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「出だしでつまずく」方がいい

現場で学ぶのが一番かもしれないけど。

俳優に限らず、おおよそプレイヤーと位置付けられる職業の人たちにとって(練習ではなく)現場で身につくことが如何に多いことか。

だから俳優は現場が欲しいと、現場にいたいと渇望しています。
問題は実力がないと現場に出れないこと。
問題は実力がないのに現場に出ると自分にも所属してるチームにも現場にも作品にも迷惑をかけてしまうこと。
問題は現場でのしくじりを取り戻せる機会はもう巡ってこないかもしれないこと。

実力通り、納得のパフォーマンスに至るのに皆が複数回かかってる@模擬オーディション

毎週4時間、所属俳優に向けて模擬オーディションというオーディション通過に特化した演技セッションを開催しています。
演技に答えを押し付けるのはとても嫌なので、オーディション通過に特化しない演技セッションを楽しみたいのですが、今はまず、プロとして現場に立つためにオーディション通過に目的を絞り込んでスキルを見つめ直すことにして試行錯誤中です。

コロナ前の模擬オーディションに比べて、俳優たちが楽しそうに演じてるのが分かりますし、皆が自分のコンフォートゾーンから出ようと創意工夫しながら苦しんでるし(楽しんでるし)、仲間がコンフォートゾーンから出ようとしてるのに気づいた人たちがいろんな意見を出し合ってる(自分の経験を掘り起こしてる)姿は暖かいです。

先週金曜日の模擬オーディションで気が付いたのですが、キャリアのある俳優でも一発でOKのパフォーマンスを見せてくれることはほぼ無く、皆が複数回あーでもない、こーかな?的なことを探ってから、これだなってパフォーマンスに辿り着きます。

模擬ではない、本番のオーディションでそこまで準備して臨めているのか、そこまで準備するものなのか、一人でそこまで準備できるのだろうか、そんな疑問を抱きながら、俳優たちのパフォーマンスを見ていました。

せめて、この模擬オーディションがどこまで準備するべきなのか、一人で無理なら誰かに手伝ってもらって準備しようと思えるキッカケになったら素敵だなと思います。

さて前回の模擬オーディションの課題の一つにテレビドラマのオーディション用テキストを取り上げました。ミッシングピースの俳優が挑戦し、最終オーディションに残りながら通過できなかった悔しいテキストです。

何回も試してるうちに、何を見られているのか、どこが己の欠点かなどが分かってきて、面白がってる俳優たちでした。


受かった方がいいけど、受からなくて良かったかも

俳優がオーディションに落ちると、なんでよ!!と思うこともありますが、受からなくて良かったかも。今はまだその時期じゃないのかも。と感じることがあります。(自分を納得させる言い訳でもありますが笑笑)


受からないだけじゃなく、役がなくなることもあって…

最近、配信ドラマが増えて、海外資本が参入してることもあって大作ドラマの撮影が増えています。チャンスが増えてありがたいのですが、長期のロケになるので、台本が完パケにならないちにオーディションがあり(採用になり)クランクインになり、2ヶ月くらいはスケジュールを引っ張られた挙句、台本が変更になり、役がなくなったのでごめんなさいと連絡を受けるケースに度々、遭遇します。

これ、やっぱり困ります。
撮影を楽しみにしていた俳優に知らせるのが辛いです。
この知らせを愚痴ると、
「役がなくなったのは残念だけど、良かったんじゃないですか。受かったことは事実だし、キャスティングさんや監督は覚えて下さってるだろうし、簡単に進めないってことを受け入れるって意味でも。」と話してくれる俳優がいました。


「出だしてつまずいたことがその後の成功につながったのかもしれない」アインシュタイン

一般相対性理論のアインシュタインは26歳で科学の大発見を世に送り出してからも思ったような評価が得られるまでに数年かかりました。ノーベル賞を正式に授与されるのは43歳になってからです。世紀の天才でも、簡単じゃなかったんですね。

経営者として、マネージャーとして、プロデューサーとして、たっぷりと準備ができて、改善点がいっぱい見つかるから、出だしでつまずく方がいい場合があることを経験から知っています。いや、出だしでつまずく方がいいのです。謙虚でいれる。調子に悪ノリしない。つまづくことを恐れないから。

自分ごとなら、いっそ、出だしでつまずいてくれ。と願っています(うまく行き出してからつまずくくらいなら。。。)が、つまずくにしろ、うまく進むにしろ、コントロールできることではありません。

「人生は自転車に乗るようなものだ。バランスを保つためには漕ぎ続けなければならない。」アインシュタイン