鈴木みそ【マンガ家の生活】 vol.45(2016年6月23日発行)限界を超えたところにあるものは

6月13日(月)の続き

夜2時半まで下書き。まだペンに入れない。

風呂に入って布団に転がる。

軽くめまいがする。

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6月14日(火)

朝6時半起床。疲れているのにドキドキして長い睡眠に入れない。

しかたなく机に向かうと、どんより眠くてだるくて、ただ起きているだけの泥人形状態。

ネームで神経使いすぎた。

ここからがペン入れ本番なのにもうMPが残ってない。宿屋でもっと寝て回復させないといかんのに時間がない。なにかいい薬物はないかな。

午前中頑張ってゲットナビの下書きをいれる。作業くそ遅い! 昼インスタントラーメンでお腹がくちくなったところでソファで仮眠。30分の予定だったがまったく回復しないので、1.5時間に延長。

なんとか起き上がった。

植物に赤と青のLEDライトを当てると収穫二倍。という記事をシェアする。オレも赤いライトを当ててお仕事二倍。とならないものか。ならんか。

THETAをネットで注文。同時にハコスコ(VRを映せる簡単なビューワー)とストラップと自撮り棒を注文。

お買い物をしている間は魂が癒される。こうして忙しい漫画家は買い物中毒になってしまうのだろう。このカメラ使えるのはいつだろう。再来週くらいか。

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6月14日(水)

頭がぐるぐる回りだして動悸がおさまらない。

色々限界なので風呂で汚れを落とし、夜11時に布団に潜り込む。

8時まで寝た。

久しぶりにたっぷり睡眠。体のあちこちが痛い。

頭がパニックから少し立ち直った。寝るって本当大事ね。

仕事を残してしまったゲットナビペン入れと仕上げ。午前で終わらず夕方までかかった。そこからkatana(内定ゲームを連載しているウェブ雑誌)の最終号となる表紙のイラスト。夜アップ。

マックファンの下書きアップ。

ここでじっくり時間を見てみると、とても間に合わない。うーむ。どうすればいいかな。とりあえずマックファンを上げてから考えよう。

昨日注文したハコスコが届いた。

カメラがまだ来ないが、このハコスコにiPhoneを差し込むだけでVR映像が楽しめるはずなので、いくつかアプリを入れてみた。

「ハコスコ」

「mobileVRstation」

おおー、すげえ。2千円ちょっとでこの玩具めっちゃ遊べる。

エロの立体VR映像もあるんじゃね? とウェブを検索してみたが、メアドを登録しろだの、まだ試験中だの。でめんどくさい。今時間のかかることはやってられない。

(もうすでにかなりやっているがw)

簡単にワンクリックでダウンロードさせてほしいのに。

月曜朝に出したSurfaceが、もう帰ってくるとMicrosoftからメールが。めっちゃ仕事早い。

これは新品に変わったのでは!? 明日届くので楽しみに待とう。

カメラ(THETA)も発送したとメール。あー、これで締切さえなかったらカメラ持って自転車であっちこっちでかけるのになー。温泉行きたいなー。温泉に入るVR映像はないか。

そんなの見て癒されるかどうかはわからないが。

マックファンの下書きをしながら限界を迎えた。今日はここまで。

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6月15日(木)

2時半に寝て8時半起床。6時間睡眠。

これくらいは寝ないと後半持たない。土日は2時間くらいしか眠れないはずなので、今は体力を回復させながら進めないと。

昼、マイクロソフトからSurfaceが届いた。

画面に貼ってあったノングレアの保護シールと、裏面につけたゴープロのステッカーは無くなったが、ピカピカの新品に生まれ変わっている。すぐにバックアップデータを同期させようとしたが、それほど多くのデータは入っていないので、クリーンインストールしてあるこれをそのまま使うことにした。

アプリをちょこちょこ入れながら様子を見ていると、とても安定している。スクロールがスムーズで、以前のSurfaceにあった、引っ掛かる感じがない。これは!

