鈴木みそ【マンガ家の生活】 vol.25(1月24日更新)クラウドファンディング200万円超え感謝

目次
1.今週の日記
2.感想メール
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告知【クラウドファンディングやってます】

1月17日(日)

土曜日深夜から朝方にかけて、PCで下書きからペンの8割まで進めた。
マックファンの原稿を。

頭がもうろうとしてきたので、冷えきった足だけ風呂に入れてすぐ仮眠。ドロの中に体が沈み込むように布団に入ったと思ったら、iPhoneがブルブル震える。
もう3時間経ったのかよ。
全然寝たような気がしないが、少しだけ体力が回復した気がする。
PCの前に座って昼12時マックファンの原稿をやっつけた。出来は悪くない。ペンがのっている感じ。
さあ、コーヒーを飲んで「内定ゲーム」の原稿を見る。
まだ真っ白なページが推定18ページほどある。半分まで来てない。相当時間をかけてここまで来たのに、富士山で言えば9合目くらいにいないといけない時間に、まだ5合目に達していない。
えーと、最後の締切が、イベントだとすると火曜日の夜。
電子雑誌化の処理などに半日はかかるので、火曜の朝には耳をそろえて出さないといけない。あと46時間くらいか。
ページ2時間で描けばなんとかなる。
ギリギリ温泉やナナのリテラシーは、平均ページ1.5時間で描いていた。
つまり余裕である。楽勝である。
ここまで100時間くらいかけて14ページしか進んでいない事実は封印することにした。

夜、夕飯の時に、ツマミのようなおかずが並んで、ご飯が出てこない。冷蔵庫からビールを出してきたりしていて、事の重大さをヨメがまったくわかっていないことに愕然とする。
昔は締切直前のピリピリした空気を体から発していたので、何も言わずとも緊張感が伝わっていたものだが、1年長い原稿を書いていなかったせいか、そういうオーラも消えてしまったらしい。
ここで家族を心配させてもしょうがないので黙々と食べて仕事場に戻る。今日は布団に入れるだろうか。
ペン入れのペースが上がってきたが、まだ2ページしか進んでいない。ページ3時間かかっている。このペースではいけない。もっとあげないと。かなり目が遠くなってきていてパソコンの線がぼやける。ここからは体力勝負である。どうだろうか。


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1月18日(月)

深夜をまわって小雪がちらつきだした。とTwitterで読んだので外に出てみると、すでに1センチ近い積雪で、空から塊がドサドサ降り注いでいる。
明日は大雪で電車も止まるという予報が出ている。
こんな日に定刻に会社に来い。というところは昨今はブラック企業認定されるんじゃないか。
と思ったが、オレほどブラックでもなし(笑)
寝る時間も削って風呂にも満足に入れず、黙々とペン入れを続けていると、囚人だって虐待で訴えるわ。というくらいの境遇である。こんなに仕事している人はめったいない。それもこれもためてしまったからで、夏休みを遊びまくった学生の8月31日なんである。昔から全然変わっていないのでいやんなるわ。

午前5時。外に出てみると軽く10センチは積もっている。これは大混乱だなあ。締切は伸びないだろうか。
電子書籍は雪関係ないからなあ。と思うが、今日でよかった。明日この雪だったら行くのも大変で、お客さんがいるから行かないわけにもいかずえらいことになる。
とりあえず足が冷えすぎて困ったが、風呂に入ってる時間がないのでそのまま仮眠。
3時間で無理やり起きる。まだ足が暖まっていないので深い睡眠に入れなかった。

朝7時、息子が学校にでかけたが、千歳烏山駅は大変なことになっていて、駅に入るだけで2時間も待ったという。身動きできない駅で電車にのり、学校についたのは11時をまわっていたらしい。
そんな雪の中。ペンをガリガリ入れて、スピードに乗ってきた時編集から電話。
今夜8時にできますか。というので、今夜は無理だなあ。というと「え?」と言ったまま固まっている。かなり緊迫した空気。
あれ? 締切って明日じゃないの? というと、今日ですよ今日。
明日でも入るかどうかわからないのに、今夜はどうにもならない。とりあえず文字を入れないといけない、ということで前半のページを送る。まだバックもまばらで18ページまでで見ても7割くらいの完成度。

