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ザ・出産 〜vol1.無痛分娩〜

普通出産か? 無痛出産か?

出産を控える女性にとって、これは「整形するなら北川景子か? 宮崎あおいか?」と同じくらい究極の選択であろう。

わたしは迷わず無痛出産を選択した。
ちなみに整形するなら中条あやみだ。
あやみー!
俺だー!
結婚してくれー!!

普通出産を経験した友達に出産時の話を聞いても「必死すぎて覚えていない」だの「ベッドの枠を強く握りすぎて手が全然取れなかった」だの「二度と普通出産はごめんだ」だの、まったくポジティブワードが出てこなかった。

加えて、わたしは痛みに弱い。
道を歩いていて右足首をグギっとやってしまった日には「アアアアアーーーーー!!! ワアアーーーーーー!!!」と叫びながら道端を転げ回り大型車にはねられるくらい痛みに弱い。
痛みに負けルナ! じゃないよ勝てるわけないんだよ痛みにはよ。
そんなわたしが「肛門からスイカが出てくるよう」だと例えられる出産にノー麻酔で耐えられるわけがない。

出産する病院にかかったとき、真っ先に「無痛分娩で!!」と松岡修造と同デシベルぐらいの声量でオーダーした。
その場にいた助産師さんには「そんなに元気なら普通でも大丈夫よ〜」と笑われたが、そんなに元気なわたしは世を忍ぶ仮の姿であり、本当のわたしはちょっと痛めただけで死んでしまう、かよわいユープロテスなのである。

ユープロテス(微生物)(著者画)

無痛出産は最初から最後までまったく痛みがないわけではなく、ある程度陣痛がきたところで硬膜外腔と呼ばれる背中から腰の脊髄の近くにチューブを差し込み、麻酔を注入し、出産時の痛みを和らげるのという。
なので、陣痛が来てから麻酔を入れるまでの間の痛みはどうすることもなく、さらに個人差はあれども出産時もある程度痛む可能性はあるらしい。

助産師さんはそれでもいいかと聞いた。
気休め程度だろうが、痛レベルが100よりは99のほうがまだマシだ。
「オッケーデーーース!!!」
松岡修造デシベルのデカ声が院内に響いた。
ちなみに料金は通常の料金に加えて5万円だった。
地方の病院なのかなり安いほうなのだろう。
関東の某市で無痛分娩を選択した友人は15万取られると嘆いていた。

そうして無痛出産を選択したわたしは、ついにその日を迎えることになった。

出産予定日を10日過ぎた日の検診時、医師に
「もう産んじゃおっか」
と、今晩カレーにしよっか、くらいのラフさ加減で言われた。
一瞬おじいちゃん先生が新妻に見えた。
わたしもいい加減ウエストパンパン生活に嫌気がさしていた頃だったので、二つ返事で了承した。

里帰り出産だったので、その場にいなかった夫に早速電話をした。今日産むことになったと伝えると「はぇっ!?」とひどく驚いていた。
今日産むということは陣痛促進剤(陣痛がこなかったり陣痛が弱かったりする妊婦に対して使用する、陣痛さんコイコイ〜する薬)を入れるのだが、夫はそのことを知らなかったのでこんなにトントン拍子に話が進むとは思っていなかったのだ。

子宮口を開く処置をして(詳しくは省くが出産を通して一番痛かった処置)、陣痛促進剤を入れた。

これまで陣痛の「じ」の字も感じてこなかったわたしだが、徐々に下腹に痛みを感じていた。
例えるなら重めの生理痛。
男性にもわかりやすいように例えると下痢便到来の兆しを感じさせる腹痛に近い。
腸を雑巾絞りされているような感覚である。

痛い、が、我慢できない痛みではなく、さらに便意のように痛い時と痛くない時の波があるので、わたしでも我慢できた。
助産師さんや看護婦さんが「痛い?」と聞いてくるが、大丈夫だと答えると驚いた顔をされる。「これが耐えられるなら普通でも大丈夫よ〜」などと言われたが、おそらくこれ以上痛みが強くなるとわたしは自我を失いその場でカツ丼を食べ出してしまうなどの奇行に走ってしまう。

しばらく時間が経った頃、ついに麻酔を入れた。
チューブを入れた時の痛みはあまり感じることがなく、麻酔をして少しすると陣痛の痛みがまったくなくなってしまった。

ら、楽園!