Chrome、ClipStudioを入れてみたが、まだ落ちない。何度もカバーをしてスリープさせてみても、問題なく瞬時に立ち上がる。

おおー、このマシンの安定具合は何者か! ペンの書きごこちも試してみたいが、そんなことよりペンを使って書かなければいけないものが山積みなので、お仕事用マシンに向かう。

夜までかかったが、なんとかマックファンの原稿を書き上げた。

Surface、スリープを繰り返しているがまだ一度も落ちない。すげえ。

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6月16日(金)

5時半就寝、7時半起床。って2時間しか寝てないわりには頭が元気。最後のアドレナリンが放出されているのだろう。

ClipStudioで下書きが進んだ前半22ページと手元にある紙のネーム24ページを眺める。とてもじゃないけどもあと3日で終わる量ではない。どうしたものかと考える。

逆に何ページだったらできるだろうか。

36ページも厳しい。いいところ28ページぐらいだろう。

2つのやり方が考えられる。

1つは前半22ページだけをきっちりアップして残りを次号に回すという方法である。

と言ってもkatanaは最終号なので次号がない。とりあえず最初の発売日は前編だけを入れて、数日後に最終話をアップロードするという「時間差入稿」は可能なはず。

これならば全46ページを完璧に入れることができるが、最アップロードするまでに1週間ぐらい間が空いてしまう。

それを読者は、編集者は待つことができるだろうか。というのが問題。

もう一つは、再構成して短くまとめてしまう方法。

削りに削って最終的に26ページぐらいに落とし込むやり方である。

物理的に書く時間が少なくてすむメリットがあるが、どうしても内容が薄くなってしまう。

さてどちらを選ぶべきなのか、自分で決めることはできないので、大きく深呼吸をして編集に電話をした。

どうしましょうか。

突然そういういわれても編集も困るのであるが、編集部で相談した結果「後者でいきましょう」という話になった。

単行本化のときには、オリジナルの長いバージョンで出すことにしましょう。と言うことなので、前半を完全に作り直してしまうと、単行本の時に1から書き直さなければならない。それはそれで大変に手間である。

コマや見開きはそのまま使えば残りを書き足すだけですむ。映画で言えば、撮影のし直しではなく編集を変えるだけだ。

やってみると、思ったより簡単で、ざくざくとページが減っていく。それでも話の筋が通るように、1部の吹き出しのセリフを変えていく。絵を変えるのは大変だが、文字はいくら変えても大丈夫。

前半22ページあったものが、あっという間に10ページになった。

むしろ無駄なコマがなくなってリズムがよくなっている。

さぁここからが勝負だ。

後半はネームの密度も高く、切る場所が少ない。クラウドファンディングで「漫画に出る権利」を10万円で買ってくれた人が、あとひとり残っていて、彼も重要な役柄として漫画に出さなければいけない。

使えるページ数があと14ページしかない。

集中してネームを切り直す。息を止めて物語に入る。残り8p、残り4p。やっぱり話が終わらない。ちょっと増やすしかない。2p増やして、なんとか収まりをつけた。

再構成した最終回26ページができあがった。

ふうううう。

いやなかなかよくできてる。まるで最初から26ページの予定だったかのよう。

出来上がったとは言っても、真っ白なページにコマが割られて文字が載っているだけのものである。ここから2日半で26ページを書かなければいけない。よしやるぜやるぜ。

Surfaceまだ落ちない。ソフトが立ち上がる時間も感覚的に早い。まったく別のマシンだ。原因はもはや知ることはできないが、メモリが怪しい気がする。

ともかく、今までSurfacePro4を散々腐してしまったが、名誉回復させる義務があるので、ツイッターとフェイスブックに書き込んだ。

ーー

絶賛不眠ペン入れ中ですが、これだけ書いておかないと。

Surface、月曜に修理に出したら、木曜に新品になって帰ってきました。

画面を触った瞬間に、あれ? スクロールがひっかからない。と驚いたんですが、それから実験的にスリープを繰り返してますが、一度もフリーズしない! アプリが使用中に落ちない。

あの暴れ馬が!