夜になり、21ページまでペンが来た。残りは13ページ。
ここで連絡が来て、katanaの仕様で、後からページを増やすことはできないので、白くても「NOW PRINTING」と表示して全ページ入れます。と言う。いや! それは待って欲しい。さすがにこの段階で入れることはできないよ。まだ10ページ以上真っ白なのに。
ということで、話のキリの良いところ14ページまで今夜入れて公開。明日に残りをアップして読者にデータ更新してもらう。というところに落ち着いた。

「14ページまでバックも含めて完全アップしてください」
わかったありがとう! ということで、バック処理に入る。ここでページを開いて見ると、びっくりするくらい白い。1時間半後に入れられるだろうか。
そこから息を止めてスプリント。100メートルダッシュを10回連続でやるような勢いでバックにグレーを乗せ、3Dデータを書き出して貼りこむ。
クリスタに「選択範囲にペースト」がないのが本当つらい。
いい方法がないかセルシスにメールした返事がお昼に来ていて、くそ長い方法が書かれていて結局できないということがわかったので、Photoshopで張り込むことにする。
秒単位で仕事するときに、使い慣れないソフトは命取りになる。
9時半、原稿アップ。なんとか14ページまでは入れた。残りは明日朝10時。
もう食事する時間もない。
ただキャラクターは書き慣れてきたので、どんどん女の子が可愛くなっていく。男の子のキャラ「小峰達也」も動き出した。線は後半になるにつれ良くなっている。


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1月19日(火)

深夜3時。28ページまでアップ。終わりがくっきり見えてきた、残り5ページ。バック処理を考えて7時までにペンは終わらせたいのだが、2時間くらい後ろにいきそう。
このテンションで続けていてまだペンのペースが落ちない。むしろしりあがりに良くなっているのは、去年やっていた筋トレとジョギングのおかげではないかと考える。
体力の伸びが支えている。そう思うとまだまだやれる気になってくる。朝9時ペン入れ終わり。よし! バック処理に入る。あと2時間から3時間というところ。
編集から連絡。その旨を伝えると胸をなでおろしている。たくさんの人たちを泣かせながらやってることを反省するが、そんな時間もないのでとにかく塗って貼りこむ。
12時半。原稿アップ。
上がったーーーー。
ひゃーーー。
背中がバリバリ。
よかった。とにかく今日のイベントでマンガが上がってなかったらシャレにならないところだった。
久しぶりのお風呂に入り、無精髭をそる。
温かい風呂で何度もうたた寝をしそうになるが、ここで寝ると20時間くらい目が覚めないと思うので、このまま起きて回すことにした。

髪の毛を切りに言ってー

うどんをー

食べよう。

恐ろしく頭の回転が遅くなっていて、次に何をすべきか数秒判断できない状態になっている。イベントで話できるんだろうか。
風呂で眠りながら死んでしまう人が年間1万5千人もいるらしい。ただ他の死に方よりずっと幸せな気がする。
髪の毛を切ってイベント会場である渋谷のトリガーへ向かう。あっちで寝れば寝過ごすこともない。

トリガーの長椅子で寝ていたら、いつの間にか全員そろっていた。もう30分で会場。というので地下の中華で作戦会議。ビール飲んだら頭がぐあんぐあん回る。
こんな予定で行きます。と社長の小林さんが話しているが、頭に入らない。まあ1時間くらいならなんとかなるかな。
ずっとマンガを描いていて今開放されたんである。頭の中から変な汁が出ていて、多幸感で満たされている。終わったー。すべて思うがまま。
大丈夫。全部成功する。

