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捨てメロンパンを拾った話

捨てメロンパンを拾った。
冷たい小雨の降る夜、ダンボールの中で震えていたのを拾ったのだ。

なにぶん今までパンの類を飼ったことがなかったため、ちゃんと飼育できるのか心配だったが、調べてみると、そう難しくもなさそうだった。

1日に数回、ぬるい牛乳を与えるだけで良いらしい。
鳴き声は、空気が抜けるような「キュー」という音を、たまに発する程度。焼きたてには程遠いが、いい匂いもする。

その飼いやすさから、世の中には、「ペットは不可だが例外的にパン類は可」という物件もあるようだ。

このメロンパンは人懐っこい個体のようで、私にもすぐに慣れてくれた。
暇な時に構ってやると、手にじゃれついてくる。
忙しい私にとって、至福のひとときだった。

ある日。帰宅した私はすぐに、メロンパンの寝床である棚を覗いた。
……いない!
なんということだろう、いつもそこにすっぽりと納まっているはずのメロンパンが、今日はどこにもいないのだ。
私はすぐに家中を探したが、どこにも見当たらなかった。

仕方なく、私は姉に「家の中でメロンパンを見かけなかったか」と聞いた。
すると姉はこう言った。

「メロンパン?棚の中にあったやつ?おやつに食べちゃったよ。あれ、あんたのだったの?」

私は思った。「今度から自分のものにはちゃんと名前を書いておこう」と。

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