鈴木みそ【マンガ家の生活】 vol.17(11月23日発行)イベント成功


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目次
1.今週の日記
2.Q&A

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今週の日記

11月16日(月)

マックファンのペンをやろうとしたが、どうも乗らない。いかんことです。
そろそろ新連載のネームもやらないといけない。尻に火がついてからが、本当の締め切りです。
なんてことを言ってちゃいかんのだが。
昨日適当に買った千円のワインがかなりうまくて驚いた。
これは箱買いか。シラーが好みなのかもしれない。

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11月17日(火)

さらに仕事進まず。
いろいろマンガを読むが、やっと「山賊ダイアリー」がグルメマンガだと気付いた。
「ゲコとヨッパライ」が食べ物のネタで、ワイドショーのレポーター的リアクションで美味しさを表現しようとしているが、今ひとつうまそうではないのに、山賊ダイアリーのキジが、シシが、スッポンがなんと美味そうなことか。
ああ、そうか。ポイントは絵の細かさや上手さにあるんじゃないんだ。
そこを書けばいいのか。
と分析できたが、結論はしばらく寝かせてから、イベントで話してみよう。

ニュースらしいニュースを見てない。

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11月18日(水)

マックファンの原稿、夜になってやっとあがった。
amazonプライムが、ついに音楽聴き放題サービスまで始めた。
ビデオに続いて音楽聴き放題がついて、お値段変わらず、年間3900円はなんという価格破壊。
ミュージシャンはこれで利益が出るんだろうか。前から書いている通り、マンガの読み放題サービスが始まったら、ごく一部売れてる人を除いて、ほとんど討ち死にするだろうと思われる。
エンタメコンテンツはこうしてフリー化に向かっていくのは避けられないんだろう。
音楽は昔はお金持ちのスポンサーがついてやっと食べられた。そこに戻るのかもしれない。というドリカムの中村正人インタビューが頭に浮かんだ。

これ面白いですよ。
ドリカムってめっちゃ売れるメジャーバンドだと思っていたけれど「濃いファンがいない」と本人の分析が非常に興味深い。

歌にファンがついているけれど、ドリカムにはいない。そんな悩みがあったとは。
これは「ラブとライク」の理論で分類できる。
東北ずん子のプロデューさーの小田さんが言っていた理論だが、作家にはラブで繋がる濃いいファンと、ライクで繋がる薄いファンがいて、作家ごとにバランスが違っている。
ベストセラー作家は、ライクがとても多いが、マイナー作家はラブのファンが、比率的多い。
限定版などの高額商品を買ってくれるのは、もちろんラブなファンなので、ライクが多い作家より、マイナー作家の方が、限定版が刺さる。というような話である。
もちろんメジャー作家の方が、ラブのファンの絶対数は多いので、限定版商売は成り立つが、ラブが多いひと、ライクが多いひと、はなんとなくわかりますよね。
というところで盛り上がった。
おたくっぽい作品はおたくラブを集めるのでわかりやすいが、例えばビッグコミックに載っているような、30万部を超えるような作品はどうだろう。
釣りバカ日記は映画を楽しみにしているファンが多いが、それはマンガのファンとは別れるだろうし、釣りバカ日記限定版フィギュアはさすがに売れそうにない(笑)
おたく以外にラブがあり得るのか。そのあたりも考えていくと面白そうだ。
ご意見がある人は、メールくださいね。

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11月19日(木)

ジムでマシンの後、喫茶店で2日後の作戦を練る。
30分ほど自己紹介的に話すキーノートを作るのだが、何を話そうか。
ふとテレビの「しくじり先生」が頭に浮かんだ。
あ、これでいこう。
Kindleの成功者と言われている割には、それほど楽な生活になっていないのはなぜか。
月刊誌の連載が無くなったからで、それは出版社からみたら独立した作家をなぜ応援するのか。という方向であり、漫画自体は一般人には受けない内容で、書店が積極的にプッシュするものではない。
そこが「みそのしくじり」である。という形で作ればいいか。
方向が決まったので安心して酒飲んで寝た。

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11月20日(金)

水曜日のテニスが雨で金曜に順延。
5人しか来なかったが、4時間ずっと打っていたので、けっこう体力を消耗した。
今日、新連載のネームをやっつける予定だったがそれも順延。
お話の方向はだいたい決まったのだが、キャラが弱い。
みそのしくじりとして、キャラクターが弱いというのを入れるか。

そして、マンガ家自体を売る。という考え方に大きな欠点があることに気づいたので、これを明日のテーマにすることにした。
マンガ家はタレントと根本的に違う。
舞台で話せるマンガ家には、それほど大きなニーズはない。
マンガ家はプロデューサーであり、タレント事務所の社長のようなものだから。
タレントとは漫画のキャラでなくてはならない。
オレは秋元康であって、AKBではないのだ。そこをずっと間違えていた。

もっと細かく言えば、マンガ家は映画のディレクター、監督であり、作品に対しての全責任を持っている。
出来上がった作品をどの映画館でかけて、どのくらいの儲けが出て、という仕事は「ゼネラル・マネージャー」や、「プロデューサー」の領域である。
一人でそれを全部やる。というのが今のマンガ家に望まれているのだとすると、それは煩雑になり、作品に対する集中力が落ちてしまう可能性が高い。
そのフォローが「編集者」のお仕事なのだ。
マンガ家は「アーティスト」であり、作品を作ることに集中したい。
これがマンガ家が出版社から独立しない最大の理由なのだった。そこに全然気づいてなかった。
さてその後は、イベントにやってくるプロの皆さんの意見を聞いて、広げていければいいかな。

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11月21日(土)