イベント開始。口からするすると言葉が出てくる。あっという間に終了。すばらしい。自分ではとても面白い話をできている、と思っているが、動画でも記録されているので実際はどうなんだろうか。確認はしない。
会場には20人ほどのファンが来ていたが、8割くらいは顔を知っている人で、以前別のクラウドファンディングで5万円でカラオケに行った人が2人いた。
こうして数少ないファンの濃い支援によって成り立っていくんでありますよ。
その場で10万円のファンディングが2名出たので、そのうちの一人と2次会へ。
もう一人はイベントのゲストをしていただいた、曽和利光さん。
ふたりとも、オレが取材させてもらいたい人なので、お金を払ってマンガに出る権利を買ってもらって大変ありがたいやらもうしわけないやら(笑)


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1月20日(水)

日付が変わる頃に電車に乗って戻ってきた。
クラウドファンディングは一気に増え、半日で40万円を超えた。スタートダッシュがファンディングが成功するかどうかの分かれ目だというので、ひとまず安心。
ぐったり布団に倒れこみ、煮崩れる豆腐のように寝た。

昼近くに起きだし、今年最初のテニスへ。
風がゴーゴー吹きあれるコンディションだったが、テニスコートにいる幸せを噛みしめる。出所した人はこんな気分なのだろう。
ツマミを買って帰り、ワインで乾杯。
飲んでいるとiPhoneがブルブル震える。
一番高い100万円のクラウドファンディングが入札された。と聞いてびっくり。大阪のゲーム会社だという。
あんたっちゃぶる風のマンガを希望しているのかもしれないなあ。
打ち合わせはまだ先だが、なるべく相手の希望にそうような内容で描きますよ。
ファンディングは目標(160万円)を達成しないと、全部なかったことになるそうで、昨日イベントで直接集めたお金も返金しないといけなくなる。一番きついのがこの100万円ネタだったので、一気に実現しそうになってきた。よしよし。

夜中。2日を待たずしてクラウドファンディングが達成。おおおー、すげえ。


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1月21日(木)

アメフトのプレイオフの動画を一つづつチェック。
動画再生中に何度も寝てしまい、気が付くと終わっているので、その度に戻して見たが、やっぱり寝てしまう。この眠気は何事か。
テキサンズ消えた。
息子が「オイラーズってどこ?」と聞いてくるが、そうかそろそろ名前がテキサンズに変わって10年くらい経つのか。いやもっと経ってるかもしれない。今年のスッパーボウルは50回目。30回は見てる。
外を見るともう夜になってる。しかたない酒でも飲むか。とワインを開けたと思ったらソファで寝ていた。一日20時間くらい寝てる。

クラウドファンディングは、達成したら終わりではなく、続けて「ストレッチゴール」というものがあり、トータルでいくらになったらどうこうする。という新たな目標にかわっていく。200万円を超えてまだまだ伸びていきそう。

ここで落ち着いて考えてみると、この金額は原稿料の足りない部分を埋める。というのが最初の目標である。
そのためにサインや飲み会やらをやり、今回単行本1巻分の原稿料が集まったが、その先はどうなのか。
単行本が売れればいいのだが、これが動かないと先は厳しくなる。
次もファンディングで。というわけにはなかなかいかない。
ネットを使った今回のお金を集める試みは、打ち上げ花火のように派手で目を惹くが、毎回使える方法ではないのだ。これで終わってしまってはいけない。
「内定ゲーム」が長く読まれるようなものになること。
新しい読者が増えること。
それが大きな目標なので、今回のマンガのプレッシャーは通常の比ではないんである。
お金を出してくれるところ(マンガに投資してくれるところが)出版社から一般読者に変わっただけで、たくさんの人に読まれる本を作る。と言う部分は変わりない。頑張らないといけないので、応援よろしくね。
(と言う泣き言を言えるのもメルマガのいい部分)


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1月22日(金)

