ソウサク

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ノート

八月十五日

祖父母の家の荒れた庭には今でも黄色い花が咲いているが、名前は知らない。
訪れるのは十年振りだ。

台所や風呂場などの懐かしさを堪能している間に、母は和箪笥を迷いなく開け、祖母の着物を取り出していく。
空き巣どろぼうのようだと言うと、母はふんと笑った。
「どろぼうしにきたんでしょう」
そう言う母の声には、悲しみを堪えて強がっているような色は見えない。
だいぶ昔に祖父が亡くなったときは葬儀で声を上げて

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白百合

講堂でパイプオルガンを弾くきみの
踊るような指先を見ても
窓側の席で雅歌を読むきみの
はらはら揺れる前髪を見ても
いままで痛んだことのないところが
火傷のようにひりひりと痛む

一日ずつ少女から離れていく
きみのほほはまだあどけない白百合
何度も手を伸ばして
そのたびに下ろした
うつくしいものは
壊れてしまうものばかり

長いスカートからのろりと生えている
肉付きの悪い足を見ないように

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