ならでは、という線が出てくるかなーと思ってみてますが、主線が薄くなってきて、段々3Dデータのようになってきたかな。という印象がありますが、どうでしょう

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そんなわけで、今週はこんな感じでした。もう21日ってあとちょっとでクリスマスかよ。
日本ではケーキを食べるけれども、あれはキャバレーに行ったお父さんたちに、家族のためにケーキをもたせた。というところから普及した。というのは本当なのかしら。
もう何年もオレはケーキを食べてませんが、そういう風習や習わしに興味がないからです。
まあ、みんなが楽しくやっているのなら景気も上がっていいんですけどね。(ケーキとかけてみた)
んじゃまた来週ー。

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