MDCイベント本番。
の前にキーノート制作。さくさくと作り、ちょっと足りないかなーという部分はメモで埋めることにする。30分話した後は、皆さんがたくさん話してくれるので、そこに対応することでなんとでもなるだろう。

五反田の駅前のうどん屋に並んで食べた。なるほど安くて美味しい。これは並ぶわな。

イベント会場に行くと、有料の入場者が9人。関係者が6人だと言う。思ったより多い。
このメルマガの読者がひとりやってきてくれた。
出版社の電子書籍部門の人なのだが、「みそ先生がメルマガを書くテンションが下がらないように、やってきました」
と泣かせてくれる。いや本当ですよ、そういう部分がとても大事なんですよ。すごい嬉しい。佐々木さんありがとうございました。
プロの漫画家が4人、漫画原作者1人、編集者が3人、ゲームのプロデューサー、電子書籍会社の代表、声優プロダクションの代表、IT系ディレクター、などなど、全員業界関係者で、腕に自信を持つ人のよう。

この先、どのようにマンガ家はマネタイズしたらいいのか。ベテランは、新人はどうやって売るのか。雑誌が無くなった後、ウェブで食べられるのか。
という内容でフリートークを投げかけたら、みなさんガンガン意見を出してくれる。
「鈴木みそを救う会」なのか(笑)
漫画はまだまだ可能性があるのに、商品化できていない。

◯漫画はキャラクターである。ので、いかに売れるキャラを作るのか。その条件は。
◯作ったキャラでどんな商売が考えられるのか。物販で有望なものは。
◯企業や地域に対しての売り込み。
◯イベントプロデューサーの育成

などの内容がブレーンストーミングされていく。
具体的なアイディアがいくつか出てきたので、また今日から始めてみようと思う。

ネットにおける作品の売り方として、多くの人に無料で見せることで、裾野を大きくして山を高くする。(有料でも読みたい読者を増やす)という方向に間違いはないが、山が「大きいけれど低いドリカム」より「小さくても高い」尖った山の方がマネタイズしやすい。この尖った角度とはなんであろうか。
「尖った山は、炎上である」
というすごい結論が出た。
不特定多数が見る、安定したものではなく、多くの人がまゆをひそめるようなもの。テレビでは絶対に流せないようなもの。

そこに「有料」の価値がある。
つまり「ヒモザイル」こそ、有料課金モデルとして正しい。のだという。

いやそうだったのかー(笑)
ということは「あんたっちゃぶるなう。」はとてもいい方向で、メジャー誌では決して書けない危ない漫画。それなら月500円とか普通に払ってくれるのではないか。とひらめいた。
今DMMで「あんたっちゃぶる」のような漫画をやらないか。という話が水面下で動いているのだが、ものすごくやばい内容で、出版社なら回収騒ぎになりそうなところまで書く。というのは可能なのかな。もともとゲーム業界は書けないような話が多いので、そこは苦労しないような気がする(笑)
そっちはそっちで訴訟リスクが跳ね上がる問題もあるのだが。

トークが終わって懇談会。その後の飲み会まで、一日中頭が回転しっぱなし。
このくらい毎日使ったら賢くなるかもしれんね。
終電前になんとか家にたどり着いた。

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11月22日(日)

マシントレーニングの日。なのだが、がっくり疲れて起きられない。
やっぱりあれだけ頭を酷使すると、筋トレする気にならないんだなあ。
もう昼から酒飲むことにした。
ワインを一本あけてダラダラ。日記を書く気にもなれないので、ぼんやりFacebookを眺めたり。
そういえばTwitterとFacebookの使い分けが自分の中で出来てきた。
Facebookの方がニュースや記事を拾う場で、Twitterはバカバカしい小さなネタを見つけては流す。というカジュアルな場になってきた。
ほかの人がどう使っているのかはよくわからないが、ここにInstagramやピンテレストをどう絡めていけるか。

読者とのコミュニティを考えると、Facebookを閉じた形にして、有料メンバーだけに公開していく形がローリスクでよいと聞いた。
なるほどね、そのやり方があったかー。
始めようかな、サロン。
だけど、それって一度入った人はずっとメンバーなのだから、課金を辞めたかどうかをチェックしてメンバーから外すのはどうやってるんでしょうね。全部人力かな。100人くらいならいいけど1000人超えたらやってられないんじゃないかしら。そんなことは超えてから言うことですかそうですか。
このメルマガも700人台で足踏みしてますよ。やっぱりキャラが更新しないといかんですか。
ナナ「こんにちはー。ナナです」
みたいな。
それってどうなの。需要あるのかしら。ちょっとオレ昔からそういうバーチャルなキャラ萌えってどんびくほうなんですけどねー。でもマンガ家は前に出てもしょうがないって結論でたしー。
色々考えていきますよ。連載もやりますよ。めんどくさいけど(笑)

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Q&A
今週のQ&Aは、おたよりなし。

たよりのないのはいいたより。
違うわっ。
違うから。
色々オススメしてくださいよ。ここでの会話を増やしていって、コミュニティを大きくしていく。という作戦なのに来ないかメール。うーん。

じゃ、オレがオススメますが、今週のオススメ漫画はなんと言っても「エバンゲリオン全巻セット」ですよね。

まさかの1冊50円。全部買っても700円。
こんなん買っちゃうよね。
これものすごく売れてるけど作者に何%入るんだろう。いいのかもうお金なんて(笑)
まったくそういうことを考えないで漫画だけ描いていたい。のかと自分に問えば、そうでもない。やっぱり考えちゃうなー、好きなんだね、ゼネラル関係が。おぜぜが。

じゃあまた来週ー。メール、お便り感想、オススメ、もろもろ送ってください。

misokichi@misokichi.com

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まってまーす。

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