色々やらないと。と思っているんだが、体がずっしり重く一日ぼんやり。
お隣さんから軽いクレームが来て、大きく張りだしてしまった植木を切ったりした。
今夜から寒波がやってくるという。寒いのはいくつになっても苦手だ。


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1月23日(土)

久々のジョギング。1月2日以来なので20日も間が空いてしまった。ここから体力を取り戻そう。
昼から一人カラオケ。
気持よく5時間ほど流したが、先月のCDから数曲と古い曲が中心。シカオの新曲iTunesで落とさないと。
夜アメフト録画。やっと全てのゲームを見終えた。ここからライブ。ペイトリオッツの試合が明日には観られる。素敵。
次のネームもやらねばいかん。来週の月曜には大雑把に形にしたいが、ちょっとかかりそう。とりあえず日曜に一人、話を聞く予定はつけた。盛り上がりそう。
というところで、今週はここまで。

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感想メール
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あけまして、というにはだいぶ時間が過ぎてしまいましたが
今年もよろしくお願いいたします!
印税!ほんとにねー!
びっくりするくらい低いです。
(中略)
そんな世界でも悠々と渡ってる方々はいるので、力及ばず、というしかないのがまた!
あいたたたー!です!
なんとか食いつなぎたいですわー!

うみの

【みそ】
原稿料の下がり方はひどいみたいねー。
いや、ネットだと余計に下がるようなので、これからどうやって暮らしていくかは切実な問題ですよ。
企業相手にマンガを描いたり、個人の人生をマンガにしたり。ということは増えそう。と思っていたんだけど、そういうことをやってる人によると、直しはきついわ、いきなりやめちゃったりして、(一人のための作品は)クライアントが突然消滅するので大変なんだそうです。なるほどねー。
そんなこんなで今年もよろしくー。

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PN.はしも

こんにちは。
鈴木みそさんの次回作、今から楽しみです。
マンガの電子化について、一部の作家さんは作品の電子化を認めておらず、また雑誌でも紙と電子版では異なる内容で発売されることがあります。
浦沢直樹さんや井上雄彦さんは電子での出版を認めていなかったと思います。
鈴木みそさんの漫画家仲間の中で電子書籍化に難色を示している方はいらっしゃいますか?
もしいらっしゃるのであればどういった点がネックになっていて、何がクリアされれば電子化が可能だとお考えなのでしょうか。

すべてのマンガが電子で読める日が来るのか気になり質問しました。
もしご存知でしたら教えて下さい。

【みそ】
電子版の出版を認めない作家さんはまだかなりいらっしゃいますね。
知り合いの中にもいたかな?
「どういった点がネックになっていて、何がクリアされれば電子化が可能だとお考えなのでしょうか。」
ここね。おれも聞きたい(笑)初期の頃の解像度の低さがネックなのかなー?

井上雄彦さんのバガボンドは、オレは自分で刻んでまして、電子書籍で読めるようにしてたんですね。それをうめさんが見た時に「おおー」と声を上げたんですよ。
「本で読んでる時に気づかなかったけど、本って開いたノドの部分が歪むよね。この歪みのまったくないバガボンド初めて見たけどすごい! これぞ電子書籍のすごい部分じゃない?」
って言ってて、なるほどそんな見方もあるのか。と思いました。
井上さんのところに、iPadプロを持って行って、3000dpiくらいでスキャンしたすげえ画像の電子版を見せたら考え方変わったりしないかな。これくらいキレイで便利ですからぜひって、誘ってみればいいのに。と個人的には思います。
電子は便利でいいのにねー。

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つうことで感想などが相変わらず少ないですが、おすすめ漫画なども募集しております。ひとつよしなに。
クラウドファンディングもまだ50日くらい続けて行きますので、応援したい人はぽちっとひとつ。千円からあります。
https://faavo.jp/tokyo23/project/1041

オススメや感想のメールはこちらまで。
misokichi@misokichi.com
himo573@yahoo.co.jp(サブ)

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