この状態で産むの!?
全然余裕!
100人産める!
イナバの物置に家族で乗れちゃう! と思うくらいの快適さ。
無痛分娩最高音頭が頭の中で流れた。
ハァ〜無痛〜分娩〜最高〜ヨイヨ〜イ〜(パンパン!)

だが、ここから地味に辛い時間がやってきた。
陣痛が弱くなってしまい、再び出産ができるくらいの陣痛が来るまで待つことになったのだ。

すでにわたしは分娩台に乗っている。つまりどういうことか?


やることが一切ない。


妊婦を落ち着かせるために絶え間なく流れる穏やかな音楽を聴きながら、19時を回った時計を眺めるだけの無の時間。
時間が流れるのが普段の3倍に感じる。
精神と時の部屋かここは。
わたしはどれだけ強くなって帰ってくるんだ。

ハッと気がつくと、時計はすでに24時を回っていた。

世の中には今も必死に出産と戦っている妊婦もいるだろうに、あろうことか惰眠を貪ってしまっていたのだ。

夫は仕事だから仕方ないにせよ、母でも付き添っていてくれたらこんなことにならなかったものを。
ちなみに母に付き添いたいかと聞いた時は間髪置かずに「いやだ」と言われた。
なんて母だ。

今日産むから、と夫に意気込んで電話したものの、日を跨いでしまった。
夫は心配しているだろうか。
というかいつまでこの状態が続くのだろうか? 本当に産まれるのか?
ぼくもう眠たいよパトラッシュ。

その時、陣痛度合いを測るために設置されていたモニターに動きがあり、助産師さん登場。

「いけるね、これ」

いける、とは。
産めるのか?

満を持して先生入場。
本当に待ち侘びた。
ヨッ待ってました! と一声掛けたいくらいだ。

モニターの波が大きくなると確かに少しお腹に痛みを感じるが、余裕を持って我慢できる程度。

いきんで、と言われたので「エッエッこんな感じ?」と手探りでいきむ。

何度かいきむと、にょろんと青白いものが出てきた。

我が子の誕生である。



「おお〜ようこそようこそ」
そんな感動すべき瞬間なのだが、わたしは生まれたばかりの我が子に遠方から来た姪っ子を迎えるおじさんのような言葉を掛けていた。

陣痛でもっと苦しんでいたら「ようやく生まれた……」という安堵も相まって泣けていたかもしれないが、麻酔のおかげで大して痛みを感じなかったので、とてもフラットな気持ちで我が子を迎えることができた。


無痛分娩はとても良かった。
もちろんニュースになるようなかなしい事故もないわけではないだろうが、普通分娩にもリスクはある。
どのリスクを選択するか、という話だと思う。

痛みに弱い人や心が揺らぎやすい人などには特にお勧めしたい。

「お腹を痛めて産んだ我が子はかわいい」とはよくいうが、お腹を痛めなくても、子はかわいい。


☆今日の晩御飯☆
豚しゃぶ


#エッセイ #コラム #日記 #出産



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オシマアキカズ

北海道出身。経歴なしの素人娘。一児の母。ドラフトで指名されるのを待ち続ける日々。何かやらせて頂けるのでしたらiai0028s@yahoo.co.jpまでご連絡ください。

ニッキ

日記というかエッセイになりきれないエッセイのようなコラム的な文章

コメント6件

オノマサミさん
2はいにしえの出産方法、普通分娩にチャレンジ予定です
yumiさん
ありがとうございます!!
あやみかわいいですよね、あやみになりたい人生でした……
臨場感!!
整形するならあやみに1票です。
アリサ先生
あやみ大人気ですね!
人類総あやみ計画
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