サクラバーベナ17・募集までの経緯

この度、晴れて広尾サラブレッド倶楽部より「サクラバーベナ17」の追加募集が正式に発表されました。

そこで今回は募集にいたるまでの経緯、また「なぜウインバリアシオンを選択したのか?」を書き記しておこうと思いますので、少々の間ですが拙文にお付き合いください。


私がウインバリアシオンに初めて出会ったのは今から約3年前。現役生活にピリオドを打ち、紆余曲折の末、青森で種牡馬として第2の馬生を送ることとなった彼を一目見てみたいと思い、引受先のスプリングファームさんにアポイントを取ったのがすべての始まりでした。

G1タイトルこそ手が届かなかったもののダービー、菊花賞、有馬記念、天皇賞・春と4つのG1で銀メダル。中でもオルフェーヴルと戦ったダービーと菊花賞では3冠馬をも凌ぐ上がり最速を記録。まさに生まれた時期が悪かったとはこのことで、G1級の能力を持っていたのは疑う余地がないと当時から確信していました。

私自身は前職が種馬所での営業職で、種牡馬が種牡馬として成功するために重視しているのは当たり前の話かもしれませんが「見せかけのタイトル」よりも「本馬の能力」が最優先と考えていたので、隠れたG1級の能力を持っていたウインバリアシオンの引退後の動向には人一倍注目していました。「青森」と聞くと多くの人は馬産地としてネガティヴなイメージが先行するかもしれませんが、古くはヒカルメイジなど5頭のダービー馬を筆頭にグリーングラス、ビゼンニシキといったオールドファンなら誰もが知っている名馬も青森産馬。そして近年ではジャパンダートダービーを制したキョウエイギアやミライヘノツバサなども青森生産馬として今もなお活躍しています。そもそも近年では生産頭数が100頭を割り込んでいるので、その中での中央競馬の出走率を考えると、むしろ日高の生産馬よりも優れた部分があるのにも関わらず、正当な評価を受けていない、正しい情報が発信されずに偏見が先行しているのが現状だと思います。

そのためにもウインバリアシオンを種牡馬として成功に導くための一歩として必須条件が「種付け頭数の確保とPR」「中央競馬での出走」そして「ファンの後押し」この3つをいかにクリアしていくのかというのが当時の課題でした。

とはいえその当時は私自身、フリーランスとしてまったく実績もなく、バックアップもないゼロからのスタートでしたので、特に何ができるわけでもなかったのですが、初年度の種付け頭数は35頭。年間の生産頭数が80頭前後で推移している青森県としては上出来以上の数字で、生産者の方々の期待の高さは相当だったんだというのを強く感じました。

そして期待が自信へと変わったのは翌年の初年度産駒誕生時。第一号産駒「ヨンハ17」と第2号産駒「ゴーオンマイウェイ17」が誕生したとの報を受けて青森に向かい、それぞれ素晴らしい出来に驚嘆するとともにウインバリアシオンの種牡馬としての遺伝力の高さを確信しました。初年度産駒を全て牧場まで足を運んでチェックした中の1頭に今回募集ラインナップに加えていただいた「サクラバーベナ17」もいたのですが、生後間もなく見たときに「骨太でトモのボリュームが特化した逞しい女の子」というのが第一印象でした。そしてウインバリアシオン2年目となるシーズンは種付け頭数が青森としては異例の50頭越えを記録。2年目は青森の生産者だけではなく、一緒に青森まで足を運んでウインバリアシオン産駒のデキの良さに共感していただいたオーナーの協力もあり、数多くの繁殖牝馬を青森に送り込めるようになり、一歩前進することができたのでした。

順調に生産頭数が増えていったのは喜ばしいことですが、一人でも多くの方々に印象付けて種牡馬としての知名度をアップするには「1頭でも多くJRAで初年度産駒をデビューさせる」ことがやはり絶対条件。そしてできることであればファンへの認知度を上げるためにも「初年度産駒を一口クラブ法人で募集ラインナップに加えてもらう」ことが必須だと考えていました。しかしながらウインバリアシオンが所属していた古巣が産駒を購入したという話も聞かず(その後のセリでも結局購入しませんでしたし)いち個人がクラブに募集に出すというのはとてつもなく高いハードルで、こればかりは正直どうにもならないのではと考えていた時期もありました。

しかしながら幸運にも初年度産駒を複数頭購入したオーナーさんから、私自身当歳時にチェックしていたサクラバーベナ17をクラブに提供する快諾をいただき、そして広尾サラブレッド倶楽部さんにサクラバーベナ17の写真や動画を持ち込んだところ、最終的に募集ラインナップに加えていただけるとの報をいただき、今日この日を迎えることができました。

初年度血統登録されたウインバリアシオン産駒21頭を多いと見るか少ないと見るかは人それぞれでしょうが、その中の約半数が来年JRAでデビューを迎えることができることになりそうです。種牡馬の入れ替わりのサイクルが早く、競争の厳しい現在では早い時期からの活躍が必須ですので、まずは初年度産駒から1頭でも多くの勝ち馬を送り出すこと、これがウインバリアシオンがこの先種牡馬として生き残っていくための必須条件です。自分にできるのはデビューまでのお膳立てまでで、これからは産駒たちの走りに全てがかかっています。

ファンの方々と喜びを共有できる、クラブ法人で募集されるウインバリアシオンの初年度産駒はこのサクラバーベナ17のみとなりましたが、種牡馬ウインバリアシオンを応援したいという方々にひとりでも多く、お持ちいただけましたらそれが何よりだと考えています。私自身、他のオーナーのお手伝いでセレクトセールにも参加しますし、ノーザンファームの生産馬を購買する機会もあるので、今をときめく人気種牡馬や良血の産駒たちを否定することはありませんが、大手にはない、いろんな人々の思いが詰まった馬を見つけ出して応援していく、そんな競馬の楽しみ方があっても良いのではないかと思っています。どうぞ皆さま、今後ともお付き合いのほどをよろしくお願いいたします。

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