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日本のシューゲイザー #3

#1でも言いましたが“日本を代表するシューゲイザーバンド”と言うのは存在しません。
しかし過去にシューゲイザーバンドが全く居なかったのかと言うと実はそうではありません。
今回は1992年シューゲイザームーブメントとほぼ同時期にリアルタイムで大手レコード会社と契約した日本初のシューゲイザーバンドPaint in Watercolourをご紹介しましょう。

日本で初めてのシューゲイザーバンド

Paint in Watercolour(ペイント・イン・ウォーターカラー)は新潟のバンドです。1992年6月にビクターエンタテインメントからSingle「GLARE」でメジャーデビュー。
翌月に1st Album「UNKNOWN」リリースしています。

当時の音楽業界は初動売り上げ重視型。シングルをリリースしてからチャートにランクインさせて話題を作り、その後にアルバムをリリースすると言う紋切り型でしたから、売上や知名度に関係なくこの方法でプロモーションが行われていたのでしょう。多分売れてなかったと思います(苦笑)

1993年2nd Album「VELOCITY」をリリース後に解散なのか活動停止なのか情報が途絶えています。

イギリス、オックスフォードのシューゲイザーバンドSwervedriver(スワーヴドライヴァー)のRave Downのオマージュと思われるフレーズを曲に取り入れ、当時のメジャーのバンドとは一線を画す音楽センスが垣間見えます。

因みに彼らがデビューした1992年のシングルチャート(年間)はどのようになっていたかと言うと

1位 君がいるだけで 米米CLUB
2位 悲しみは雪のように 浜田省吾
3位 BLOWIN' B'z
4位 それが大事 大事MANブラザーズバンド
5位 涙のキッス サザンオールスターズ

このような感じです(笑)これだけ見ると当時のメジャーシーンではかなり異質であったと思われますが、実はこの頃は既にThe Flipper's Guitar(フリッパーズ・ギター)が存在しています。

The Flipper's Guitarが1991年7月10日に発表したアルバムDOCTOR HEAD'S WORLD TOWER -ヘッド博士の世界塔-のアクアマリンと言う曲は完全にMy Bloody ValentineのTo Here Knows Whenに対するオマージュでありシューゲイザーと言うジャンルがメジャーシーンにおいても“あり”と判断された背景にはこのような渋谷系と言う下地があっての事だと推測されます。
渋谷系と言うのは乱暴に言えば、当時の欧米の巨大なメジャー・アーティストの日本人版を作るのではなく、欧米でも若者が聴くような新しいバンドの曲調はもとより、ファッション感覚までを総合的に解析し参考にしたある種のカウンターカルチャーであったと思われます。
今で言う“インディーズ”のような概念で市場に対して仕掛けていたのでしょう。

Paint in Watercolourはシューゲイザー界では居なかった事になっている不遇のバンド

Paint in Watercolourは残念ながら現在もシューゲイザーとして認識されていないようで、近年発売されたシューゲイザーをまとめたディスクガイドには一切紹介されていないようです。

勿論本だけではなく、雑誌のシューゲイザーの特集でもPaint in Watercolourを紹介しているものは見た事がありません。
しかし渋谷系のディスクガイドにはしっかりとPaint in Watercolourは掲載されているので、本人達はどう考えていたか解りませんが、世間ではシューゲイザーと言うよりはセンスの良い日本のバンドと言う評価だったのかも知れませんね。

シューゲイザーブームの終焉

その後、シューゲイザーが下火になると共に日本のレコード会社も手を引いたのでしょうか。彼らの消息はブーム終焉と共に途絶えます。
インディーズとメジャー移籍後では音楽性が変わると言う事は良くあります。
売れるためにインディーズでは流行のジャンルを取り入れキャラ立ちをさせ、勿論、メジャーに移籍後はタイアップの為にポップス路線になる…なんて事はビジネス戦略としては当然の事ですし、売れる事はバンドにとっては本望ですので悪い事ではありません。
しかし、はじめからこの音楽性でメジャーデビューしていた彼らにはもっと評価と注目が集まっても良いと思うのですが、全くどこにも取り上げられないのは寂しい事ですね。
彼らが今でもメジャーシーンを生き残り、活動を続けていれば日本を代表するシューゲイザーバンドになっていたに違いありません。

因みに、俗にロキノン系と呼ばれているART-SCHOOLはヴォーカルのスタイルも似ていますし、もしかしたら違った形でこのような現代のバンド達にPaint in Watercolourの系譜は受け継がれているかも知れませんね。

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