つまりひどいと思っていたのはSurfaceの設計や思想ではなく、初期不良品だったからでした。

(初期不良に関してはかなり疑っていたんですが、「Pro4はスリープでフリーズするけれど、これで治った」「マシンを交換したけれど改善しなかった」

という書き込みをネットのあちこちで見たため、仕様なのだろうと諦めてしまいました)

いろんな部分を試してみないとわからないのですが、今までの「Surfaceクソハード」発言をここに謹んで訂正させていただきます。

大変失礼しました。ハードの回収から代替機の発送まで全て無料で素早い対応。Microsoftを相当見直しました。過去の発言を遡って注釈をつけます。

ーー

下書きをしている時間がないので、ほとんど真っ白の状態でペン入れ。3ページまで進んだところで12時を回ったのでシャワーを浴びて布団に潜り込んだ。

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6月17日(土)

見通しの立たなかった状態から、ペン入れ作業まで進められた安心感で、久しぶりにぐっすり眠った。

朝6時半起床。今日半分まで行かないと相当厳しい。でもいけるはず。

食事とトイレ以外のことはほとんどしていない。pcだけが外界と自分をつないでいる。Windows(窓)とはよく言ったものである。

ここを超えれば、英語をやりジョギングをしてボイトレもできるようになる。映画も見れるし温泉も入れる。という未来を夢見ながらひたすらペン。

夜。つらさがピークを打った感じがした。なんだろう。だんだんつらくなくなって来た。少し楽しく感じすらある。ランナーズハイか。どこか脳みその一部が壊れたのだろうか?

ストックホルム症候群のように、将来なにか見つかるかもしれない。長いこと軟禁状態にある漫画家は作業が辛くないと信じる心理状態になる。みたいな。

深夜2時まで作業。さすがにぐったりしたので1時間仮眠。

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6月18日(日)

iPhoneのタイマーが1時間を告げるが、体が起きることができず1時間睡眠延長。この延長は5000円になります。と言われても払わざるをえない。どこのキャバクラか。

一応予定通りに作業は進んでいる。後半になるほどコマが小さくなって人物の絵が増えるので時間がよりかかる。

ただ、どう見ても後半の方が絵がいい。しりあがりに良くなっている。

そうか。今回は、いつもより人物をじっくり書き込んでいるので、描いていて楽しいのだ。慌てて粗い絵を続けると落ち込んできて、描くつらさが増えるが、これはうまく描けたと思うとつらくない。

まだうまくなれる、と思って工夫すると、何十時間ペン入れを続けても苦痛に感じないのかも。我ながら自分の学習好きに驚いた。

朝3時。

いつまでも書き続けられるような気がしていたが、体力の限界がやってきたらしく、目を開けていられない。30分仮眠。

を3セット。1,5時間も寝てしまった。間に合うのか。

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6月19日(月)

まだ真っ白なページが8ページ。でも18ページまではできた。頑張れ後少し!

デッドラインの時間はどのあたりだろうか。

主人公の五月の髪型をもっと簡単にしておけばよかった。とペン入れ中に何度も思う。次からは全員丸坊主のキャラにしようと固く誓う。寺か。

3時半。

ペン入れ終わった。ここからトーン処理そのほかに突入。もう9合目まで来た!

金曜以降は恐ろしく予定通りに進んでいる。この読みが一週間前にもあれば! 

夜9時原稿アップ! 

終わった。全部終わった。

髪の毛もひげもボーボーで、体重だけが増えている。食べることくらいしか楽しみがなくなるので、仕事が厳しくなるほど体重が増えてしまう。まあ、いいや。終わったから。

久しぶりのビールをカシュ。あー、嬉しくて涙が出そう。

そういえば先週ゴミを出した嫁が「酒瓶が少ない!」と驚いていた。今週も少ないぞー。

ビールを飲みながら何度も頭が眠りにかかる。

こんな生活そろそろやめる。ちゃんと時間を区切って仕事するんだ。次からは。

これで月刊誌のお仕事が終わるので、次のお仕事をとらないといけない。夏過ぎたら考えよう。今は、とりあえず、寝る。ではみなさんおやすみなんしょ。

メールの返事はまた来週ー。

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鈴木みそ

【日記】漫画家の生活 2016年1月〜

メルマガ「漫画家の生活」note版  2016年1月〜12月

コメント3件

ボクも漫画家目指しています!
参考になりました!
頑張って下さい!!
あまり参考にしないほうがいいんじゃないかと思います。頑張ってください。漫画家は過酷ですから。
鈴木みそ さん
お身体に 気をつけて下さい!
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